SF14最終年で念願のシリーズチャンピオン獲得
#16 山本尚貴がシーズン3勝で自身2度目の王座へ
国内トップフォーミュラである全日本スーパーフォーミュラ選手権では、2014年からNRE(Nippon Race Engine)規格に基づいて新たに開発された排気量2000cc直列4気筒ターボ過給直噴エンジンが用いられることになり、シャシーもSF09からSF14へ切り替えが行われた。それから5年が経過し、シリーズを運営するJRP(日本レースプロモーション)は19年より新規シャシーSF19の導入を決めたため、今年は現行SF14にとって最後のシーズンとなった。
Hondaは14年、NRE規格に基づくエンジンHR-414Eを投入、17年にはHR-417Eへ発展させてシリーズを戦ってきた。しかしHondaは4シーズンにわたってシリーズチャンピオンには届かず、最高ランキングは昨年ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)が記録したチャンピオンと0.5ポイント差の2位にとどまっていた。
SF14最後のシーズン、昨年までヨーロッパでFIA-F2選手権に参戦していた#6 松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、GP3シリーズに参戦していた#15 福住仁嶺(TEAM MUGEN)が加わった。
鈴鹿サーキットで開催されたシリーズ開幕戦では#16 山本尚貴(TEAM MUGEN)がポール・トゥ・ウインの完勝を遂げ、#5 野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が3位入賞と、幸先のいいシーズンスタートを切った。
第2戦オートポリスラウンドは悪天候のため中止となったが、スポーツランドSUGOで開催された第3戦では#5 野尻がポールポジションを獲得、決勝では#16 山本が開幕戦に続いて優勝し、シリーズの主導権を握った。
しかし夏になり気温が上がった7月に富士スピードウェイで開催された第4戦では、公式予選で#16 山本が2番手に食い込んだものの、決勝ではトヨタ勢が表彰台を独占。続くツインリンクもてぎでの第5戦でも#3 ニック・キャシディ(トヨタ)らに表彰台を奪われ、それまでランキングトップの座を守ってきた#16 山本は2位へ後退することとなった。
岡山国際サーキットでの第6戦は秋雨前線の影響で雨模様のレースウィークに。ここでも上位をトヨタ勢が占め、#16 山本はシリーズポイントを加えることができず、ランキングは#3 キャシディやディフェンディングチャンピオンの#1 石浦宏明(トヨタ)に次ぐ3位に後退する。これにより#16 山本はシリーズ最終戦でチャンピオンの座を4人のライバルと争うことになった。
新時代を目指し策定されたNRE規格は、ターボ過給直噴エンジンというレーシングエンジンにとって新しい技術を追求する場となり、HR-414EはHR-417Eへ進化しながらそのパフォーマンスを飛躍的に伸ばしてきた。一方、「クイック&ライト」というコンセプトを基に開発されたSF14は、セッティングに関しても敏感で、噛み合えば速いが、外れるとそれまでの速さが一転して失われる、ある意味気難しいマシンだった。Honda勢がシーズン中盤に勝ち星を重ねられなかった一因がここにあった。
チャンピオンをかけて最終戦に臨むこととなった#16 山本とTEAM MUGENは、これまで得意としてきた鈴鹿サーキットでのセッティングをあえて見直し、SF14をこれまでとは異なる性格に仕上げ直してレースウイークを迎えた。
その結果、山本は公式予選でポールポジションを獲得。決勝レースでもソフトタイヤでスタートしミディアムタイヤで逃げきるという作戦も功を奏し、#3 キャシディの厳しい追い上げを抑えて優勝を飾った。その結果、シリーズランキングを1ポイント差で逆転して、自身5年ぶり2回目のシリーズチャンピオンに輝いた。また、Hondaは待望の王座を獲得して、SF14最後のシーズンを締めくくることとなった。