第6戦マレーシア大会が、5月13日(金)から5月15日(日)までの3日間、クアラルンプール郊外のセパン・サーキットで開催されました。セパンでスーパーバイク世界選手権(WSB)が開催されるのは今年で3度目となります。
セパン・サーキットは、一周、5.548kmのロングコース。2本の長いストレートとバラエティに富んだコーナーがバランスよく配置されており、リズム感あふれる走りが披露されます。セパンは熱帯地方のため、一年を通して30℃以上の最高気温が記録されます。土曜日の第1レースはドライコンディションとなり、最高気温は32℃。日曜日の第2レースは、熱帯特有のスコールがサーキットに雨を落としたことで26℃まで気温は下がり、ウエットコンディションの中で決勝レースが行われました。
今季、MotoGPからWSBにスイッチしたニッキー・ヘイデン(Honda World Superbike Team)は、第4戦オランダ大会の第1レースで3位初表彰台を獲得して、上り調子。前戦イタリア・イモラ大会は初めて経験するサーキットで表彰台争いには加われませんでしたが、CBR1000RRのパフォーマンスを確実に引き出せるようになってきました。
ニッキー・ヘイデン
ニッキー・ヘイデン
今大会は、MotoGP時代から走り慣れているセパン。初日のフリー走行で3番手につけると、予選前のフリー走行でも3番手をキープして好調さをアピール。そして、フリー走行の上位12位までの選手で行われるSP2では、今季ベストの4番グリッドを獲得し、初優勝に向けて大きな手応えを感じていました。
その勢いで土曜日の第1レースを迎えると、絶好のスタートを切ってトップグループに加わります。そして、レース中盤まで4番手を走行していましたが、後半はペースを落とし、最終的に8位までポジションを落とす悔しいレースとなりました。
その雪辱に闘志を燃やした日曜日の第2レースは、ウエットコンディションになりました。今大会、初めて経験するウエットコンディションとなりましたが、好スタートを切ったヘイデンは、オープニングラップに先行するジョナサン・レイ(カワサキ)とトム・サイクス(カワサキ)を交わしてトップに浮上しました。
オープニングラップを制したヘイデンは、その後も快調にラップを刻んでレース中盤には、2番手以下に4秒以上のリードを築きます。コースのライン上が乾き始めてきたレース終盤は、追い上げてきたダビデ・ジュリアーノ(ドゥカティ)にその差を縮められますが、落ち着いたレース運びをみせたヘイデンは、後続の追撃を振り切って初優勝を達成しました。
ニッキー・ヘイデン
ニッキー・ヘイデン
チームメートのマイケル・ファン・デル・マークは、スーパースポーツ世界選手権(WSS)に出場していた2014年にセパンで優勝しています。そして、WSBにデビューした15年は第2レースで5位フィニッシュとしていますが、今年は昨年のリザルトを上回れない厳しい戦いを強いられました。
今年は開幕戦オーストラリアで3位/2位、第2戦タイでは初のPPを獲得して第1レースで3位になっています。第4戦オランダの第2レースでは3位になるなど、安定した速さで表彰台に立ってきました。今大会は表彰台獲得はもちろんのことWSB初優勝も期待されましたが、第1レースで7位、第2レースで6位と苦戦のレースとなりました。
マイケル・ファン・デル・マーク(#60)
マイケル・ファン・デル・マーク
今大会は全体的にグリップ不足に苦しみ、ウエットコンディションとなった第2レースではブレーキングにも苦しみました。しかし、チームメートのヘイデンが優勝したことでチームのモチベーションは高く、次戦のイギリスに向けて闘志を燃やしています。
スーパースポーツ世界選手権(WSS)はスタート前に降ったスコールと、その後グリッドについてからの強い雨の影響でスタート進行が2度やり直しとなり、最終的にスーパーバイク世界選手権の第2レースが終わった後に決勝レースが行われることになりました。そのため、当初の予定より約3時間遅れてスタートが切られました。
WSSは、金曜日に行われた2回目のフリー走行でウエットコンディションを経験しているので、これが2度目のウエットコンディションとなりました。そして予選6番手からオープニングラップで5番手につけたアイルトン・バドヴィーニ(Gemar Balloons - Team Lorini)が、5周目に3番手、8周目に2番手、11周目にはトップに浮上すると、2番手を走るズルファミ・カイルディン(カワサキ)の猛追撃を振り切って初優勝を達成しました。
昨年までWSBに参戦していたバドヴィーニは、今年の第4戦オランダ大会からWSSにスイッチ。参戦から3戦目の今大会で初優勝を達成しました。
今大会、予選4番手から決勝に挑んだパトリック・ジェイコブセン(Honda World Supersport Team)が4位。予選15番手から好スタートを切ったカイル・スミス(CIA Landlords Insurance Honda)が5位。フェデリコ・カリカスロ(Bardahl Evan Bros Honda)が10位。大久保光(CIA Landlords Insurance Honda)が15位で初ポイントを獲得しました。
パトリック・ジェイコブセン
パトリック・ジェイコブセン
アイルトン・バドヴィーニ(スーパースポーツ 優勝)
「僕とチームにとって、すばらしい一日になりました。このような結果は期待していませんでした。ウエットコンディションでスタートしたとき、マシンの感触はとてもよかったので、今日はいいレースができると思いました。最終ラップの最終コーナーは、なにも期待していませんでした。なにかを待って、それからどうしようかと考えていただけです。この地で有名なライダーにコーナーでパスされましたが、コーナーをカットして彼とのギャップを縮めようとしました。すばらしいバトルでした。彼はとてもいいライダーで、とてもいいレースでした。路面コンディションはとてもよかったです。雨が多かったときは、トラクションもよかったです。タイヤも問題はありませんでした。終盤はタイヤが消耗してきましたが、それでも特に感触に問題はありませんでした」
パトリック・ジェイコブセン(スーパースポーツ 4位)
「路面コンディションは金曜日のウエットとはかなり違いました。滑りやすく、路面は汚れていたし、さらには視界が不透明で苦戦しました。僕の前にいたケナン・ソフォグルもうまく見えていなかったと思います。彼はしぶきを避けて何度も顔を上げていたからです。彼をパスをして、視界がクリアになるエリアでは、なるべくプッシュしました。マシンの感触はよかったです。残念ながらペースを上げるのが少し遅すぎました。最後の3周は本当にがんばりました。ジノ・レイに追いついて表彰台に上がろうとしましたが、達成できませんでした。それでもたくさんのポイントを獲得できたのでポジティブな気分です」
カイル・スミス(スーパースポーツ 5位)
「いい一日でした。しかし、今週はセットアップが決まらないまま決勝を迎えてしまいました。厳しいレースを予想していましたが、ウエットコンディションになってくれたおかげでいいレースができました。スタートからゴールまで限界で走っていたし、今日の5位は力を出しきっての結果でした。ポジション的には満足行くものではありませんが、しっかりポイントを獲得できたし、チャンピオンシップを考えれば悪くありません。次はホームレースとなるので、さらにいいレースをできるようにがんばります」
大久保光(スーパースポーツ 15位)
「セパンは、アジアロード選手権で走っていますが、そこではショートコースで行われるので、ロングコースは初めて経験しました。しかし、初日から気持ちよく乗れていました。グリッドは16番手でしたが、フリー走行から予選に掛けて2秒以上タイムを短縮できたし、決勝日の朝のウォームアップでも10番手タイムだったので、ドライコンディションでもいいレースができたと思います。決勝はウエットになりました。何度もスタート進行が中断になり、最終的にWSBの決勝の後に行われて集中するのが大変でした。レースは3台で14番手争いをしていましたが、最終ラップの最終コーナーで1台を抜いて15位でフィニッシュすることができました。前戦イモラでベースのセッティングが出ていたので、ウイークを通して順調でした。次から後半戦に入るので、さらにいい結果を目指してがんばります」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 66 | T.サイクス | カワサキ | 16 | 33'30.487 |
2 | 1 | J.レイ | カワサキ | 16 | +5.600 |
3 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 16 | +8.039 |
4 | 81 | J.トーレス | BMW | 16 | +17.666 |
5 | 22 | A.ローズ | ヤマハ | 16 | +18.613 |
6 | 34 | D.ジュリアーノ | ドゥカティ | 16 | +19.871 |
7 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 16 | +24.120 |
8 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 16 | +25.461 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 16 | 37'04.047 |
2 | 34 | D.ジュリアーノ | ドゥカティ | 16 | +1.254 |
3 | 1 | J.レイ | カワサキ | 16 | +3.684 |
4 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 16 | +5.720 |
5 | 13 | A.ウエスト | カワサキ | 16 | +15.989 |
6 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 16 | +19.979 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 86 | アイルトン・バドヴィーニ | ![]() | 14 | 33'22.944 |
2 | 63 | Z.カイルディン | カワサキ | 14 | +0.050 |
3 | 4 | G.レイ | MVアグスタ | 14 | +0.980 |
4 | 2 | パトリック・ジェイコブセン | ![]() | 14 | +1.250 |
5 | 111 | カイル・スミス | ![]() | 14 | +5.035 |
6 | 1 | K.ソフォーグル | カワサキ | 14 | +8.234 |
10 | 64 | フェデリコ・カリカスロ | ![]() | 14 | +26.285 |
15 | 78 | 大久保光 | ![]() | 14 | +59.835 |
18 | 71 | クリストファー・ベルグマン | ![]() | 14 | +1'10.306 |
20 | 35 | ステファン・ヒル | ![]() | 14 | +1'35.852 |
RT | 19 | ケビン・ヴァール | ![]() | 1 | +13Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | J.レイ | カワサキ | 257 |
- | 2 | 7 | C.デイビス | ドゥカティ | 215 |
- | 3 | 66 | T.サイクス | カワサキ | 187 |
- | 4 | 60 | マイケル・ファン・デル・マーク | ![]() | 125 |
- | 5 | 34 | D.ジュリアーノ | ドゥカティ | 118 |
▲ | 6 | 69 | ニッキー・ヘイデン | ![]() | 115 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | カワサキ | 271 |
- | 2 | ドゥカティ | 232 |
- | 3 | ![]() | 167 |
- | 4 | BMW | 111 |
- | 5 | ヤマハ | 99 |
- | 6 | アプリリア | 80 |
- | 7 | MVアグスタ | 73 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | K.ソフォーグル | カワサキ | 96 |
- | 2 | 21 | R.クルメンナッハ | カワサキ | 79 |
- | 3 | 16 | J.クルーゼル | MVアグスタ | 67 |
- | 4 | 111 | カイル・スミス | ![]() | 57 |
▲ | 5 | 2 | パトリック・ジェイコブセン | ![]() | 56 |
▲ | 6 | 4 | G.レイ | MVアグスタ | 52 |
▼ | 8 | 64 | フェデリコ・カリカスロ | ![]() | 48 |
▲ | 9 | 86 | アイルトン・バドヴィーニ | ![]() | 41 |
- | 19 | 19 | ケビン・ヴァール | ![]() | 15 |
▼ | 23 | 68 | グレン・スコット | ![]() | 7 |
- | 26 | 48 | アレックス・フィリス | ![]() | 2 |
- | 27 | 78 | 大久保光 | ![]() | 1 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | カワサキ | 131 |
▲ | 2 | ![]() | 111 |
▼ | 3 | MVアグスタ | 107 |
- | 4 | ヤマハ | 27 |
- | 5 | トライアンフ | 6 |
- | 6 | スズキ | 1 |
ニッキー・ヘイデン(スーパーバイク 8位/優勝)
「第2レースで優勝することができました。とてもうれしいです。昨晩はとてもフラストレーションがたまっていました。今季ベストグリッドから決勝に挑んで8位という結果でしたから。あまりにもイライラしていたのでしょう。チーフメカニックにも大丈夫かと言われました。あきらめてはいけないと言われ、心配はないと言いました。そして一夜が明けて、今日の朝のウォームアップでは、ドライコンディションの中でいいぺ―スとすばらしいポテンシャルがありました。そして、決勝の前に雨が降り始めたときには、がんばらなければいけないと思いました。僕はチャンピオン争いに加わっていないし、少しはリスクを負うことができます。そして、序盤は前に出るチャンスをつかみました。アッセンのように、集団の中でレースはしたくありませんでした。視界がクリアなところにいたかったからです。前に出たとき、マシンはすべてが機能していました。チームがマシンのすべてを理解していたし、セットアップは完ぺきでした。アスファルトが新しくなったこのサーキットで、どれだけタイヤが持つのかはわからなかったので、リードしているときはリズムよく走り続けようと思ったし、なるべく引き離そうと努力しました。しかし、レース終盤は簡単ではありませんでした。それでも、なんとかリードを保ち、ようやく初優勝を達成することができました。ここ数年は厳しいシーズンが続いていましたが、決してあきらめませんでした。スーパーバイク世界選手権で優勝できて、本当に最高の気分です」
マイケル・ファン・デル・マーク(スーパーバイク 7位/6位)
「今大会は、スーパーポールでミスをいくつか犯してしまい、予選タイヤで速く走ることができませんでした。第1レースではいいスタートを切ることができましたが、すぐにグリップが足りないことがわかりました。思ったようにマシンを走らせることができず、前のライダーについていくこともできませんでした。とにかく、できるだけ速いペースをキープしようとしましたが、レース終盤には何人かにパスされてしまいました。終盤には、ニッキーを抜いて7位でフィニッシュできましたが、2人とも苦戦していたことは確かでした。第2レースに向けて、朝のウォームアップで別のことを試しましたが、あまりうまくいきませんでした。レース前は、今日はどんなレースができるのだろうと憂鬱でしたが、雨が降ってくれたおかげで少し気持ちが楽になりました。実際、フルウエットのコンディションのときは、いい感触だったし、前の集団とのギャップを縮めることができました。しかし、路面が乾き始めてからは、また、グリップに苦しみました。そしてブレーキングにも苦労しました。セットアップがちゃんと決まっていれば、もっといい結果が出せたと思うので、本当に残念なレースでした。ニッキーが初優勝して、おめでとうと言いたいです。本当にうれしく思います。自分もオーストラリアやタイのときのように、トップグループで戦えるセットアップをみつけなければなりません。ドニントンではまたトップグループで戦いたいです」