GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.10 Rd.6 鈴鹿 プレビュー
シーズンの天王山となる真夏の長丁場の戦い

 今シーズンのSUPER GTもいよいよ残り3戦、タイトル争いが激化する終盤戦を迎えました。第6戦の舞台は、HSV-010 GTともっとも相性のいいサーキットといっても過言ではない鈴鹿サーキット(以下、鈴鹿)。前戦のスポーツランドSUGOでは、17号車の金石年弘/塚越広大組がSUPER GTの歴史に残る勝利を飾ってくれました。鈴鹿はHondaが最も勝ちたいサーキットでもありますので。この勢いで連勝したいと思っています。

 冒頭でも申し上げたとおり、HSV-010 GTと鈴鹿との相性は最高です。それはデビューレースとなった開幕戦でポールポジションを獲得したことからもわかります。さらに、その後のレースでストレートスピードの伸びについても改良を加えているので、鈴鹿では複数のHSV-010 GTが優勝争いに絡んでくると期待しています。なかでも、優勝候補の筆頭として挙げたいのが8号車を駆るラルフ・ファーマン/井出有治組です。彼らはこれまでも再三トップ争いを演じてきましたが、不運なクラッシュなどでリタイアに終わっており、入賞は第2戦岡山国際の1回だけと不本意な結果に甘んじています。しかし、そのおかげでハンディウェイトはたったの10kgしかありません。ポイントリーダーとは実に90kgの差です。このアドバンテージを活かして、鈴鹿では好成績を挙げてくれるでしょう。今回は700kmレースとの事で、第三ドライバーとしてF3で活躍中の小林崇志も登録されています。前回のテストでは中々の速さを見せており、もし走る機会があれば楽しみです。また、100号車の伊沢拓也/山本尚貴組はコンスタントな戦い振りに加えてスピードも兼ね備えてきているので、鈴鹿ではひと暴れしてくれるはずです。唯一ダンロップ・タイヤを履く32号車の道上 龍/中山友貴組も菅生では復調の兆しを見せていたので、頑張って欲しいですね。

 反対に苦しい戦いを強いられるのが18号車の小暮卓史/ロイック・デュバル組です。彼らのウェイトハンディは上限いっぱいの100kg。さすがにこれだけのウェイトを積むと加速は鈍り、コーナリング性能も低下します。タイヤへの負担も大きくならざるをえません。ただし、この第6戦鈴鹿さえ凌げば、第7戦富士ではウェイトハンディが半減され、最終戦もてぎでは完全に取り外されることになります。実は、18号車はルールで決められた1年間に使用できるエンジンをアクシデントなどの影響ですでに使い切っているので、第6戦鈴鹿では10グリッド・ダウンのペナルティを覚悟のうえでエンジン交換を行います。けれども、長丁場のレースなので、他のレースに比べればグリッドポジションの影響は小さく、着実に走り切ればそれなりの結果は付いてくるでしょう。念願のタイトル獲得のためにも、粘り強い戦いをして少しでもポイントを稼いでくれると期待しています。

 今回のレースはシリーズ唯一の700kmですが、参戦初年度にも関わらずHSV-010 GTの信頼性は極めて高く、レース中にメカニカル・トラブルでリタイアを喫したことは一度もありません。したがって、Honda陣営としてはまずこの一戦を着実に戦い、しっかりポイントを積み重ねたいと考えています。しかしながら、ひとつだけ心配があるとすれば、それは、これまで何度かトラブルが発生しているクールスーツですね。信頼性の高さから選びましたが、結果的には裏目に出てしまいました。これについては先日のタイヤテストでもデータを取る事が出来ましたので、鈴鹿ではチーム間の情報交換を徹底し万全を期したいと思います。ドライバーの健康や安全のためにも、クールスーツのトラブルは起きて欲しくありませんね。

 第6戦鈴鹿は8月21〜22日の開催、つまり夏休み真っ只中です。是非ともご家族そろってお出かけください。そして、熱戦を繰り広げるHSV-010 GTに熱いご声援をお送りください。レース終了後には花火も上がりますので、その花火がHSV-010 GTの勝利を祝う花火になるように、どうかよろしくお願い申し上げます。
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