2020年シーズン前半戦レビュー/後半戦プレビュー
2020年シーズン前半戦レビュー/後半戦プレビュー

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今季のSUPER GTは、新型コロナウイルス感染症の蔓延により開幕前テストが突然の中止となり、それ以降、レースカレンダーの大幅な変更を強いられました。今季のHondaはクラス1規定に基づき新しくNSX-GTを開発しましたが、新型コロナウイルスの影響で実走行テストの機会が大幅に制限されていました。そのため絶対的なデータ不足、熟成不足という不安を抱えたまま例年より3カ月以上後れて開幕を迎えました。

富士スピードウェイで開催された第1戦の予選では#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)が2番手、#100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)が4番手につけました。しかし決勝のロングランではNSX-GTのペースが上がらず徐々に順位を落としてしまい最上位はRAYBRIG NSX-GTの6位。予選での速さがロングランでは出し切れないという、開幕前に懸念されていた不安が浮き彫りになりました。

大幅に見直されたレースカレンダーではインターバルが短く、わずか3週間後に同じ富士スピードウェイで第2戦が開催されました。ここで、NSX-GT勢は反撃に移りました。公式予選で#8 ARTA NSX-GTがポールポジションを獲得、2番手に#17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)が続いて、NSX-GTがフロントローを独占。決勝でも#17 KEIHIN NSX-GTは2番手以下を大きく引き離して、独走のまま優勝のチェッカーフラッグをくぐり抜けました。

2週間後、開催地を真夏の鈴鹿サーキットに移し第3戦が開催されました。NSX-GTはここでも公式予選で快調にタイムを短縮し、#64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)がNSX-GTにとって2戦連続となるポールポジションを獲得しました。ところが、決勝レースでは#64 Modulo NSX-GTのペースが上がらず、ライバルの反撃を許し次々に順位を下げてしまいました。その中にあってNSX-GT勢の最上位につけたのは、予選8番手から安定したラップを刻み続けた#100 RAYBRIG NSX-GT。2018年のGT500チャンピオンでもある山本尚貴と今季から新たにコンビを組む牧野任祐が2位表彰台を獲得しました。

その3週間後、SUPER GTは富士、鈴鹿とは異なるコース特性を持つツインリンクもてぎで第4戦を迎えました。公式予選では#17 KEIHIN NSX-GTが2番手、#8 ARTA NSX-GTが3番手につけると、決勝では#17 KEIHIN NSX-GTがレース前半のうちにポールポジションからスタートしたライバル車を攻め立ててトップを奪取。その順位を守ったままレース後半も走り抜き、NSX-GTにとっての今季2勝目を記録しました。この結果、#17 KEIHIN NSX-GTは第4戦終了時点でシリーズポイントランキングでもトップに立ちました。

こうしてクラス1準拠のFRレイアウトに生まれ変わったNSX-GTは、熟成を進めながらシーズン前半を戦い、課題を抱えながらも4戦中2勝を記録し、チャンピオン争いをリードしてシリーズ後半に突入しました。しかしSUPER GTシリーズの後半戦は、前半戦で好成績を収めた車両にウエイトハンデが積み重なり、燃料リストリクターの絞り込みが強まるため、前半戦と異なる条件を乗り越えなければ戦えません。というのも、近年の傾向をみると燃料リストリクターの絞り込みは実際のウエイト増加よりも走行性能におよぼす影響が大きいとみられるからです。

後半戦の皮切りとなる第5戦は今年3回目の富士スピードウェイ開催となりました。シリーズ前半は感染防止を考慮して無観客開催でしたが、このレースから人数限定ながらファンを迎えてレースが行なわれました。

公式予選では#8 ARTA NSX-GTが第2戦に続き今季2回目のポールポジションを獲得しました。しかし決勝では前半こそ首位を守ったものの、後半はタイヤウォームアップに時間がかかっているあいだに後続車の追撃を受けて後退。結局3位でレースを終えることとなりました。シリーズポイントランキングでは、NSX-GT勢最上位の#17 KEIHIN NSX-GTが3番手へ後退しましたが、チャンピオンは十分に射程圏内にあります。

シーズン序盤こそ予選で速く、決勝で苦戦するという特性がみえたものの、開発陣の踏ん張りにより、そうした弱点を早々に克服したNSX-GT。マシンと相性の良い鈴鹿サーキットで開催されるシリーズ第6戦からは、パフォーマンスを向上させた今シーズン2基目のエンジンを投入する予定です。シリーズチャンピオン目指してNSX-GT勢は反撃にかかります。

佐伯昌浩 | 株式会社本田技術研究所 Honda GT プロジェクトリーダー
「エンジンをフロントに搭載したクラス1規定に準拠した車両開発は我々としては新たな挑戦でした。エアロの仕様などはコロナの影響でテストができず、開幕直前まで最終決定できないなどの苦労はありました。開幕前の段階からシーズン序盤の4戦を使ってセットアップを煮詰め、熟成テストも兼ねたレースになることを想定していました。実際、第4戦終了時点では17号車がランキングトップに立つことができましたが、他のNSX-GT勢をみるとまだ苦戦している部分があるのが実情で、セットアップの方向性を含めて我々がまだこのマシンを理解し尽くしたとはいえない状況にあるという認識です。シーズン後半も厳しい勝負が続くでしょうが、引き続き着実に開発を進め、しっかり戦ってチャンピオンを狙っていきたいと思います」

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