
「大変だったのは2004年。2003年にレギュレーションの変更で苦戦をしたので、NSX-GTにとって初めてのターボエンジンを搭載していたんですが、苦しかったですね。そうそう、今だから言えるんですが、シーズン前のテストではこんなこともありました。ちょうど12月のクリスマスの時期で…24日、25日もテストをしていたと思うんですが、そこでターボエンジンのシェイクダウンをしたんです。3日間でまともに走れたのは5周ぐらいでしたね。ピットロードで発進できなかったり、コースインしたと思ったら火を噴いて停まったり…。当時のチームメイトはセバスチャン・フィリップ選手だったんですが、彼らヨーロッパ人にとってクリスマスは特別な時期。『わざわざ日本まで来たのに』…って、ブツブツ言っていたのを覚えています。2005年にはNAのエンジンにスイッチしましたが、ターボの方もどんどんよくなっていっていたので、あのまま開発が進んでいたらどうなっていたのか…という興味はありますね」

「そうですね。僕が初めてNSX-GTに乗った当時はリアウイングが2枚ウイングだったり、いろんなフィンやらディフューザーやらいろいろついていたりで、それは凄い迫力でした。しかも、こんな大排気量、ビッグパワーのハコ車に乗るのは初めてでしたから、どんな挙動を示すのかと戸惑いがあったんです。でも、乗ってみるとリアグリップがしっかりしていて全然リアが流れない。どっちかというと、そのぶんフロントが逃げやすいようなクルマだったんです。『これだけリアがグリップするならフロントをうまく入れてやる走りをすればいいのかな?』と頭を切り換えたところ、最初のシーズンで3回もポールポジションが取れました。だから、いちばん乗りやすいと感じたのは最初のシーズン、1998年ですね」

「NSX-GTと過ごしてきた時間がとても長いですからね。でも、レースをやっていると、あっという間の12年間だったような気もします。レギュレーションによってマシンのパフォーマンスが最大限に発揮できなかったり、そんな宿命を背負ったクルマでもあったと思いますが、それでもはい上がってくる実力、強さ、そういったものはやはりNSX-GTの魅力でした。来年以降どんなクルマが出てくるのか、今の時点では僕もわかりませんが、NSX-GTと同じようにみんなの心に焼き付いて離れない、印象的なクルマであってほしいと思いますね」