HONDA The Power of Dreams

　FIM2006世界耐久選手権シリーズ第5戦“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)の前哨戦として行われる鈴鹿300kmレースは、鈴鹿8耐と同様のル・マン式スタートで行われる。ライダー登録は1名か2名だが、多くのチームは2名登録で鈴鹿8耐のシミュレーションをしながら貴重なデータを収集するのが常だ。

　緊迫したピットワークもファンにとっては楽しみな大会となっている。鈴鹿8耐を目標としているチームは、鈴鹿300kmレースと鈴鹿8耐だけのエントリーも多いため、参加台数も増え、白熱した走行が繰り広げられた。Hondaは、これまでスーパーバイクでの参戦だったが、今季はJSBでの挑戦となった。イギリススーパーバイク選手権から清成龍一選手、世界選手権ロードレース250ccクラスから高橋裕紀選手がセブンスターホンダで挑んだ。

　清成選手は木曜日にはサーキット入りし、WGPから駆けつけた高橋選手は金曜日に合流、特別スポーツ走行をこなした。昨年の鈴鹿300kmレースで、清成選手は宇川徹選手と組み2位。鈴鹿8耐では優勝を飾っている。高橋選手は鈴鹿300kmレース初参戦、昨年の鈴鹿8耐はWGPのスケジュールと重なっていたために参戦していない。

　エントリーした68台が、A、B組に分けられて予選が行われた。金曜日の走行は午前が雨、午後からは晴れだったが、土曜日は午前、午後とドライで行われた。それぞれのチームで第1ライダー、第2ライダーの走行時間、タイミングが異なる予選となった。最終予選では激しいアタック合戦となり、最後にフレッシュタイヤを履いた小西良輝選手が2分8秒966を記録してPPを獲得。小西選手/安田毅史選手組(TOY STORY RT RUN'A&HARC-PRO.)が1番グリッドからスタートする。2番手にはXX-F Dvi.1の森脇尚護選手(モリワキMOTULレーシング)。森脇選手は1人で鈴鹿300kmレースに挑む。3番手に清成選手/高橋選手組、4番手に辻村猛選手/伊藤真一選手組(F.C.C.TSR ZIP-FM Racing Team)、5番手に中須賀克行選手/吉川和多留選手組(ヤマハ)、6番手に山口辰也選手/徳留和樹選手組(Honda DREAM RT)、7番手に渡辺篤選手/青木宣篤選手組(スズキ)、8番手に浜口俊之選手(ウイダーホンダ学園DDBOYS)、9番手に亀谷長純選手(Team 桜井ホンダ)、10番手に手島雄介選手/鎌田学選手組(F.C.C.TSR ZIP-FM Racing Team)となった。

　決勝前日から降り始めた雨は、朝まで降り続き、ウオームアップランは完全ウエットで行われた。トップは藤原儀彦選手/大崎誠之選手組(ヤマハ)、Honda勢は3番手に小西選手/安田選手組、5番手に辻村選手/伊藤選手組、6番手に森脇選手、8番手に山口選手/徳留選手組、9番手に清成選手/高橋選手組、10番手に亀谷選手となった。

　スタート時に雨はあがったが、路面コンディションは回復せず、レインタイヤを選択するチームが多かった。シグナルグリーンと同時に絶妙のスタートでホールショットを奪ったのは小西選手。2番手は森脇選手で、ドッグファイトを展開しながら序盤から後続を引き離した。清成選手は3番手につけ、慎重な走行を重ねた。路面コンディションは、大方の予想よりも早い回復を見せ、10ラップ過ぎにはライン上は乾いた。森脇選手はタイヤ交換のために早々にピットイン。ライダー、チームの判断が勝敗を分ける難しい展開となっていった。

　10ラップ目のオーダーは、トップの小西選手に渡辺選手、清成選手、辻村選手、中須賀選手、亀谷選手。小西選手は通常のルーティンを守るためにライフの終わったタイヤを酷使しながら、懸命の走行。小西選手を追う渡辺選手とのトップ争いが激しさを増した。そのなかで、渡辺選手がピットイン。ライダー交代なしでタイヤ交換、給油のみでコースに復帰した。清成選手も19ラップ目にピットインし、ライダー交代なしでコースへ。23ラップ目には辻村選手から伊藤選手へ、小西選手は24ラップ目に安田選手へと交代した。

　各チームが続々とピットインを終えるなかで、トップは渡辺選手に代わる。清成選手は2位に順位を上げ、35ラップ目に高橋選手にバトンタッチ。トップの渡辺選手が41ラップ目に青木選手に交代した。その間、伊藤選手は好タイムを重ね、ポジションアップ。ジワジワとトップに迫り、ついに45ラップ目に首位に浮上。その後、2位以下に約15秒ものアドバンテージを築いた。高橋選手は青木選手、安田選手との2位争いのバトルを果敢に展開しながらも2位をキープ。伊藤選手に迫ろうと周回を重ねた。そして51ラップ目のデグナーで伊藤選手がマシンを止めたのを見ると、その脇をすり抜け、ついに高橋選手がトップに立ち、そのまま歓喜のチェッカーを受けた。

　セブンスターホンダは鈴鹿8耐に向け、鈴鹿300kmレース優勝という大きな手ごたえを得た。2位には青木選手を抑えた安田選手、3位に青木選手が入った。6位には手島選手/鎌田選手組、8位に亀谷選手、9位に森脇選手、12位には浜口選手、最後のライダー交代の時に転倒し順位を落としてしまったが、山口選手/徳留選手組が15位となった。優勝した清成選手/高橋選手組は、今大会から設けられた国別代表賞「エンデュランス･オブ・ネーションズ(仮称)」を受賞し、日本代表として鈴鹿8耐に挑む権利を得た。

優勝 セブンスターホンダ
■清成龍一選手
「ウエットの鈴鹿というのは嫌いではないのですが、今回は厳しいコンディションでした。最初のうちはペースが上がらず、ペースが上がってきた頃には路面が乾いていました。上位陣がなかなかピットに入らないので、僕もいつピットに入ったらいいのか悩みました。後半、裕紀君が頑張ってくれたのが今回の勝因です」

■高橋裕紀選手
「清成さんに頑張ってもらったので、僕の周回数が少なくてすみました。ピットアウトしてすぐに伊藤さんに抜かれました。伊藤さんの後ろを走っていて、すごく走りやすくてペースがつかめました。2年前の鈴鹿8耐も清成さんと組みたかったけど、幻に終わってしまったので、今回は2人で組んで勝てて嬉しいです」

■鈴木克典チーム監督
「最初のピットインのタイミングには悩みました。清成君にはこういう事態になったら、そのまま走ってもらうと事前に伝えてありました。変わりやすい状況の中、よく頑張ってくれたと思います。後半の高橋君もいい走りをしてくれました。でも、今回は課題の多いレースで、ピットワークを含めて、鈴鹿8耐までに見直さなくてはいけないことはたくさんあります。今回は鈴鹿8耐のシミュレーションだったので、課題が出たのは良かったです。運も味方してくれました」

2位 TOY STORY RT RUN'A&HARC-PRO.
■小西良輝選手
「スタート前から路面が乾いていくのはわかっていたので、タイヤ選択に悩みました。でも、確実にいくことを選択し、男・小西を見せるためには、ルーティンまで我慢して安田に任せたかった。タイヤをギリギリまで酷使して頑張りました。ピットインのタイミングがキーポイントのレースでした。反省もいろいろありますが、チームとしては得るものが多かったと思うので、2位でも満足しています」

■安田毅史選手
「全力で走り切るだけ、それしか考えていませんでした。抜かれても落ち着いていけとスタッフにも言われていたので、落ち着いて走ることが出来たと思います。最後は青木さんとのバトルになりましたが、相手は元GPライダーですから、抜かれても仕方がないと思い、思いっ切り勝負を仕掛けました。その結果の2位なので嬉しい」

6位 F.C.C.TSR ZIP-FM Racing Team
■手島雄介選手
「今年からJSBに乗り始めたので、わからないことばかりですが、ペアライダーの鎌田さんや、チームメイトで先輩の辻村さん、伊藤さんという、素晴らしいライダーに囲まれ、学ぶことばかりです。いい環境で走らせてもらっていることに感謝しています。今回の順位に満足しているわけではありませんが、頑張った結果だと納得しています。鈴鹿8耐までには、もっともっと上位を狙えるように頑張りたい」

■鎌田学選手
「僕の仕事は雄介のいいところをなるべく引き出せるように、マシンのセットアップやメンタルな部分でのアドバイスをすることだと思っているので、それに集中して鈴鹿8耐まで頑張りたいと思っています。今回は、本当に雄介がいい走りをしてくれました」