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がまだせ熊本!Honda熊本従業員チームの挑戦

2 仲間との“絆”を胸に…、がまだせ熊本!

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日本郵便 Honda 熊本レーシング

日本郵便 Honda 熊本レーシング

7月7日、本田技研工業株式会社 熊本製作所の社員を中心に編成されたレーシングチーム「Honda 熊本レーシング」に日本郵便株式会社が協賛することが決定。熊本から参戦するチームに強力なバックアップがつきました。参戦を初めて4年目となるチームの成績は2013年が9位、14年は11位、そして昨年は23位。井村直典監督は今年の8耐を目の前にして、なにを思うのか伺ってみました。

井村直典監督「熊本はがんばっているんだと発信したい」井村直典監督

井村: 「今年4月の熊本地震によってあちこちで被害が出ました。そんな中で、皆さんのご理解をいただいてレース活動をさせてもらっています。鈴鹿に来たときに熊本は被災しているものの、みんながんばっているんだぞということを発信したいと思い『がまだせ熊本』というポスターをあちこちに貼りました。『がまだせ』は“ガンバるぞ”とか“ガンバレ!”という熊本の方言です。Hondaは海外も含めて多くの拠点があり、いろいろな国の従業員もいます。熊本は被災したが、同じ仲間に向けて、従業員はがんばっているぞということを発信したかったんです」

◆今だに震災の傷は癒えていません。その地から多くの人の力があったからこそレースに出られる。今年の鈴鹿8耐にかける想いには特別なものがあるに違いありません。

井村: 「レースなので成績を残さなければいけないと思いますが、例年と違うのは4月に地震があったことです。本来なら参戦するのは難しいのですが、会社の理解、熊本地区のほかの従業員の理解をもらって出させていただける。だから中途半端なレースはできません。できるだけ上位に食い込み、その結果から従業員のみならず、熊本の仲間、県の方々にとって少しでも明るい話題になればと思っています」

◆家が被災して苦労している仲間もいます。今も地元でがんばっている人もいます。その現実を知るからこそ8耐への取り組みも真剣になります。

井村: 「走行時間が多いほど決勝に向けて階段を上がっていける、悩みも多くなりますが一歩ずつ前進しています。本来、出られなくて当然の中で出させてもらっている以上は、結果を残したいという思いはみんな強いです。我々従業員チームは『中途半端にあきらめず最後まで意思を貫き通し、必ず完走する。マシントラブルや転倒してもピットに入ったマシンは修復して送り出し、チェッカーを受ける』という強い意志を持つことが、我々の強みでもあります」

◆このようにチームの現状を語ってくれました。そこまでして参加する8耐の難しさと魅力について聞いてみると、

井村: 「8時間の決勝レースだけじゃなく、ウイーク全体でみれば相当な走行時間になる。いろいろなリスクもついてまわりますが、チームとしてできるだけ排除するようにはします。しかし、優勝候補ですら転倒やリタイアすることがあるレースです。ノントラブル・完走も言うは易し、ただ行うのは難しいものです。でもそれを乗り越え完走し、結果を残したときの達成感はものすごく大きな感動があってチーム全体で共有できます。それは経験した人にしかわかりません」

◆そして監督は最後にこう締めくくりました。

井村: 「僕らが簡単にリタイアしてしまうと、今日、この瞬間にも復興をがんばっている人たちに失礼です。だから完走はマスト。その上でできるだけ上位でゴールしたいと考えています」


◆日本郵便 Honda 熊本レーシングのライダー、吉田光弘選手と小島一浩選手にもインタビューしました。

◆参戦にあたって

吉田光弘「マシンは徐々に決まってきた。シングルフィニッシュを目指します」吉田光弘

吉田光弘: 「4月に震災があって、チームのメンバーも被災してしまい辛い思いもしました。結構ひどい被害が出ていたので、『今年はレースできるのかな?』という思いはありました。そんな中、会社の理解もあって8耐に出られる事になりました。がんばってと言われたときはうれしかった。出るからには全員で力をあわせて上位進出を目指してがんばろうと言う思いは強いです」

小島一浩: 「会社も個人も被災した中で、レースができるというのは感謝の言葉しかありません。そういう中で出られるということに甘えず、一人ひとりが自分でできることをがんばってやり、成績につなげられるようにしたいです。それが熊本県民としてのテーマ。被災された人もいる中で、『熊本チームはがんばっているんだぞ』ということを全国の人にも伝えたいです」

◆チームの強み

小島一浩「シングルフィニッシュは最低ライン。目標は9位以上です」小島一浩

小島: 「本田技研熊本製作所という会社の中で普段から顔を合わせていて、ライダー同士やメカニックとの距離感が近いことですね。小さなミーティングのようなものも頻繁にできる。絆の強さが強みですね」

吉田: 「同じHondaの工場で働いている人が多いことと、普段からバイクを作っている人たちばかりというのが強みです」

◆テストの感触

吉田: 「今年は手島(雄介)選手がチームに入ってアドバイスしてくれているんですが、新鮮味があり勉強になります。手島選手は自分のチームを持っていろいろなレースに参加しているので、チームオーナー目線で話をしてくれる、言葉を伝えるのがうまいんです」

小島: 「手島選手はライダー以外の役割、例えばセッションやセッティングの進め方、走行順を決めるなどのマネージメント能力を持っている。そのため震災の影響で少なくなったテスト時間内で効率よく進められます。マシンのセッティングを感じ取る能力も高いんです」

◆決勝に向かって気をつけること

吉田: 「ライダーとして気をつけなければならないのは熱中症。暑いと判断力も低下しますが、集中してミスなく速く走り続けたいです。難しいですが(笑)」

小島: 「マシンに乗っていない時は体調管理が重要。熱中症、食事も含めて注意したいですね。マシンに乗っている間は、練習でも転んじゃいけない。集中してリスクの少ないマシンを作っていきたいです」

◆決勝に向けての意気込みや鈴鹿8耐への想い

吉田: 「自分たちががんばっていい成績を残したときに一人でも喜んでくれればうれしいですね。そういう人がいたら自分もうれしくなりますから。今年はシングルフィニッシュして鹿と鈴のトロフィーをもらいたいです」

小島: 「がんばるのはあたりまえ。熊本に伝えたいのは8時間なにがあってもあきらめないこと。順位が落ちてもそこから一つでも上げるように努力する姿をみせたいです。シングルフィニッシュは最低ライン。9位以上を目指して走ります」