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 日曜日のレース終了後、マルセイユから530kmほど車を飛ばしてスペイン・ジローナの自宅に戻り、月曜日にはバルセロナ空港から飛行機で出発。火曜日の夕方に帰国して、水曜日は東京でスポンサーにあいさつ回りをしてから、栃木県のツインリンクもてぎに移動するという、ハードスケジュール。昨年の8月から帰っていない地元の三重県に戻る余裕もなかったが、成田空港から東京に向かう車中で、藤波はほっと一息つくことができた。 「車を運転しながら見る景色がすべて日本を感じさせて、高速道路を走っていても道路脇の看板を見ても、“あぁ日本に来たんだなぁ”と実感しました。なにしろ日本に帰るのは去年の11月から半年ぶりでしたからね、本当に久々の帰国です。日本人ばかりで、誰もが日本語をしゃべっているし、最初は違和感がありましたよ（笑）。帰国してからよく眠れているし、時差ボケは全然ないです。グアテマラGPのときもそうでしたが、僕はけっこう時差に適応できるみたいです。夜中に起きてしまうとかいうことは、あまりないですね。日本とヨーロッパを何度も往復しているうちに鍛えられたのかもしれません（笑）」 水曜日の夜に会場入りした藤波だが、木曜日は規則によりウオーミングアップ場での練習はまだできない。そのため木曜日は、パドックの中で少しだけ乗る程度だったが、藤波は2007年型バイクの感触を再確認した。ほかの時間は、メディアの取材を受けるとともに、ウイダーのトレーナーによる身体のメンテナンスに励んだ。そして金曜日、午前9時30分からの車検の後、午前10時から午後1時までが、待ちに待ったプラクティス。ここでバイクのセッティングをするわけだが、この作業は思ったよりも順調に進んだ。 「これまでは、もてぎに来るとナーバスになっていた部分もあって。バイクに対してもシビアで、クラッチのセッティングがなかなか決まらずに、何度もパドックに戻ってきたりしていました。でも、今回はすごくバイクがよく動いてくれて、1回もパドックに戻ってくることなく乗り込むことができました。それでトニー・ボウやドギー・ランプキンよりも先に練習を終えて、パドックに帰ってきたわけです。プラクティスは午前10時から午後1時まででしたが、10時半から12時半くらいの間でセッティングができました。途中で雨が降ってきたけれど、最初からドロドロだったので、それほど路面状態は変わらなかったですね」 午後1時すぎ、藤波はほかのトップライダーたちとともに、ツインリンクもてぎ内の“ハローウッズ”で植樹を行った。これは、「世界環境デイ」（6月5日）および「環境月間」（6月）にちなむ行事で、茂木町の木である「けやき」の苗木が植えられた。昼食をはさんでセクションの下見、そして午後5時から藤波の大好物で恒例の「フジガスカツカレー」（※ツインリンクもてぎ内にて2日間限定販売）の試食と、大会前日も多忙な藤波だった。 「植樹をするのは初めてで、最初は何をするのかも分かりませんでしたが、こうしたことをライダーがするのは大切なことだと思うし、すごくいい体験をさせていただきました。 セクションは比較的やさしいというか、減点5になりやすい面もあると思うけれど、去年よりもアグレッシブにいけると思います。僕好みのセクションですね（笑）。ノンストップでスーッと走っていくほどクリーンできるし、途中で止まれば減点5になってしまう、という感じです。セクション・コーディネーターの成田匠さんの話では、今年はルールでマインダーが1人に制限されたので、セクションの難易度を少し下げたそうで、よく考えてあるセクションだなと思いました。最終セクションに向かってぐぁーっと難しくなっていく気がするので、本当に最初から減点を抑えて、最後の難しいところも集中してクリアーしたいと考えています。とにかく、全部のセクションが気を抜けないですね。 今年の「フジガスカツカレー」は10個のひとくちカツ（※10戦全勝を意味する）がこれまでにない食べやすさで、気に入りました。本当に美味しかったです」  「母国グランプリは、やはり自分が育った国で、母国の皆さんが僕を見に来てくれるような雰囲気がある。そこで僕が恩返しできるというか、本当にダイレクトに感動を与えられるような走りができるのは、このもてぎだけだと思います。だから本当にいい走りをしなければいけない、というプレッシャーはありますが。皆さんがバックアップしてくれるので、一番走りやすいレースでもあるし、皆さんに自分の感情を伝えられるレースでもあります。“自国びいき”については、それをする国がおかしいだけであって、日本が普通だと思います。誰にも平等で、誰に対しても厳しい。それがやっぱり普通だと思うし。それがやっぱり日本人の考え方だなと思いますね。それでこそ、気持ちよく走れますから」 さて、前回第3戦までの3戦（※2日制の大会もあり4レースが行われた）は、20歳の新鋭トニー・ボウ（モンテッサ）が負け知らずの4連勝。藤波は第3戦終了現在ランキング3位と、これ以上は負けられない。「今のボウは全てがうまく噛み合っているようだ」とその実力を認めながらも、「この日本GPでボウの歯車を狂わせてやりたい」と、自らボウの連勝を阻止する意気込みの藤波だった。 「去年は2日間とも表彰台を逃してしまった、その悔しさを忘れずに自分の力を十分に発揮したいし、それができると思う。去年も日本GPをキッカケにして成績を上げ3連勝することができたので、今回はもてぎからいいレースをしてヨーロッパ・シリーズに行きたいと思います。もてぎでは毎年パワーをもらえるし、毎年何かをつかめるんですよね。テクニックよりもメンタルな面で、自分がひとまわり大きく成長できる気がします。ボウの勢いを止めるチャンスにするためにも、本当にいいタイミングでこの日本GPが来たと思っているし、ボウを破るキッカケを作りやすいチャンスでもあると思うので頑張ります」 今年は5つのセクションが、とくに難易度が高く設定されていた。新たに作られた第4セクションの「5段上り」をはじめ、第9セクション「ハローウッズの庭」の滝上りや第11セクションの崖上り、第13セクション・5コーナーの草原にある大岩、スーパースピードウェイに設けられた最終・第15セクション（大岩と池の人工セクション）などが、とくに大きな勝負どころと目されていた。 |
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