第10戦ドイツ大会が、9月16日(金)から18日(金)までの3日間、ラウシッツリンク・ユーロスピードウエイで開催されました。ドイツ大会が行われるのは2013年以来、3年ぶりで、ラウシッツリンクで開催されるのは、07年以来、9年ぶりとなりました。
ドレスデン郊外に位置するラウシッツリンクは、オーバルコースが2つ。さらに、レーシングコースがインフィールドにあるというドイツが世界に誇る近代的なサーキットとして00年に完成しました。スーパーバイク世界選手権は01年に初開催となり、以後、02年、05年、06年、07年と5回開催されました。1周4.265kmの国際レーシングコースは、オーバルコースを併用するロングストレートとインフィールドにつくられたテクニカルセクションを組みあわせたサーキットで、パッシングポイントの少ない難コースとして知られています。Honda World Superbike Teamの選手は、8月にラウシッツリンクで行われた2日間の合同テストに参加しています。
ニッキー・ヘイデン
ニッキー・ヘイデン
今季スーパーバイク選手権にスイッチしたニッキー・ヘイデン(Honda World Superbike Team)は、9戦を終えて総合6位。初優勝を含む3回の表彰台に立ってきました。ここからの後半の4戦では、さらに表彰台と勝ち星を増やす意気込みです。ラウシッツリンクは、オーバルコースとロードコースを併用したサーキット。ヘイデンの地元であるアメリカのサーキットをほうふつとさせ、闘志満々で挑むことになりました。ヘイデンは「初めてのサーキットだが、テストをしているし、そのデータを生かしたい。マシンは確実によくなっている」と気合を入れていました。
その言葉通り、初日のフリー走行で5番手と順調なスタートを切りました。ウエットコンディションとなった2日目の午前中のフリー走行では転倒を喫しますが、その後に行われたスーパーポール方式の予選では、見事3番手。その転倒の影響でブレーキの調整に時間をロスしますが、残り時間が少なくなった最後のアタックで今季初のフロントローを獲得しました。
その勢いで迎えた第1レースでは、オープニングラップの1コーナーの混雑の中で7番手までポジションを落としますが、着実にポジションを上げました。「ブレーキングがすごくよかった」とヘイデンは、ジョルディ・トーレス(BMW)、ダビデ・ジュリアーノ(ドゥカティ)をかわして5番手へ。ジョナサン・レイ(カワサキ)、ロレンツォ・サバドーリ(アプリリア)の転倒で3番手へ浮上すると、さらに、2番手を走るトム・サイクス(カワサキ)を猛追。わずかに届かず3位でフィニッシュしました。
ニッキー・ヘイデン
今季4回目の表彰台に立ったヘイデンは、翌日の第2レースでは今季2勝目と5回目の表彰台が期待されましたが、スタート直前に強い風と雨が降り、フルウエットの難しいコンディションの中で10位に終わりました。雨のためにスタート進行をやり直したことで、第2レースは21周が16周に短縮して行われました。短期決戦となったレースですが、ヘイデンはウエットコンディションとなった前日のFP3で転倒を喫し、ほとんど走行していないためにペースをつかめず、1周目に17番手までポジションを落とします。その後、追い上げますが10位がやっと。2レース連続表彰台は果たせませんでした。
チームメートのマイケル・ファン・デル・マーク(Honda World Superbike Team)は、9戦を終えて5回の表彰台に立って総合5位。残り4戦で総合4位獲得を目標にしているだけに、一戦一戦がミスの許されない戦いとなります。
初日のフリー走行では、リアのグリップをうまく引き出せず10番手。なんとかダイレクトにSP2進出を果たしますが、予選用タイヤを入れてのアタックでも、タイミングを逃し10番グリッドといい流れに乗れませんでした。
マイケル・ファン・デル・マーク
マイケル・ファン・デル・マーク(#60)
その後に行われた第1レースでは、リアのグリップに依然として苦戦、思うようにペースがあがりませんでした。しかし、ジョルディ・トーレス(BMW)とレオン・キャミア(MVアグスタ)とし烈な4位争いを繰り広げて、6位でフィニッシュ。ウエットコンディションとなった翌日の第2レースでは、6番手を走行していた14周目の9コーナーで転倒しましたが、再スタートを切って8位でフィニッシュしました。
ファン・デル・マークにとっては、6位/8位とフラストレーションのたまる結果でしたが、総合では4位に浮上。第1レースで表彰台に立ったヘイデンも総合5位と、それぞれランキングを上げることに成功しました。
マイケル・ファン・デル・マーク
スーパースポーツ世界選手権は、第9戦アメリカ大会がカレンダーに組み込まれていないため、今大会が9戦目となります。前戦サンマリノ大会から約3カ月という長いインターバルを経て、後半の4戦に挑む選手たちは、ドイツ大会の開幕を待ちきれない様子でした。
パトリック・ジェイコブセン(#2)
8戦を終えて総合3位につけるパトリック・ジェイコブセン(Honda World Supersport Team)は、鈴鹿8時間耐久ロードレースに出場するなど、これまでにない貴重な経験を積んできました。しかし、後半戦のスタートとなるラウシッツリンクは、思うようにコース攻略ができず、CBR600RRのセットアップも進みませんでした。初日のフリー走行は8番手。予選でも思うようにタイムを伸ばせず9番手と、今季のワーストグリッドから決勝に挑むことになりました。
パトリック・ジェイコブセン(#2)
しかし、決勝で次第にリズムをつかんだジェイコブセンは、フェデリコ・カリカスロ(Bardahl Evan Bros Honda)、ランディ・クルメンナッハ(カワサキ)、ロレンツォ・ザネッティ(MVアグスタ)とのし烈な戦いを制して4位でフィニッシュしました。5位には、カリカスロ。総合3位のクルメンナッハが6位に終わり、ジェイコブセンは、クルメンナッハとの差を9点に縮めました。
パトリック・ジェイコブセン
以下、CBR600RR勢は、クリストファー・ベルグマン(CIA Landlord Insurance Honda)が8位、カイル・スミス(CIA Landlords Insurance Honda)が9位、大久保光(CIA Landlords Insurance Honda)が10位。トップ10に5台のCBR600RR勢が名前を連ねました。
パトリック・ジェイコブセン(4位)
「今日は我々にとっていい一日になりました。今週はとてもセットアップに苦しみました。それを思えば、今日の4位は表彰台に立ったような気持ちです。今回は、このコースを全く攻略できず、セットアップも進まず、いいレースができる自信もありませんでした。しかし、決勝では最後まであきらめず、ベストを尽くしました。正直、もう少しレースが長かったらと思いました。とにかく、最後までがんばってくれたチームに感謝します。次のマニクールでは、昨年優勝しているので、今年も優勝を目指しがんばりたいです」
フェデリコ・カリカスロ(5位)
「いいレースでした。そして、やっと本来の走りを取り戻すことができました。1周目は、トップグループから遅れないようにするために全力で挑みました。レースウイークを通じて、決勝でベストタイムを出せたこともよかったです。(パトリック)ジェイコブセンといいレースができました。しかし、彼の方がタイヤをうまくセーブしていました。トップグループで戦うには、まだ足りない部分がありますが、マシンは完ぺきでした。チームに感謝したいです」
大久保光(10位)
「今回は不安定な天候となりましたが、ドライでもウエットでもどちらでもいいレースができると思っていました。しかし、課題は初日のフリー走行です。ここでタイムが出せないことが、結局、2日目の予選と決勝のグリッドに影響しました。それを改善できれば、さらに上のグループで戦えると思いますし、次の大会では今年の反省点を少しでも改善したいです。今回は決勝でウイークを通して自己ベストををマークできたこともよかったです」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 21 | 34'20.100 |
2 | 66 | T.サイクス | カワサキ | 21 | +10.561 |
3 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 21 | +11.536 |
4 | 81 | J.トーレス | BMW | 21 | +12.493 |
5 | 2 | L.キャミア | MVアグスタ | 21 | +12.965 |
6 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 21 | +18.863 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | J.レイ | カワサキ | 16 | 31'39.737 |
2 | 15 | A.デ・アンジェリス | アプリリア | 16 | +9.396 |
3 | 12 | X.フォレス | ドゥカティ | 16 | +13.041 |
4 | 2 | L.キャミア | MVアグスタ | 16 | +15.728 |
5 | 50 | S.ギュントーリ | ヤマハ | 16 | +17.100 |
6 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 16 | +19.780 |
8 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 16 | +54.373 |
10 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 16 | +59.671 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | K.ソフォーグル | カワサキ | 19 | 32'18.677 |
2 | 66 | N.トゥーリ | ヤマハ | 19 | +1.757 |
3 | 16 | J.クルーゼル | MVアグスタ | 19 | +4.712 |
4 | 2 | パトリック・ジェイコブセン | ![]() | 19 | +12.174 |
5 | 64 | フェデリコ・カリカスロ | ![]() | 19 | +13.195 |
6 | 21 | R.クルメンナッハ | カワサキ | 19 | +13.820 |
8 | 71 | クリストファー・ベルグマン | ![]() | 19 | +18.096 |
9 | 111 | カイル・スミス | ![]() | 19 | +22.721 |
10 | 78 | 大久保光 | ![]() | 19 | +24.609 |
13 | 86 | アイルトン・バドヴィーニ | ![]() | 19 | +25.049 |
16 | 19 | ケビン・ヴァール | ![]() | 19 | +32.781 |
28 | 50 | ブレードン・オルト | ![]() | 19 | +1'31.475 |
RT | 35 | ステファン・ヒル | ![]() | 4 | +15Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | J.レイ | カワサキ | 393 |
- | 2 | 66 | T.サイクス | カワサキ | 346 |
- | 3 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 295 |
▲ | 4 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 203 |
▲ | 5 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 195 |
▼ | 6 | 34 | D.ジュリアーノ | ドゥカティ | 194 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | カワサキ | 466 |
- | 2 | ドゥカティ | 367 |
- | 3 | ![]() | 265 |
- | 4 | BMW | 187 |
- | 5 | ヤマハ | 160 |
- | 6 | アプリリア | 152 |
- | 7 | MVアグスタ | 134 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | K.ソフォーグル | カワサキ | 171 |
- | 2 | 21 | R.クルメンナッハ | カワサキ | 118 |
- | 3 | 2 | パトリック・ジェイコブセン | ![]() | 109 |
▲ | 4 | 16 | J.クルーゼル | MVアグスタ | 91 |
▼ | 5 | 4 | G.レイ | MVアグスタ | 81 |
▲ | 6 | 111 | カイル・スミス | ![]() | 75 |
- | 8 | 64 | フェデリコ・カリカスロ | ![]() | 65 |
- | 9 | 86 | アイルトン・バドヴィーニ | ![]() | 52 |
▼ | 20 | 19 | ケビン・ヴァール | ![]() | 17 |
▲ | 22 | 71 | クリストファー・ベルグマン | ![]() | 15 |
- | 24 | 78 | 大久保光 | ![]() | 13 |
▼ | 26 | 68 | グレン・スコット | ![]() | 7 |
▼ | 32 | 48 | アレックス・フィリス | ![]() | 2 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | カワサキ | 206 |
- | 2 | ![]() | 164 |
- | 3 | MVアグスタ | 152 |
- | 4 | ヤマハ | 48 |
- | 5 | トライアンフ | 30 |
- | 6 | スズキ | 5 |
ニッキー・ヘイデン(3位/10位)
「第1レースは順調ではありませんでしたが、いい経験になりました。なぜなら、午前中のフリー走行で転倒したのですが、予選に向けてスタッフがいい仕事をしてくれたからです。しかし、予選が始まってすぐにリアブレーキに問題があってピットへ入りました。コースに戻ったときには、残り時間がほとんどなかったのですが、最後のアタックで3番手までポジションを上げることができました。シーズンを通して、そしてレースウイークを通して、最高のアタックでした。
これでいいポジションを獲得したのですが、スタート直後の1コーナーで押し出されました。苦しいスタートになりましたが、ブレーキングがとてもよくて、すぐにいくつかポジションを取り戻し、それからもいいペースで走ることができました。
3番手に上がってからは前を走るトム(サイクス)との差を縮めることができました。元チャンピオンの彼と戦いたかったですし、ファンにそれを見せたかったです。残念ながら抜くことができませんでしたが、明日のレースはさらにいい結果を目指します。
第2レースは、ウォームアップでとてもよかったのですが、その後、天候は変わり、路面コンディションも変わり、自分にとってはいい一日にはなりませんでした。ウエットコンディションだったFP3で転倒してしまい、ウエットコンディションでちゃんと走れていなかったことから、いい走りができませんでした。チームには本当に申し訳ない気持ちです。
とにかく、序盤は全くペースを上げられませんでした。その後、フィーリングはよくなってきたのですが、中盤、前を走る(アレックス)ローズが転倒して、それを避けるために大きくタイムロスしてポジションも落としてしまいました。コースに戻ったときには15秒のロスをした上に、ポジションを2つか3つ落としていました。ウエットではいいパフォーマンスを発揮できませんでしたが、次のマニクールでは、さらにいい結果を残したいです」
マイケル・ファン・デル・マーク(6位/8位)
「ウエットコンディションになった土曜日のフリー走行はよかったですが、午後のスーパーポールはウエットからドライへとコンディションが変わりました。スーパーポール1のときは微妙なコンディションでした。スーパーポール2は、完全に乾いていましたが、路面コンディションを確認しながら確実にタイムを上げていきました。そして、予選用タイヤを入れてアタックしようと思ったときには時間がなくて、タイムを更新できませんでした。
そのあとの決勝は、スタートもよくて、1コーナーでいくつかポジションを上げられるはずだったのですが、渋滞で行き場がなくなり、どうしようもありませんでした。それからは、リアのグリップと戦わなければならず、前の選手をなかなか抜くことができませんでした。
レースが進むにつれて、よりその症状が目立ち、ペースを上げることができませんでした。(ダビデ)ジュリアーノを抜いてからは、(ジョルディ)トーレスをマークする形で多くの周回を重ねましたが、トーレスを抜くことはできませんでした。しかし、ジュリアーノを抜いて総合4位に上がれました。
そして、翌日の第2レース前のウォームアップでは、いいセットアップを見つけることができました。しかし、雨が降り、フルウエットの中でスタートすることになりました。路面が非常に滑りやすく、難しいレースでした。思ったようにペースを上げることができなかったのですが、2周目にチャンピオンシップを戦うジュリアーノが転倒したのを見て、今日はしっかり走りきろうを決めました。しかし、6番手を走っていた残り3周で、フロントをロックさせて転んでしまいました。バイクをすぐに起こし、なんとか最後まで走りきることができました。結果は6位/8位ですが、総合4位に上がれましたし、第2レースではそれをキープできたので、がっかりしていません」