GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.11 Rd.6 鈴鹿 レビュー
HSV-010 GT、初の連勝を果たす。
18号車は念願のポイントリーダーに浮上。

いつもHondaならびHSV-010 GTに熱いご声援をいただき、誠にありがとうございます。おかげさまでSUPER GT 第6戦 鈴鹿ラウンドは我々にとってとても実りの多い一戦となりました。まず、第5戦 菅生ラウンドに続いて初の連覇を果たすことができました。しかも、ラルフ・ファーマン/井出有治選手にとってはHSV-010 GTでの初勝利です。ふたりのドライバー、第3ドライバーとしてポールポジション獲得に貢献してくれた小林崇志選手、それにチームメンバー全員の健闘を心から称えたいと思います。本当におめでとうございました。

また、18号車の小暮卓史/ロイック・デュバル組はウェイトハンディ上限の100sを積みながら9位でフィニッシュ、これで2ポイントを上乗せした結果、念願のポイントリーダーに立つことができました。当初よりダブルタイトルの獲得を今季の目標に掲げていたので、その実現に一歩近づいたように思います。とはいえ、これに浮かれることなく、残り2戦も気を引き締めて戦っていくので、引き続きご声援をよろしくお願いします。

期待どおり、HSV-010 GTは鈴鹿で高いパフォーマンスを示してくれました。しっかりと作られたフレームが優れた旋回能力を生み出し、これが好成績を収める原動力となりました。ライバルに比較して柔らかい方向のタイヤコンパウンドを使うことができたのも、剛性のバランスが良好なシャシーのおかげといえます。いっぽう、ストレートスピードの伸びは開幕戦のときに比べて改善され、ライバルとの差は格段に縮まりましたが、まだ改善の余地はあると考えています。タイトル獲得を確実なものとするためにも、この点については継続的に開発を進めていくつもりです。

HSV-010 GTを走らせる各チームの実力が拮抗してきたことも、シーズン初めからの目標であり嬉しく思っています。皆さんお気づきかもしれませんが、今回の予選結果は、おおむねポイントランキングを反転した順、つまりウェイトハンディの軽いマシーンから順に上位を占めていく形となりました。これは、各チームのセッティングがいい意味で煮詰まり、HSV-010 GTのポテンシャルを100%近く引き出せるようになった結果です。我々が情報を共有することで開発のスピードアップが図られ、各チームのレベルを揃えることができた、その何よりの証拠であると考えています。8号車の優勝に加え、100号車の伊沢拓也/山本尚貴組が3位、17号車の金石年弘/塚越広大組が4位と揃って好成績を収めたのは、Honda陣営の層の厚さを示すものです。また、本来であれば道上 龍/中山友貴組の32号車も彼らと肩を並べるポジションでフィニッシュしていたはずですが、タイヤ交換でミスがあり、この影響で7位に終わってしまいました。彼らは短いスティントをつないでいく4ストップ作戦で上位進出を狙いましたが、4回のピットストップを素早く、そして完ぺきに行わなければいけないというプレッシャーがわずかなミスを呼んだといえなくもありません。残念な結果ですが、次戦でのリベンジに期待したいところです。

18号車は本当によくがんばってくれたと思います。まず、予選では100kgのウェイトハンディを跳ね返して8位に食い込んでくれました。にもかかわらず12番グリッドからスタートしたのは、エンジン交換のペナルティにより10グリッド降格とされたからです。SUPER GTではシーズン中に使えるエンジンは3基までと決められていますが、18号車はシーズン序盤のアクシデントで立て続けにエンジンを壊してしまい、これが原因でペナルティを受けることとなりました。しかし、このポジションから粘り強く戦い、自力で9位に進出して2ポイントを手に入れたのです。100kgのウェイトハンディを積んでいたことを考えると、驚異的ながんばりといえるでしょう。しかも、レース中盤にはピット作業ミスからのドライビングスルーペナルティも受けています。これらの苦難を乗り越えて2ポイントを勝ち取った結果、18号車は前述のとおりポイントリーダーに躍り出ることができました。次戦富士ラウンドでは獲得ポイント数に比例するウェイトハンディが半減され、最終戦もてぎではウェイトハンディを課せられなくなるので、ここでポイントリーダーに浮上したことには大きな意味があります。この勢いを生かして、次戦では表彰台を目標に戦っていくつもりです。

最後になりますが、5台揃って完走できたのは、HSV-010 GTの信頼性が良好だったことに加え、各チームのエンジニアやメカニックの皆さんが細心の注意を払って準備を進め、メンテナンスしてくださった成果であると考えています。これまでトラブルが連続していたクールスーツに、今回一件のトラブルも発生しなかったことにも、最適な対策が行えたということで深い満足感を味わっています。

残るは2戦、タイトル獲得への準備はすべて整いました。あとはHonda陣営が一丸となって富士ともてぎでの決戦に挑むだけです。
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