第7戦イギリス大会が、5月27日(金)から29日(日)までの3日間、イングランド中部のノッティンガム近郊にある、ドニントンパークで開催されました。ドニントンパークは、一周4.023km、シケインとヘアピン、中高速コーナーが連続する、バリエーション豊かなサーキットです。パッシングポイントが多く、毎年厳しい戦いが繰り広げられます。
ニッキー・ヘイデン
ニッキー・ヘイデン(#69)
加えて、雨が降ることが多く、不安定な天候がチームや選手たちを悩ませることが多いサーキットでもあります。しかし、今年は3日間を通じて天候に恵まれ、絶好のコンディションの中で決勝レースが行われました。
スーパーバイク世界選手権(WSB)での初優勝を、前戦マレーシア大会で達成したニッキー・ヘイデン(Honda World Superbike Team)は、かつてMotoGPに出場しており、ドニントンパークは走り慣れているサーキットです。2戦連続での優勝や表彰台への登壇が期待されましたが、フリー走行では車体のセットアップに時間を費やし、総合11位でした。そのため、予選では総合11位以下で競われるスーパーポール1に出場することとなりましたが、同セッションでトップタイムをマークして、スーパーポール2に進出。決勝レースには、7番グリッドから挑むことになりました。
ニッキー・ヘイデン
マイケル・ファン・デル・マーク
ヘイデンは、レース1ではトップグループの戦いについていけませんでしたが、大混戦のセカンドグループの戦いを制し、5位でフィニッシュしました。そして、レース1のデータをもとに、レース2はセットアップを変更し、ベストタイムもアベレージも改善することに成功しました。レース中盤には、3位を走るチャズ・デイビス(ドゥカティ)を追撃し、表彰台争いが期待されましたが、後半はハンドリングに苦しんでペースダウン。最終的に6位でチェッカーを受けました。
マレーシア大会で優勝し、勢いのあるヘイデンとしては、フラストレーションのたまる大会となりましたが、CBR1000RRのセットアップの方向性を再確認するレースとなりました。次戦イタリア大会では、今大会の課題を解消し、今季3度目の表彰台と、2度目の優勝に挑みます。
マイケル・ファン・デル・マーク
マイケル・ファン・デル・マーク(#60)
チームメートのマイケル・ファン・デル・マークは、スーパースポーツ世界選手権に出場していた2014年にドニントンパークで優勝していますが、スーパーバイク世界選手権へのデビューを果たした昨年は、2レースともにリタイアと厳しい結果に終わりました。今年も初日からブレーキングと車体のセットアップに苦しみ、フリー走行、予選、決勝と力を出し切れないまま、3日間を終えてしまいました。
レース1は、ジョルディ・トーレス(BMW)とし烈な戦いを繰り広げて8位。レース2は、ジョシュ・ブルックス(BMW)とキャメロン・バービア−(ヤマハ)と競って8位。両レースともにポイント獲得を果たすも、本来、ファン・デル・マークが戦うべきトップグループから大きく引き離される、悔しい結果となりました。
ファン・デル・マークはヘイデンとともに、今大会の雪辱を果たすべく、次戦イタリア大会に挑みます。
スーパースポーツ世界選手権は、フロントローである2番手グリッドから好スタートを切ったパトリック・ジェイコブセン(Honda World Supersport Team)と、ポールポジションからスタートしたケナン・ソフォーグル(カワサキ)の一騎打ちとなり、ソフォーグルを激しく追撃したジェイコブセンが、僅差の2位でフィニッシュしました。
パトリック・ジェイコブセン
パトリック・ジェイコブセン
ドニントンパークは、前半は中高速コーナーが連続するハイスピード区間、後半はシケインとヘアピンが続くハードブレーキングポイントが続きます。このコースが大好きだというジェイコブセンは、フリー走行、予選と順調にセットアップを進め、今季初優勝の期待が膨らみました。しかし、ハードブレーキングを得意とするソフォーグルに先行できず、1.569秒差の2位でフィニッシュしました。
今季3度目の表彰台を獲得したジェイコブセンは、優勝こそ逃しましたが、第5戦イタリア・イモラ大会で3位、第6戦マレーシア大会で4位、そして今大会で2位と調子を上げているだけに、次戦イタリア・ミサノ大会では、今季初優勝が期待されます。
ホームでの大会を迎えたカイル・スミス(CIA Landlords Insurance Honda)は、予選8番手から決勝に挑みました。レース序盤では、コーナーの進入で攻めきれずに14番手までポジションを落としましたが、地元ファンの声援を受けて着実にポジションを上げることに成功し、6位でチェッカーを受けました。
前戦マレーシア大会で初優勝を成し遂げたアイルトン・バドヴィーニ(Gemar Balloons - Team Lorini)は、予選6番手から決勝レースに挑み、9位でフィニッシュ。予選16番手から決勝に臨み、序盤で23番手までポジションを落とした大久保光(CIA Landlords Insurance Honda)が、4台のマシンによる15位争いを制し、2戦連続でポイントを獲得しました
パトリック・ジェイコブセン(スーパースポーツ 2位)
「ドニントンは大好きなサーキットなので、今大会はいいレースができると信じていました。しかし、今日はタイヤに厳しいレースになると思い、序盤のペースを少し抑えました。その結果、序盤にケナン(ソフォーグル)とのリードが開き過ぎてしまい、それが最後まで影響しました。7周目を終えたころから、その差を縮めようとプッシュしたのですが、ハイサイドを喫して転倒しそうになり、これ以上の無理はできないと思いました。今日は全力を尽くしました。優勝することはできませんでしたが、チームに対しては、こうして優勝争いができるようになったことに感謝しています。これからは、すべてのサーキットでチャンスがあると思うので、全力を尽くします」
カイル・スミス(スーパースポーツ 6位)
「今は、なんと言っていいのかわからない、複雑な心境です。マシンのフィーリングはよかったです。しかし、いいパートとそうでないパートがあって、安定したタイムを刻むことができませんでした。タイヤがコースに馴染むまでは、コーナーの進入であまり接地感を感じられず、プッシュすることができませんでした。そのため序盤にポジションを14番手まで落としてしまったのですが、後半はペースを上げて、6番手でフィニッシュすることができました。次のレースで勝利を目指すためには、今日の問題点を解決しなければいけません。次戦イタリア大会では、いいリザルトを残せるようにがんばります」
大久保光(スーパースポーツ 15位)
「スタートして1周目のシケインで、接触してグラベルに出てしまい、23番手までポジションを落としてしまいました。そこから必死に追い上げて、終盤に15位争いの集団に追いつきました。最終ラップはチームメートとの戦いになりましたが、4台のグループのトップでフィニッシュして、ポイントを獲得することができました。前戦マレーシア大会で初ポイントを獲得したときもうれしかったですが、今回はヨーロッパラウンドなので、それ以上にうれしいです。自分にとっては初めてのサーキットでした。みんな走り慣れているサーキットでポイントを取れたことに、チームも喜んでくれましたし、自分にとっても大きな自信になりました。次戦イタリア大会も、この調子でがんばります」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 66 | T.サイクス | カワサキ | 23 | 34'04.276 |
2 | 34 | D.ジュリアーノ | ドゥカティ | 23 | +2.869 |
3 | 1 | J.レイ | カワサキ | 23 | +9.808 |
4 | 2 | L.キャミア | MVアグスタ | 23 | +13.747 |
5 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 23 | +14.007 |
6 | 32 | L.サバドーリ | アプリリア | 23 | +14.640 |
8 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 23 | +16.535 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 66 | T.サイクス | カワサキ | 23 | 33'55.601 |
2 | 1 | J.レイ | カワサキ | 23 | +2.017 |
3 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 23 | +4.437 |
4 | 32 | L.サバドーリ | アプリリア | 23 | +6.423 |
5 | 2 | L.キャミア | MVアグスタ | 23 | +11.808 |
6 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 23 | +12.455 |
8 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 23 | +25.931 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | K.ソフォーグル | カワサキ | 20 | 30'29.814 |
2 | 2 | パトリック・ジェイコブセン | ![]() | 20 | +1.569 |
3 | 21 | R.クルメンナッハ | カワサキ | 20 | +3.775 |
4 | 4 | G.レイ | MVアグスタ | 20 | +7.204 |
5 | 81 | L.ステープルフォード | トライアンフ | 20 | +7.576 |
6 | 111 | カイル・スミス | ![]() | 20 | +11.323 |
9 | 86 | アイルトン・バドヴィーニ | ![]() | 20 | +15.215 |
11 | 64 | フェデリコ・カリカスロ | ![]() | 20 | +19.681 |
15 | 78 | 大久保光 | ![]() | 20 | +34.652 |
16 | 71 | クリストファー・ベルグマン | ![]() | 20 | +34.782 |
22 | 96 | ハビエル・オレジャーナ | ![]() | 20 | +1'00.765 |
25 | 35 | ステファン・ヒル | ![]() | 20 | +1'05.015 |
RT | 50 | ブレードン・オルト | ![]() | 2 | +18Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | J.レイ | カワサキ | 293 |
▲ | 2 | 66 | T.サイクス | カワサキ | 237 |
▼ | 3 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 231 |
▲ | 4 | 34 | D.ジュリアーノ | ドゥカティ | 147 |
▼ | 5 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 141 |
- | 6 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 136 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | カワサキ | 321 |
- | 2 | ドゥカティ | 268 |
- | 3 | ![]() | 188 |
- | 4 | BMW | 127 |
- | 5 | ヤマハ | 105 |
- | 6 | アプリリア | 103 |
- | 7 | MVアグスタ | 97 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | K.ソフォーグル | カワサキ | 121 |
- | 2 | 21 | R.クルメンナッハ | カワサキ | 95 |
▲ | 3 | 2 | パトリック・ジェイコブセン | ![]() | 76 |
▼ | 4 | 16 | J.クルーゼル | MVアグスタ | 75 |
▼ | 5 | 111 | カイル・スミス | ![]() | 67 |
- | 6 | 4 | G.レイ | MVアグスタ | 65 |
- | 8 | 64 | フェデリコ・カリカスロ | ![]() | 53 |
- | 9 | 86 | アイルトン・バドヴィーニ | ![]() | 48 |
▼ | 20 | 19 | ケビン・ヴァール | ![]() | 15 |
- | 23 | 68 | グレン・スコット | ![]() | 7 |
- | 26 | 48 | アレックス・フィリス | ![]() | 2 |
- | 27 | 78 | 大久保光 | ![]() | 2 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | カワサキ | 156 |
- | 2 | ![]() | 131 |
- | 3 | MVアグスタ | 120 |
- | 4 | ヤマハ | 27 |
- | 5 | トライアンフ | 17 |
- | 6 | スズキ | 1 |
ニッキー・ヘイデン(スーパーバイク 5位/6位)
「レース1は5位でフィニッシュしました。前戦マレーシア大会で優勝を経験したあとだったので、5位という結果には満足できませんが、悪くはない結果です。決勝に向けてバイクの状態はよくなったし、がんばってくれたチームとスタッフに感謝します。今日はスーパーポール1でトップタイムをマークしてスーパーポール2に進出し、7番グリッドを獲得することができました。しかし、せっかくのポジションをうまく生かすことができませんでした。序盤、どうしてなのかわからないですが、ペースを上げられませんでした。その原因はチェックしなければなりませんが、全体的にはよい内容のレースだったと思います。今日は新しいタイヤを初めて使いましたが、レースを通してアベレージは安定していました。ピレリに感謝したいです。レース2は、6位に終わりとても残念でした。しかし、チームはすばらしい仕事をしてくれました。レース1からレース2にかけて、フロントタイヤをよりハードなものに変更しました。その結果、ダウンヒルのブレーキングで、コーナーの安定性を高めることに成功しました。実際、レース2では、レースウイークで自己ベストをマークすることができました。ペースも速かったと思いますし、悪くはなかったです。しかし、レース後半は、ちょっとした問題が発生して、それからペースを落としてしまいました。コーナーでの切り返しがうまくいかなくなり、特にマシンを起こすときに苦労しました。それまでは、前を走るチャズ(デイビス)との差を縮めていましたし、表彰台争いに加われると思っていました。それだけに後半のペースダウンは残念でした。とはいえ、全体的にはよいレースだったと思います。次のステップに進むためには、もう少し、マシンを改善しなくてはいけませんし、次戦イタリア大会に向けて、引き続き全力で挑みます」
マイケル・ファン・デル・マーク(スーパーバイク 8位/8位)
「前戦マレーシア大会の結果は、期待していたものからはほど遠かったです。我々の目標は、シーズン序盤の2戦の走りと結果を取り戻すことでした。今回の結果は、とても残念でした。レース1は、セットアップに苦労しました。いろいろとトライしたのですが、うまくいかず、12番グリッドから決勝に挑むことになりました。スタートの切り方はよかったのですが、いくつかのポイントで電子制御がうまく機能せず、タイムをロスしてしまいました。その後、スピードアップを果たし、タイムロスをばん回することができましたが、前のライダーとバトルができる状態まで追い上げることはできず、8位でフィニッシュすることになりました。レース2も厳しいものとなりました。マシンの状況は、前日のレース1とほとんど変わりませんでした。12番グリッドからスタートして、いくつかポジションを上げましたが、ジョシュ(ブルックス)とキャメロン(バービア−)とのバトルに、ほとんどの周回を費やしました。最終的にこの2人に先行することができましたが、簡単ではありませんでした。今大会はスターティンググリッドが悪かったこともありますが、トップ5に入れるだけのペースがありませんでした。次戦イタリア大会で、再びトップグループで戦うために、やらなければいけないことがたくさんあります。来週のテストで、現在抱えている問題をしっかり解決して、大会に挑みたいです」