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Hondaモータースポーツ監督が語る日本人ライダー&ドライバー
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佐藤琢磨選手の語る鈴木亜久里代表

―亜久里代表との最初の出会いは?
琢磨選手:あれは確か・・、SRS-Fを卒業する頃ですね。パドックで会って、頑張れって励まされて。もちろんTVやサーキットで観て亜久里さんのことは知ってましたけど、僕はレースの世界に入ったばかりだったし。それ以前は一ファンとして、日本人として亜久里さんが初めて表彰台に上がった1990年の日本GPには感動しました。ものすごく盛り上がったのを覚えてます。

―その後は、しばらく・・。
琢磨選手:ええ、いっしょに仕事をする機会もなかったし、イベントとかで顔を合わせて、ちょっと話す程度でした。日本のF3時代は、僕と同世代のドライバーたちは亜久里さんのチームに属している人が何人かいて、彼らとはライバル関係にあったし。直接じっくり話す機会はなかったですね。

―去年末から実際に一緒にやって行くようになって、間近で接する亜久里代表は、どんな人?
琢磨選手:いや、すごく面白い人ですよ(笑)。でも、仕事の面では、いっさい妥協を許さず、タフにこなしてる。F1チームのマネージメントというのは、もちろん初めての経験ですよね。ものすごい量の仕事が控えてるんだけど、見事にやり遂げてる。しかもドライバーである僕に対して、「心配するな」ってさんざん言ってくれてましたよね。

―走ることに集中すればいいと。
琢磨選手:そう。たとえばFIA(国際自動車連盟)からの参戦承認にしても、遅れたりしましたよね。そんな時でも、そういう手続き的なことは僕に心配かけまいとして、いっさい話さなかった。逆にチームの、もっと長期的な計画、こういうスパンで、こんなことをやって行きたいとか、チームをこんなふうに作り上げて行きたいとか、そういうのはどんどん話してくれて、一緒にずいぶん議論しましたよ。ただ、チーム立ち上げの頃って、お互いにものすごく忙しかった。亜久里さんは日本とイギリスを往復して、僕もモナコに住み始めて、そこから日本やイギリスに行ったり。その合間に何とかお互いの都合をつけて、話す時間を見つけていたという感じでしたよ。

―そうするとむしろ開幕してからの方が、レース現場で長く接している?
琢磨選手:そう、そう。開幕戦のバーレーンGPでは、「いよいよ、ここまで来たね」ってお互いに言ったりして。緒戦で完走して、次のマレーシアに移動する時に、タイに寄ったんですね。そこで同じホテルに滞在して、一緒に夕ご飯食べたりして。お互いに初めて、何ヶ月ぶりかでリラックスした状態で、話ができました。冗談連発で、お酒も入って、すごく楽しかったです。そんな中でも、バーレーンGPで僕が完走できたことをほんとに喜んでくれて、マレーシアGPも頑張ろうって言ってくれたり。あとは冬の間の、苦労話でしたね。チーム立ち上げの時の基本方針が、いろんな外的要因で何度も何度も軌道修正を強いられた。「あの時は、ホント大変だったね」って。その後レースを戦うようになってからは、亜久里さんはチーム代表として振る舞ってる。でも僕にとっての彼は、ずっとレーシングドライバーなんですよね。言葉に出さなくても、ちゃんとわかってくれる。ドライバーの視点で、物事を考えてくれる。これが他のチーム代表だと、やっぱりビジネス優先でやってきた人が多いですよね。そうすると僕たちドライバーが何を望んでるか、レースのことやドライバーのフィーリングとか、ちゃんと言葉で説明しないといけない。それが亜久里さんだと、日本人同士だからというのもあるけど、やっぱりレーシングドライバー同士として、僕が感じてることを亜久里さんも感じてくれてる。逆にドライバーとして、こういうことはしっかりサポートするけど、これについては放っておいてほしいとか、そういうのもきっちりわかってくれる。

―琢磨選手たちドライバーによけいな負担をかけさせないことを、何より優先してると、亜久里代表は言ってました。
琢磨選手:それは感じてますね。ホントに何も言ってくれないから、逆にこっちが心配になるくらい(笑)。僕の性格からすると、直接関係ないことでも何でも状況を言ってくれた方が、安心したりするんですけどね。でも亜久里さんは僕に心配をかけず、レースに集中してほしいということだっていう意図が、僕にもわかってますからね。そういう環境を、作ってくれてるし。

―亜久里代表も琢磨選手も、自分で道を切り開いてきたという点は共通してますね。
琢磨選手:ええ。でも彼が凄いのは、自分が苦労した経験から、後進の育成にすごく力を入れてることですよね。しかもそのやり方が、たとえば野球とかサッカー選手とかをやってた、カートとまったく無縁の少年たちを走らせたりしてる。基礎体力とか、メンタルな部分を勘案して。そういう才能発掘に賭ける情熱と独創性は、本当に素晴らしいと思います。僕も亜久里さんのそんな活動は、個人的な興味もあってずっと注目してました。でもまさかこうして、一緒のチームでレースができるとは思いませんでしたよ。F1はヨーロッパ社会の縮図のようなところですけど、そんな中で亜久里さんはチームの体制や雰囲気作り、あるいはチーム運営の全体の流れを作っていくという仕事において、素晴らしい手腕を発揮してると思います。それからドライバーと監督という立場に立った時は、何も言わなくてもドライバーのフィーリングを感じ取って行動してくれる、最高の指導者ですね。

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