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記録破りの強さを誇った07年戴冠車

2007/ARTA NSX GT500([4輪/レーサー])

鈴鹿で1分49秒台! 驚速ぶりを発揮し3勝7年ぶりのGTタイトルをホンダにもたらす

Text/Toshiyuki Endo  Photos/Katsuyoshi Kobayashi, Masaru Hirata

2007/ARTA NSX GT500([4輪/レーサー])

2007年SUPER GT出場車 No.8 ラルフ・ファーマン/伊藤大輔

意外にもコクピットはスイッチ類の配置なども含め、06モデルから変更していない。ARTA NSXとしての一番の特徴は、185cmのファーマンと176cmの伊藤大輔、その身長差を補うためにステアリングにチルト機構を設けていることだ。

意外にもコクピットはスイッチ類の配置なども含め、06モデルから変更していない。ARTA NSXとしての一番の特徴は、185cmのファーマンと176cmの伊藤大輔、その身長差を補うためにステアリングにチルト機構を設けていることだ。

05〜06年の2シーズンを経て進化熟成を遂げた新世代NSX-GT(05年途中から3.5リットルV6自然吸気エンジン搭載)は、必勝を期して07年シーズンに臨んだ。そのポテンシャルの高さは、開幕戦鈴鹿の予選から遺憾なく発揮される。なんとNSXが上位(1〜4位)を独占したのである。ウエイトハンデがない開幕戦だけに、これはマシンの性能がダイレクトに反映された結果であった。なかでも07年仕様NSXの速さを最大限に引き出したのが、鈴木亜久里の率いるARTAだ。予選スーパーラップで伊藤大輔がマークしたタイムは、驚愕の1分49秒842。GT500が鈴鹿で初めて1分50秒の壁を破ったのである。当時、伊藤は「Hondaとチームがやってきたことが、こういう速さになって現れたんだと思います。みんなに感謝しています」と喜びを語った。

ちなみにこの開幕戦、決勝はARTA NSXとTAKATA童夢NSXの1-2フィニッシュが確実な状況から、終盤、両車が相次いでマシントラブルに散っているのだが、白井裕NSX-GTプロジェクトリーダーのレース直後の談話が傑作だった。「ちょっとエンジン、やり過ぎちゃいましたね」。トラブルは残念だが、07年仕様のNSXというのは開発者が“やり過ぎた”とも実感するくらい、強烈な勝利への意志を注ぎ込んで開発・錬磨されたマシンであったのだ。そして実際、とても速かった──。

この年、リストリクター径のワンサイズアップが認められたとはいえ、ライバル勢よりも1リッター近く少ない排気量は低速トルクで大きな差となって表れる。しかしこれも、NSXは車体側のアドバンデージで補った。

この年、リストリクター径のワンサイズアップが認められたとはいえ、ライバル勢よりも1リッター近く少ない排気量は低速トルクで大きな差となって表れる。しかしこれも、NSXは車体側のアドバンデージで補った。

第2戦岡山で雪辱のシーズン初勝利を挙げた伊藤&ラルフ・ファーマンは、第5戦SUGOでも優勝、着実に王座への道をひた走った。この頃のウエイトハンデのルールは2011年現在のポイント連動制とは違い、レース毎の結果によって増減する複雑なものだったが、好成績の連鎖で累積が上限値の100kgを超えた場合、50kg分を吸気リストリクター縮小に振り替えることができた。当時のARTA NSX GT500の徃西友宏チーフエンジニアは「後半戦のサーキットの特性を考えた場合、50kg振り替えはかなり有効。だから、早い段階でウエイトハンデを100kgに乗せてしまえば勝ち(チャンピオン)だな、と思っていました」と、タイトル獲得後に語っていたが、そういうシーズン戦略も他を圧するスピードがあってこそ機能するものであった。第6戦鈴鹿で2位、そして第8戦オートポリスで3勝目を挙げたARTA NSX GT500は、最終戦を待たずにドライバーズタイトル獲得を決める(第9戦富士でチームタイトルも確定)。

開幕戦鈴鹿で見せた伝説的ポールポジションタイム、そして混戦を生み出すために規則の網が張り巡らされているなかで演じた、稀有なる独走によるタイトル奪取劇。07年シーズンを席巻したARTA NSX GT500は、日本の近代モータースポーツ史に燦然とその名を輝かせる“最強最速のハコ車”なのである。

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ARTA NSX GT500

2007/ARTA NSX GT500[4輪/レーサー]

2007/ARTA NSX GT500[4輪/レーサー]

SPEC

シャシー

全長×全幅 4610mm×2000mm
車両重量 1100kg以上
ホイールベース 2530mm
トランスミッション ヒューランド製6速シーケンシャル
クラッチ AP製C/C 5.5"
4プレート・プルタイプ
サスペンション ダブルウイッシュボーン
タイヤ(前/後) BS製330/40R18/330/45R17

エンジン

型式 C32B
形式 V6DOHC24バルブNA
排気量 3494cc
最高出力 500ps以上

その他

NEXT Team KUNIMITSU NSX GT2