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GO BEYOND ~勝利に向けた3チームの限りなき挑戦を追う~
#19 MORIWAKI MOTUL RACING

「9年ぶりの復活。受け継がれてきたモリワキの精神」

モリワキが9年ぶりに鈴鹿8耐に帰ってきた。
1978年の第1回大会から鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦。レーシングコンストラクターとして日本のレースシーンを支え、40年という8耐の歴史の中で、常に新しいことに挑戦し、数々の伝説を残してきた。

その中でも強烈な印象を与え、モリワキの名を広めたのが1000cc時代だった1981年。創業者の森脇護さんは、オーストラリア国内のレースを走る荒削りだが速さを持っていた若いライダーに目をつけ、スカウト。英国や米国のレースを走らせたあと、鈴鹿8耐のために日本へ連れてきた。

そのライダーがまだ無名時代のワイン・ガードナーだった。彼はモリワキで開発・制作されたアルミフレームに、チューンアップした4気筒エンジンを積んだモリワキモンスターを駆って、予選で2分14秒76という驚異的なコースレコードを叩き出した。当時ライバル関係だったHondaワークスより3秒近く速いタイム。決勝は転倒リタイアに終わったが、彼の走りは強烈な印象を残した。これが後に彼がHondaワークスと契約して世界GPを走り、チャンピオンの座に登りつめるきっかけとなった。

森脇護

8耐合同テストに駆けつけた森脇護氏も、思い出に残るレースは「ワイン・ガードナーが予選でコースレコードを出してポールポジションを取ったレースですよ」と、このセンセーショナルだった81年のエピソードを最初に語った。

その後もモリワキエンジニアリングは、オリジナリティーあふれるアイデアを盛り込んだマシンを制作し、国内外さまざまなレースに参戦してきた。9年ぶりになった理由はここにあると森脇護氏の三女であり、モリワキエンジニアリングの取締役として活躍している森脇緑さんは話した。

森脇緑

森脇緑: 「なぜ9年ぶりになるほど出場しなかったのですか、と多くの方に聞かれます。ただ休止していたのではなく、その間も車体を作ってMoto2クラスに供給していました。モリワキは8耐をずっとやってきたチームですから、8耐というものがどれだけ難しくて、そしてどれだけ過酷かを知っています。参加するだけでいいのではなく、出るからには勝つことを目指したい。Moto2と8耐の両立は難しい。生半可な気持ちと仕事ではできませんでした。それがあったゆえの9年ぶりなんです。レースを止めていたわけではありません」

新型「CBR1000RR SP2」をベースに、モリワキが手を入れられる部分は入れる。それが設立から45年、モリワキが大事にしていたことである。レギュレーションもあり大幅なモディファイは難しいけれど、その中でオリジナリティーを出していく。その意味もあって、今年のMORIWAKI MOTUL RACINGが使うマシン名を「ホンダCBR1000RR モリワキ改」に。そしてゼッケンも、90年代前半からモリワキチームの定番となっている“19“番が復活した。

MORIWAKI MOTUL RACING

ライダーは高橋裕紀、清成龍一、ダン・リンフットの3人。7月5日、6日に行われた最初のテストから日本人の両選手は走り込み、マシンを仕上げる作業を開始していた。

2ストローク250ccで世界GP250ccクラスを走り、MotoGP、Moto2を経験。エースライダーとして2014年からモリワキチームでJ-GP2クラスを走り、この8耐参戦を念頭にJSB1000クラスを走ってきた高橋裕紀。MotoGP、スーパーバイク世界選手権、ブリティッシュスーパーバイク選手権などで活躍した経験に加え、この8耐で4度の優勝と実績のある清成龍一。決勝も中心となって走る2人にこのチームで戦う意気込みを聞いた。

高橋裕紀

高橋:「モリワキが復活ということで、自分たちが思っている以上にファンの方から声をかけていただいて、期待されていることを強く感じています。その声援をパワーに変えて名門チームにふさわしいレースをしたいと思っています。新しいCBRはポテンシャルがすごく高いので、今のところそのすべてを活かしきれていないのですが、これから徐々にそれを仕上げていきたいですね。チームメートが強力ですし、優勝を目指してがんばります」

清成龍一

清成:「SRS-J(鈴鹿サーキットレーシングスクールジュニア)のころから森脇護監督にはお世話になっていたので、今年一緒にレースをやるのが信じられないし、うれしく思っています。新型のマシンは電子制御が今まで以上によくなっていて、それによって乗り味もいい方向になったと思います。8耐では勝つ喜びも、負けて悔しい思いもしました。一番挑戦しがいのあるレースです。今年は40周年ですが、30周年のときはいい思い出がまったくなかったので、今年はモリワキチームの人たちといい思いをしたいです。何勝目だとか気にせず、レースに出るからには勝ちにいく。それがレースライダーです」

ほかとは違うモリワキらしさ、オリジナリティーについてもう一つトピックがある。それは有力チームが使っていないピレリタイヤを採用したことだ。

MORIWAKI MOTUL RACING

高橋:「モリワキは今年からピレリタイヤを履いていますが、同じHondaでもほかのタイヤを履いているチームとは、スライドのさせかたとかが変わってくる。タイヤに合わせたサスペンションや電子制御のセッティングが重要になりますね」

清成:「タイヤは特別ほかとなにかが違う部分はないと思っているのですが、すごく感触がいいですよ」

7月11日から13日の公開合同テスト、2台走らせたMORIWAKI MOTUL RACINGの初日の結果は、Tカーに乗った高橋が2分9秒540、本番車に乗った清成が2分9秒645で13番手と15番手につけた。走り終えた高橋は焦っていなかった。

高橋裕紀

高橋:「8耐仕様のマシンに乗るのは先週(5日、6日の走行)が初めてだったのですが、目の前にある一つひとつの事を消化していけているので問題はありません。この暑いコンディションでピレリタイヤとのマッチングを検証しながら、あれこれ高望みしないで、徐々にクリアしていくつもりです」

決勝ウイーク前の最終合同テスト。この初日にモリワキエンジニアリングのFacebookに1枚の写真がアップされた。それは茶室の畳の上で、革ツナギ着た高橋と清成が正座し並んで座る。笑顔ではなく、目を見開き、先を凝視した真剣な表情。写真中央には“いざ戦へ"と毛筆文字が入る、とても印象的なものだった。

MORIWAKI MOTUL RACING

森脇緑:「モリワキは日本のチームであって、8耐は日本の鈴鹿でやるレース。和の心を大切にする、日本人として戦うというのを表現したかったのです。その昔、戦国時代の武将たちは戦という非日常と、日常との間に茶の湯を入れた。いったんそこに身をおいて、心を整えて、その間を行き来しました。実際にライダーはコースで命をかけて戦います。戦いに挑む前に茶を点て心を沈め、出るときは闘将になる。静から動に移る、その変わる瞬間、満ちてきた戦う気持ちが目と表情に表れている。そのイメージです」

戦場である鈴鹿サーキットで、2人の武将は2日目のテストから徐々にその戦闘力の高さを見せ始めた。1回目、2回目のセッションは湿度の高い晴れ、路面はドライ。午後の最終セッションは途中から豪雨に見舞われ、一旦赤旗中断後、小雨になってから再開。路面はフルウェット。走行時間が大幅に削られたが、高橋は前日のベストから1秒縮めた2分8秒731で総合9番手。清成もそれに近い2分8秒842を出し総合10番手と並んだ。高橋が語ったように、上位陣との差を徐々に詰めてきた。そしてこの日から3番目のライダーである英国人のリンフットも走った。ツインリンクもてぎは走ったことがあるけれど、鈴鹿サーキットは初めてだ。

ダン・リンフット

ダン:「英国は短いトラックが多いので、鈴鹿はロングトラックだと感じました。来る前にテレビゲームやYouTubeで見てきましたが、実際に走ると違いますね。8耐は子供のころから知っていて、走るのが夢でした。チームの雰囲気はいいし、仕事はプロフェッショナル。僕はリザーブライダーで、プライオリティーは2人の日本人選手だから、いざというときにいつでも走れるように準備しておくのが仕事。ここでいろいろ勉強し、自分の成長につなげたいです」

テスト最終日は、さらに前進した。11時45分からスタートしたこの日2回目のセッションで、高橋と清成が2分8秒557と1000分の1秒まで同タイムとなり、グループBの1-2となった。上位に入ったことに加え、奇跡的な出来事。このタイムがピット内モニターで表示されたとき、チームスタッフの顔がほころんだ。

MORIWAKI MOTUL RACING

後ろからそれを見ていたヨシムラジャパンの創業者POP(ポップ)こと吉村秀雄さんの長女であり、森脇護さんの夫人である南海子さんは「会社をあげて死力を尽くし、みんなでやっているのですが、チームに強い団結が生まれる。やっぱり8耐はいいな、と思いますね」とうれしそうだった。

最終的にはニュータイヤを履いた高橋が2分7秒346までタイムを縮め、なんとこの3日間の合同テストで総合首位に躍り出た。清成も同じくテストを締めくくる最後のセッションで2分8秒094とあと少しで7秒台というところまできた。

清成龍一

森脇護氏はテスト後、「だいぶよくなりましたね。これまではセッティングを大きく動かしてきました。そこから大体こういう仕様でいこうと決めてきているので、タイムはまだ詰まっていきますね」と上機嫌。続けてこの場所へ戻ってきた心境もうかがった。

森脇護

森脇護:「久しぶりだけどやっぱり8耐はすごいなと思いましたね。こんなに難しいレースはなかなかないですよ。だから楽しみでもあるのですけれど。昔の8耐で、部品トラブルにより一般的には修理不能と思われる状況になったことがありました。それをスタッフがドリルとワッシャーを持ってきて部品をその場でこしらえて最後まで走りきれたことがありましたね。そんな諦めないレースを続けられたことで、その後の自信になった。今のモリワキ社員やメカニックの人たちもめげない。できるものなら、その辺で図面を描いて、部品を削り出してレースを続けられると思います。モリワキの精神は受け継がれていますよ」

海や空を表現した青と、大地をイメージした黄色。青黄のいわゆるモリワキカラーのマシンが、40周年の記念大会となるレースで、9年ぶりの8耐に挑む。着々と決勝への歩みを進め、本番への期待が高まる。

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