GTプロジェクトリーダー 瀧敬之介 現場レポート
vol.1 Rd.1 鈴鹿サーキット プレビュー
HSV-010 GTデビュー戦に向けて

皆さんはじめまして、今シーズンよりHonda GTプロジェクトのプロジェクトリーダーを拝命しました。本田技術研究所の瀧です。どうぞよろしくお願いします。

今回がHondaの新型GTマシンHSV-010 GTのデビューレースになります。このHSV-010 GTは、従来のMR(ミッドシップエンジン、リア駆動)のNSXから、FR(フロントエンジン、リア駆動)になりました。これはHondaにとっては初めてのFRのGTマシンになり、我々開発メンバーにとっても、大変挑戦のしがいがあります。既に皆様ご承知でしょうが、HSVは、Honda Sports Velocityの略で、Velocityの意味には、“速さ”、“速度”だけでなく、“方向性をもった速度”の意味が込められています。そこにはこのマシンが、今後のHondaのレーシングマシン造りの方向性を示すとともに、我々開発メンバーの“速さ”にこだわる気持ちを表しています。
(開発のコンセプト等は「HSV-010 GTマシン解説」をご覧下さい)

開幕戦の鈴鹿は、ウェイトハンディ無しでの“ガチンコ”の争いなので、HSV-010 GTの実力が問われる大切な1戦のため、必勝を期したいと思っております。またGT戦では2002年の最終戦以来、残念ながら鈴鹿での勝利から見放されています。マシンも新しくなったのでその悪い流れを、ここで吹き飛ばしたいと思っております。

なおHSV-010 GTは、昨年岡山国際サーキットでシェイクダウンをし、その後数回のテストを重ねてきました。その間、新型車にありがちな初期トラブルや、MRからFRになったことにより思いもよらないマイナートラブルがありましたが、その点も原因を究明して、さらにテストでマイレッジ(走行距離)を稼ぐことで解消されてきました。

またこのマシンは、(サイドから見ると)フロント周りはウェッジが効いており、一方でリア周りはボリューム感があるのがデザイン上の特徴となっていますが。そのためにドラック(空気抵抗)が多く発生するため、実際にライバルたちと比べるとストレートスピードで7km/h〜10km/hほど劣っています。この点は構造上の問題ですので、すぐに大幅な改善は見込めませんが、ようやく方向性も見えてきました。決して世間で言われている“三味線”ではなく、実際はかなり結構苦労しています。

今シーズンは、HSV-010 GTの参戦初年度ですが、開発者としては5チームとも優勝してもらいたいと思っております。その結果として“ドライバー”“チーム”のダブルタイトルの獲得をできればと思っておりますので、皆様からのご声援をよろしくお願いします。

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