 |
 IRLインディカー・シリーズに出場するようになったのは2004年で、この年から松浦はホーム・レースを持つようになった。毎年の春にツインリンクもてぎでで開催されるブリヂストン・インディ・ジャパン300マイルである。 「母国を離れて戦う自分にとって、ホーム・レースの持つ意味はすごく大きいんです」と松浦は話している。「常に力を与えてくれる日本のファンの前で走ることができるからです。ファンから送られる支援、声援に励まされることで、僕らは外国でのレースにおいても力を発揮することができています」。 日本で行われるレースを走ることは、ステップアップを続けている頃から応援を続けてくれている人々やスポンサーへの恩返しの場にもなる。レースの前はおのずと大忙しのスケジュールになるが、松浦はそれを一切苦にせず、元気に飛び回っていた。 セント･ピーターズバーグでの第2戦を終え、インディアナポリスでのメディアデイに参加した後に帰国。まずは地元名古屋に戻った。 名古屋では、毎年もてぎのレースに来てくれている高校時代からの友人たちとの時間を過ごした。開幕2戦があまりにも不運な結果だったので、その厄を落とすために神社にお参りにも出かけた。そうしたスケジュールの調整を上手に行ってトレーニングをこなし、もてぎでのレースに向けての意識を高めていった。 レースまで1週間を切ろうという頃から、日に日にスケジュールが忙しいものとなっていく。その先陣を切ったのは、ブリヂストンの工場訪問だった。ブリヂストン・インディ・ジャパン300マイルのタイトル・スポンサーであり、アメリカではインディカー・シリーズにタイヤを単独供給しているのがブリヂストン/ファイアストンだ。松浦は早朝に名古屋を出発し、那須塩原へ。2カ所の工場を回った。 那須から一度名古屋に戻り、翌日にレースに向けて荷物とともに再び東京へ。4月15日の日曜日には横浜でＦＭヨコハマのイベントに出席。翌月曜日は長年松浦を応援して来てくれている人々、チーム関係者などに挨拶回りをして過ごした。シーズンが始まると、日本に帰って来るチャンスはほとんどないため、こうした時間はとても貴重なのだ。 火曜日は朝からメディアの取材会があり、そのまま午後からはブリヂストン・インディ・ジャパン300マイルの記者会見に出席。さらにはスポンサー企業の訪問、Honda関係者との夕食会と大忙しの一日を送った。これで終わらないのが松浦流だ。彼のチームメートのヴィットール・メイラは日本びいきなので、松浦は日本風の焼肉を堪能させるべく、上野までメイラと一緒に出かけた。 サーキット入りする水曜日は、ランチタイムにHonda青山本社をサム・ホーニッシュJr.、エリオ・カストロネベスらと訪れ、昼食時に食堂で「がんばってきます！」と挨拶。ツインリンクもてぎへと到着すると、チームとのミーティングを行い、夕方からはパドックで行われたサーキット主催のウェルカム・パーティに出席した。  金曜日は午前中にプラクティスがもう１回行われ、午後になってから予選が開催された。今年は雨天による走行キャンセルが一切なく、どのチームも充分な走行量を得ての予選、そして決勝となった。予選で10番手となった松浦は、その後にパドックで行われたサイン会でファンとの交流を楽しんだ。 予選を終えた日の夜、決勝を明日に控え、レースに向けて雰囲気がさらに高ぶって来る中、サーキット・ホテルでウェルカム・パーティが開催された。日本を代表するドライバーとして松浦もこれに出席し、翌日のレースでの活躍を誓った。 快晴に恵まれた決勝日だったが、松浦のレースは意外な形であっけなく終了してしまった。スタート直後のターン1とターン2の間でマシンのリアがグリップを失い、180度スピンして外側のウォールにぶつかるアクシデント。その場でリタイアとなってしまったのだ。過去3回のインディ・ジャパンですべてトップ10フィニッシュを飾ってきた松浦にとって、マシンの仕上がりにも大きな自信のあった今回のレースはトップ5フィニッシュが狙えるものだったが、路面のコンディションにマシン・セッティングがマッチしていなかったためか、プラクティスまでは一度も出たことのないオーバーステアでスピンに陥ってしまったのだった。 「これで腐ることなく、次のレースに気持ちを切り替えてがんばっていきます。3レース連続でリタイアとなってしまいましたが、セッティングの進め方、その成果でチームはとてもいい雰囲気になっています。パンサー・レーシングに力があることも、ここまでの戦いで感じることができています。残る14戦で勝ちを狙っていきます」。母国でのレース、自分自身の期待も大きかっただけに、松浦は悔しさをかみ締めていた。2007年の戦いはまだ始まったばかり。チャレンジ4年目の松浦の走りにこれからも注目したい。 |
| < BACK | ||