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完全Hondaワークス体制の初号機

2005/B・A・R Honda 007(B・A・R ホンダ 007[4輪/レーサー])

第3期F1活動の転換期に生み出されたマシン中盤戦から復調し、2回の表彰台を獲得

Text/Racing on  Photos/xpb, Hiroaki Matsumoto, i-dea

2005/B・A・R Honda 007(B・A・R ホンダ 007[4輪/レーサー])

2005年F1世界選手権出場車 No.3 ジェンソン・バトン

前作006に比べ、エアボックスやエキゾーストのデザインに改良を施したことで出口はかなり車体中央に寄せられた。エンジンルームからの排熱はチムニーダクトを持たない代わりに、エキゾーストカバー車体中心側を広く開けて行なっている。

前作006に比べ、エアボックスやエキゾーストのデザインに改良を施したことで出口はかなり車体中央に寄せられた。エンジンルームからの排熱はチムニーダクトを持たない代わりに、エキゾーストカバー車体中心側を広く開けて行なっている。

B・A・R Hondaはテスト開始当初、前年の006からダウンフォースを削減し、05年レベルのダウンフォース量とした“ハイブリッド車”での走行を繰り返していた。これが007の開発ベンチマークとなったわけだ。しかし、これがライバルたちが設定した基準値に対して低すぎたと、当時のホンダF1プロジェクトリーダーを務めていた木内健雄が語っている。「『20%ほど低下するダウンフォースを全部取り戻すのは難しいだろう』という設定にしてしまったことが、結局最後まで響いた」と。しかもB・A・R Hondaは、性能の比較対象をフェラーリに置いてしまっていた。この年のフェラーリのマシンは、まさに失敗作。ルノーやマクラーレンは、その遥か上を行っていたのだ。

同時にエンジンを中心とした信頼性不足にも悩まされ、前年にあれほど相性が良かったミシュランタイヤとのマッチングもいまひとつ。前年、毎戦表彰台を賑わせたチームが、まったく歯車の噛み合わない状況に陥ってしまったのだ。バトン11位、琢磨14位……前年ランキング2位のチームとは思えないほど、冴えない開幕戦の成績であった。続く第2戦マレーシアGPでは琢磨が発熱でレースに出られず、リザーバーのアンソニー・デイビッドソンが急きょ出場するというドタバタもあった。

とはいえ、開幕後の進歩は著しいように思えた。第3戦サンマリノGPではバトン3位、琢磨5位と、上位へと返り咲きを見せる。しかし、ここで次の落とし穴が待ち構えていた。安堵も束の間、レース後の再車検で2台は失格となってしまう。FIAとの間で燃料タンクの構造に関する解釈の違いが発覚して、チームは続くスペインとモナコの2戦で出場停止という厳しすぎる処分を受けることになるのである。ようやくパフォーマンスが上向いた矢先、痛すぎる欠場であった。

より低重心・軽量化の進んだ3リッターV10のHonda RA005E。排気管はリヤエンドの空力を考慮したレイアウトを採用している。

より低重心・軽量化の進んだ3リッターV10のHonda RA005E。排気管はリヤエンドの空力を考慮したレイアウトを採用している。

出場停止から復帰2戦目のカナダGPではバトンが22戦ぶりのポールポジションを獲得し、琢磨も6番手グリッドを獲得するなどさらに速さを増したが、結果は両者リタイア。次こそはと臨んだ第9戦アメリカGPはF1史に残るミシュランユーザーの決勝レースボイコット事件で事実上の不参加。歯車が噛み合わないまま、シーズンは進んでいく。

結局、チームがこのシーズン初めてのポイントを獲得するのは、なんと第10戦フランスGPとなってしまう。バトン4位。バトンはこの後安定した成績を残し続け、以後全戦入賞。2回の表彰台とフロントロウも獲得した。

しかし琢磨の狂った歯車は、シーズン中ずっと狂ったままだった。第13戦ハンガリーGPでようやく8位入賞を果たしたものの、結局このシーズンのポイントはこの1点のみ(当時の入賞は8位までだった)。予選順位はまずまずなのに、レースとなるとマシントラブル、給油トラブル、予選タイム抹消……と様々な不運が琢磨を襲った。その焦りからか、ベルギーGPではミハエル・シューマッハーに追突し、鈴鹿のシケインではヤルノ・トゥルーリと接触して失格となってしまうなど、自らミスも招いた。「悪い状況から脱出しようとして、もがいて、力の入れ具合がよく分からなくなって」と、琢磨はシーズン終了後に語っている。

2005年、B・A・R Hondaのコンストラクターズランキングは前年の2位から6位まで下がってしまった。とはいえ、栃木の本田技術研究所で開発されたシームレスシフトギヤボックスなど技術的に光る部分があったこともまた確かである。出場停止など、様々な逆風に見舞われながらも、シーズン終盤までにはトップクラスのマシンへと返り咲いた開発力も、目を見張るものがあった。しかし開幕時点での開発の遅れ、そして開発目標値の設定ミスが最後まで尾を引いてしまい、マクラーレンやルノーといったトップコンテンダーに追いつくことはなかった。そんな苦悩の年を戦うという運命を背負ってしまったのが、B・A・R Honda 007であった。

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B・A・R Honda 007

2005/B・A・R ホンダ 007[4輪/レーサー]

2005/B・A・R ホンダ 007[4輪/レーサー]

SPEC

シャシー

型番 B・A・R Honda 007
トレッド(前/後) 1460mm/1420mm
ホイールベース 3140mm
全長/全幅/全高 4675mm/1800mm/950mm
車体重量 未発表
サスペンション(前) ウイッシュボーン&プッシュロッドアクティブトーションバースプリング&ロッカー/メカニカルアンチロールバー
サスペンション(後) ウイッシュボーン&プッシュロッドアクティブトーションバースプリング&ロッカー/メカニカルアンチロールバー
ダンパー ショーワ
ステアリング B・A・Rパワーアシスト
トランスミッション 7速ユニット(外装:B・A・R製/内装:Honda & XTRAC製)
ホイール BBS(前:312mm/後:340mm)
ブレーキ アルコン(キャリパー)/カーボンインダストリー(ディスク&パッド)
タイヤ ミシュラン

エンジン

型式 RA005E
排気量 3000cc
形式 自然吸気90度V型10気筒
最大出力 900馬力以上/18500rpm
燃料/潤滑油 未発表

F1 第三期

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