モータースポーツ > スーパーバイク世界選手権 > 日本人ライダーの挑戦・清成龍一

―ベースマシンのCBR1000RRが新型になりました。セッティングのデータが少ないのに加え、初めてのピレリ、初めてのホワイトパワー。テストが決定的に少なかったことが影響したと思いますか?

「それは仕方のないことだし、同じ条件でチェカの方が断然リザルトがよかった。何を言っても言い訳になりますからね。

バイクについては、07年型より08年型のポテンシャルが高いということを、最初のアルメリアテストで感じました。そのあと、開幕戦カタールの前にバイクのテストがマレーシアのセパンであり、ここでも08年型のCBRで走ったのですが、改めてバイクの高いポテンシャルを実感しましたね。

ピレリタイヤについても、WSBはワンメーク。基本的にみんな同じタイヤですからね。これまで履いてきたミシュランやダンロップも、それぞれフィーリングの違いはあるけれど、大きな戸惑いはありませんでした。

ホワイトパワーも、チームが長年使っているサスペンションでデータもあるし、熟成している。そうした一つひとつに特別に大きな問題はなかったと思います。

テン・ケイト・チームのスタッフと一緒にテストをしたのがアルメリアの3日間だけだったというのが、やっぱり影響したのだと思います。僕は硬めのタイヤをチョイスしていく傾向があります。ほかの選手と好みが違うと言われることがあるけれど、そういう状況の中で、チェカが順調にタイムを出していた。それに比べて僕のタイムがあまりにも遅すぎた。あの状況では、何を言っても、チームを説得するだけの力が僕にはなかったんじゃないかなと思いますね」

―リザルトは悪かったけれど、課題がはっきりしたということで、成果があったということですね。しかも、時間が解決してくれそうな問題だった。それだけに、2連戦となる第2戦オーストラリアでは、結果を出さなければいけないと思ったのではありませんか?

「そうですね。オーストラリアでは、絶対にいいリザルトを残そうと思いました。フィリップアイランドは、03年のMotoGPで一度だけですが走っていますからね。まるっきり初めてというわけじゃない。でも、走り出してみたら、コースをすっかり忘れていて、初めて走るのと同じでしたね(笑)

コースにはすぐに慣れることができました。それよりも問題は、オーストラリアでもブレーキングが全然うまくいかなかったこと。特にヘアピンでは、まるで突っ込めなくて、ものすごくタイムをロスしていました。

チーフメカニックはもちろんのこと、サスペンションのエンジニアと連日ミーティングをしました。自分の欲しいフィーリングをしつこくしつこく説明していきました。それなのに、一向に僕のタイムは上がらない。一方のチェカはどんどんタイムを上げていく。ここでもやっぱり僕の言葉に説得力がなかったのか、と思いました。

結局、2日目もダメで、予選19番手。2戦連続スーパーポール(予選上位16台が進出してグリッドを決める)に出られなかった。かなりがっかりしたし、やばいなって思いましたね。原因はわかっている。ここさえ直してくれればなんとかなるって思っているのに、それができない。

とにかく、ブレーキングがダメだって何度も何度も言いました。もうあとは、決勝前のウオームアップでセッティングを変えてもらうしかないと思いました。ところがウオームアップも全然ダメで、これは、本当にやばいと思った。それで決勝に向けて、もう一度セッティングを変えて欲しいとお願いして、グリッドに並ぶことになりました。

決勝では、やっと、セッティングが僕の好みの方向に向いてきたことを感じました。でも相変わらずブレーキングがダメで、勝負どころのヘアピンで抜けないし、完ぺきには程遠かったけれど、これまでの中では一番よかったです。

それで本番では、ベストタイムが0.2から0.3秒上がりました。そのベストタイムに近いラップで最後まで走りきれたこともよかった。第1レース9位。第2レース6位。表彰台には立てなかったけれど、正直、ホッとしましたね。ピットに帰ってきたら、スタッフ全員が喜んでくれた。それ以上に、僕のセッティングをスタッフがやっと理解してくれたことが、本当にうれしかったですね。

カタール、オーストラリア。この2戦は、みんなに喜んでもらえるリザルトには、ほど遠かったけれど、チームのコミュケーションはすごく深まったと思います。そういう意味では、やっとスタートラインに立てたと思っています。バイクは速かったし、第2レースではチェカが2位表彰台に立った。僕も、1日も早く表彰台、そして優勝を目指したいですね」

第2戦オーストラリアの清成は、9位/6位だったが、その戦いぶりは、BSB2連覇を果たした清成の実力を知るに十分だった。後方19番グリッドからオープニングラップには20番手前後に沈む。しかし、1台、また1台と追い上げる清成の快進撃に、誰もが度肝を抜かれた。この日、レース中に追い抜いたライダーの数ではナンバー1を誇っただけでなく、スタートのグリッドさえよければ、優勝争いに十分絡めるラップタイムをマークしていた。

清成のスーパーバイク世界選手権への挑戦は、まだ始まったばかり。しかし、周囲の大きな期待に早くも応え始めようとしている。

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