11月28日(土)~29日(日)、富士スピードウェイ(静岡県)で2020年度SUPER GTシリーズ最終戦第8戦が開催され、GT500クラスに5台の2020年型NSX-GT、GT300クラスに3台のNSX GT3が出走しました。シリーズ最終戦では競技規則により参加全車がすべてのウエイトハンデを降ろし、車両本来の実力で戦うことになります。
シリーズ最終戦としては例年よりほぼ1カ月遅い時期にレースを迎えた土曜日の富士スピードウェイは快晴となりましたが冷えた風が吹き、気温は13℃、路面温度は17℃と予想通りコンディションは低温でした。
土曜日午前中の公式練習では、シリーズランキング4番手の#100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)が6番手、シリーズランキングトップの#17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)が7番手、シリーズランキング5番手の#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)が8番手のタイムを記録しました。
午後の公式予選では、持ち込みタイヤの特性と路面コンディションがかみ合わずNSX-GT勢はタイムアタックに苦戦、最上位は#64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)の5番手、#100 RAYBRIG NSX-GT(山本/牧野)は7番手にとどまりました。#8 ARTA NSX-GT(野尻/福住)、#17 KEIHIN NSX-GT(塚越/バゲット)、#16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京)はQ2進出ができず、それぞれ11番手、12番手、14番手に終わりました。
日曜日の富士スピードウェイは雲が多いながらも晴れましたが気温は9℃で路面温度17℃というコンディションの中、午後1時に65周の決勝レースが始まりました。オープニングラップの順位は#17 KEIHIN NSX-GT(バゲット)が7番手、#100 RAYBRIG NSX-GT(牧野)が8番手、#64 Modulo NSX-GT(伊沢)が11番手でしたが、#17 KEIHIN NSX-GT(バゲット)、#100 RAYBRIG NSX-GT(牧野)はコーナーでの速さを活かしてじりじりと上位に迫り始めました。
13周目、#100 RAYBRIG NSX-GT(牧野)が#17 KEIHIN NSX-GT(バゲット)をかわしてNSX-GT最上位の4番手へ進出すると14周目には3番手、21周目には2番手へと順位を上げましたが、この時点でトップを走る37号車との間隔は16秒以上に広がっていました。ここで#100 RAYBRIG NSX-GT(牧野)はピットイン、山本へ交代しました。
トップを走る37号車は24周目にピットストップとドライバー交代を行いコースへ復帰しました。全車がドライバー交代を行った段階でトップの37号車と#100 RAYBRIG NSX-GT(山本)の間隔は9秒弱あり、背後には36号車が迫っている状態でした。#100 RAYBRIG NSX-GT(山本)は36号車を振り切ると37号車との間隔を縮めようとスパートしましたが、間隔はなかなか縮まりません。チャンピオン争いでは先にフィニッシュした方がシリーズチャンピオンを獲得する計算で、#100 RAYBRIG NSX-GTが王座を獲得するには37号車をオーバーテイクする必要があります。
2車の間隔がわずかながら縮まり始めたのは50周を過ぎた頃で、1周に1秒弱ずつギャップが縮まり始めました。しかし最終ラップに突入した段階で2車の間隔は2秒7あり、勝負はついたかに見えました。ところがフィニッシュ目前の最終コーナーでトップを走る37号車が突然スローダウンしました。
#100 RAYBRIG NSX-GT(山本)はストレートを立ち上がったところで37号車に追いつき、ついに首位に躍り出ると、その直後にチェッカーフラッグを受けました。この結果、NSX-GTは前戦に続き連勝を果たし、劇的な逆転優勝を遂げた#100 RAYBRIG NSX-GT(山本/牧野)がシリーズチャンピオンに輝くこととなりました。レースをフィニッシュした#100 RAYBRIG NSX-GT(山本)は、チェッカーフラッグを受けた後に燃料を使い果たしウイニングラップ途中でコース上にマシンを止めました。まさに薄氷の勝利、全力を絞り尽くした大激戦でした。
#17 KEIHIN NSX-GT(塚越/バゲット)はシリーズランキング3位、#8 ARTA NSX-GT(野尻/福住)はシリーズランキング5位で2020年シーズンを終えました。
山本尚貴(優勝)
「今年はSUPER GTで11年目のシーズンだったのですが、今日ほど自分の経験がすべて活きて、すべて自分が思い描いた通りになったレースは過去にはありません。スピードだけを比べたら37号車の方がチャンピオンにふさわしいレースをしていたのかもしれませんが、僕たちも、タイヤのセーブ、燃費のセーブなどについて常に無線でチームと確認し合いながらペースアップのタイミングも計っていたので、そのがんばりが報われたのかなと思います。スポンサーのレイブリックさんが今年でブランドを終了なさるという締めくくりのレースで、牧野選手とチャンピオンになり高橋国光総監督に表彰台の高いところに上がってもらい恩返しすることもできて本当にうれしいです」
牧野任祐(優勝)
「富士に入る前にチームといろんなことを準備してきたので、それがチャンピオンという形になってよかったです。今回のレースではタイヤのウォームアップが厳しいけれども、その後のペースは悪くないとは想定していました。でも、マシンを尚貴さんに引き継ぐ直前の段階では37号車と15秒も離れていて、そこからは見守ることしかできませんでした。正直、想像もできない結末になったのでチェッカーの瞬間は、何が起きたのかよく分からない気分でした。レイブリックというブランドのラストランをチャンピオン獲得という形で締めくくれて本当にうれしいです」
佐伯昌浩 | 株式会社本田技術研究所 Honda GT プロジェクトリーダー
「今日は、我々も燃料をギリギリまで使った厳しいレースでしたが、『クラス1』規定導入初年度にシリーズチャンピオンを獲得する結果となってたいへんうれしいです。コロナウイルスの影響で開発が遅れる中、よくここまで来られたと思います。シリーズチャンピオンは獲りましたが、1シーズン戦い終えて我々が勝っているところ、劣っているところが明らかになりました。勝っているところはさらにそれを伸ばし、劣っているところは解決するということをしなければ来年はたいへんなことになると今から気を引きしめています。来年も引き続きHonda Racingへの応援をよろしくお願いします」
順位 | No. | マシン | ドライバー | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 100 | RAYBRIG NSX-GT | 山本尚貴/牧野任祐 | 65 | 1:40'38.010 |
2 | 37 | KeePer TOM'S GR Supra | 平川亮/山下健太 | 65 | +5.940 |
3 | 36 | au TOM'S GR Supra | 関口雄飛/S.フェネストラズ | 65 | +16.060 |
4 | 17 | KEIHIN NSX-GT | 塚越広大/ベルトラン・バゲット | 65 | +45.619 |
5 | 8 | ARTA NSX-GT | 野尻智紀/福住仁嶺 | 65 | +50.414 |
6 | 3 | CRAFTSPORTS MOTUL GT-R | 平手晃平/千代勝正 | 65 | +52.705 |
11 | 64 | Modulo NSX-GT | 伊沢拓也/大津弘樹 | 63 | +2Laps |
12 | 16 | Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT | 武藤英紀/笹原右京 | 63 | +2Laps |
順位 | No. | マシン | ドライバー | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 52 | 埼玉トヨペットGB GR Supra GT | 吉田広樹/川合孝汰 | 61 | 1:42'00.517 |
2 | 56 | リアライズ 日産自動車大学校 GT-R | 藤波清斗/J.P.デ・オリベイラ | 60 | +1Lap |
3 | 6 | ADVICS muta MC86 | 阪口良平/小高一斗 | 60 | +1Lap |
4 | 65 | LEON PYRAMID AMG | 蒲生尚弥/菅波冬悟 | 60 | +1Lap |
5 | 9 | PACIFIC NAC D'station Vantage GT3 | 藤井誠暢/篠原拓朗 | 60 | +1Lap |
6 | 10 | TANAX ITOCHU ENEX with IMPUL GT-R | 星野一樹/石川京侍 | 60 | +1Lap |
7 | 55 | ARTA NSX GT3 | 大湯都史樹/松下信治 | 60 | +1Lap |
17 | 34 | Modulo KENWOOD NSX GT3 | 道上龍/ジェイク・パーソンズ | 59 | +2Laps |
25 | 18 | UPGARAGE NSX GT3 | 小林崇志/松浦孝亮 | 58 | +3Laps |
順位 | No. | ドライバー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 100 | 山本尚貴/牧野任祐 | RAYBRIG NSX-GT | 69 |
2 | 37 | 平川亮 | KeePer TOM'S GR Supra | 67 |
3 | 17 | 塚越広大/ベルトラン・バゲット | KEIHIN NSX-GT | 59 |
4 | 36 | 関口雄飛/S.フェネストラズ | au TOM'S GR Supra | 56 |
5 | 8 | 野尻智紀/福住仁嶺 | ARTA NSX-GT | 54 |
6 | 23 | 松田次生/R.クインタレッリ | MOTUL AUTECH GT-R | 51 |
12 | 64 | 伊沢拓也/大津弘樹 | Modulo NSX-GT | 31 |
14 | 16 | 武藤英紀/笹原右京 | Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT | 25 |
順位 | No. | チーム | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 100 | TEAM KUNIMITSU | 90 |
2 | 37 | TGR TEAM KeePer TOM'S | 86 |
3 | 17 | KEIHIN REAL RACING | 80 |
4 | 36 | TGR TEAM au TOM'S | 77 |
5 | 23 | NISMO | 72 |
6 | 14 | TGR TEAM WAKO'S ROOKIE | 68 |
7 | 8 | ARTA | 68 |
11 | 64 | Modulo Nakajima Racing | 46 |
13 | 16 | TEAM Red Bull MUGEN | 42 |
順位 | No. | ドライバー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 56 | 藤波清斗/J.P.デ・オリベイラ | リアライズ 日産自動車大学校 GT-R | 71 |
2 | 52 | 吉田広樹/川合孝汰 | 埼玉トヨペットGB GR Supra GT | 62 |
3 | 65 | 蒲生尚弥/菅波冬悟 | LEON PYRAMID AMG | 59 |
4 | 55 | 大湯都史樹 | ARTA NSX GT3 | 45 |
5 | 61 | 井口卓人/山内英輝 | SUBARU BRZ R&D SPORT | 44 |
6 | 11 | 平中克幸/安田裕信 | GAINER TANAX GT-R | 43 |
7 | 55 | 高木真一 | ARTA NSX GT3 | 38 |
15 | 18 | 小林崇志/松浦孝亮 | UPGARAGE NSX GT3 | 15 |
21 | 34 | 道上龍/ジェイク・パーソンズ | Modulo KENWOOD NSX GT3 | 8 |
23 | 55 | 松下信治 | ARTA NSX GT3 | 7 |
順位 | No. | チーム | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 56 | KONDO RACING | 95 |
2 | 52 | 埼玉トヨペット Green Brave | 82 |
3 | 65 | K2 R&D LEON RACING | 81 |
4 | 55 | ARTA | 67 |
5 | 11 | GAINER | 65 |
6 | 61 | R&D SPORT | 64 |
14 | 18 | TEAM UPGARAGE | 33 |
18 | 34 | Modulo Drago CORSE | 31 |