モータースポーツ > もてぎ1.5チャレンジカップ > 第3回 夫婦二組それぞれのJOY耐

カントク兼セカンドドライバー
ゴッツ(後藤比東至)

レース参戦に人生をかける自動車雑誌&ウェブサイトの編集者。13年はもてぎ1.5CCのほか、スーパー耐久(ST5)、86/BRZレース、ニュル24時間に参戦予定。ブログ「MINIと86ときどきニュル」をときどき(!)更新中。

夫婦二組それぞれのJOY耐。もてぎ1.5チャレンジカップ第3戦はJOY耐に組み込まれて開催された。真夏の耐久を走る読者ドライバーは北海道十勝でVITAに乗る今野と、筑波をロードスターで走る村上。
ふたりともなんともうらやましい奥様の応援つき。勝利の女神は微笑んだか?

JOY耐でオートスポーツBSフィットに乗る読者ドライバーのふたりは、これまで2戦のトップアマチュアドライバーとは趣向を変えて、家庭を持ちながら趣味としてレースを楽しむふたりを選抜。北海道から今野夫妻が、神奈川県から村上夫妻が金曜日にもてぎ入りした。

正直に言うと、カントクのボク、編集長(あ)、そしてチーフメカニック持永さんも、ふたりの実力に関しては未知数だったから「7時間走りきれるのか?」という不安がなかったと言えばウソになる。

金曜日の練習走行終了時点での(あ)の気持ちは

「とにかく無事に完走すること」

持永さんは「フィットを壊さずに帰りたい」だっただろうとボクは感じた。

でも、今回はカントクの前に1ドライバーであるボクは

「いやいや、やるからには結果がほしい!」

と強く思っていた。

実際のふたりの走りの実力と真夏の耐久レースレポートは、ふたりに語ってもらうのが間違いない。というわけで、今回はふたりの読者ドライバーによるそれぞれのJOY耐レポートをお届けしよう。

村上大介(左)
数年前まで、筑波で1000ccカップに手づくりヴィッツで参戦。現在はロードスターで年に数回サーキット走行している。33歳。奥様は裕子さん。

今野訓昌(右)
北海道クラブマンカップレースに奥様晶絵さんと参戦。VITA-01のシリーズチャンピオン。札幌市在住37歳。

もてぎ1.5チャレンジカップ
昨2012年からはじまったもてぎ1.5チャレンジカップは、1.5L以下のN1車両によるレース。フィット、ヴィッツ、スイフトなど、メーカーの垣根を越えたバトルが繰り広げられている。2013年は全5戦。内JOY耐を含む3戦が耐久レースとなる。

【7月5日(金)公式練習】

今野:
10年以上ぶりのツインリンクもてぎ。いつも走っている十勝と比べて、もてぎはとにかくコースが立派。こんなサーキットで走れて楽しいなぁとお気楽モードだった。

フィットは普段乗っているVITAとは全く違い、荷重移動や初期旋回にとまどう。

ボトムスピードは落としたくないが、旋回開始時に頭をしっかり入れないとアンダーが出る。

1コーナーと最終で何度か飛び出す。

この日のベストは2分32秒台。目標は6.3km/l、33秒台と伝えられる。

ゴッツさんの車載をもらったのでホテルに帰って見るもあまりの眠さにダウン。

村上:
車がアンダーステアなのか、自分がオーバースピードなのかが分からない。車載映像を(あ)さんに見てもらい、明らかにオーバースピードだと言われた。

頭では分かっていたのに、基本中の基本ができていないことを指摘されて落ち込む。

午後の練習走行は(あ)さんとゴッツさんにS字で見てもらい、最初の左で充分に向きが変わっておらず、後半の右が苦しくなっていると指摘される。

次の走行で修正、よくなったと褒められてちょっとうれしい。燃費はほぼ問題なし。どう走れば6.3を守れるかは分かってきた。あとはタイムをどこまで縮められるか。 時間はないが、修正したい。

【7月6日(土)予選】

今野:
ベストは31秒台。しかし、燃費を気にするとタイムがガクッと下がる。自分の失敗がみんなに迷惑をかける。これはマズいと焦り出す。

どこでアクセルを抜くのか? シフトは? ゴッツさんに聞くが……もうぶっつけ本番である。

そしてもうひとつ気になること。

それは「暑さ」だった。

わずか20分間の走行で、今までに経験がないほどの汗が吹き出す。明日は1スティント50分。笑いごとではなくなってきた。

北海道は涼しいし、いつもは屋根のないVITAでのスプリント。持永さんから、手足がしびれたり頭痛がしたら無理せずピットに入るようにと言われ、さらに不安に。

村上:
練習走行で別のフィットと接近。彼らはダウンヒルストレートでアクセルを抜いていないようだが、1周のタイムはほとんど変わらない感じ。

少し自信が出てきた。

5コーナーも進入のイメージが分かってきたような気がする。進入スピードをかなり落としてもタイムはあまり変わらないか、むしろ少し良いくらい。

燃費6.3、タイムは2分33秒5でそろえることはできるようになった。

燃費には自信がある。明日はゴッツさんの最終スティントになるべくガソリンを多く残すことを目標にする。


晶絵さんはいつも首からストップウォッチを下げている。十勝ではタイヤのエア圧チェックをはじめ、今野さんの敏腕メカニック!として活躍。ホントにうらやましい限り!

【7月7日(日)決勝】

今野:
華やかなグリッドウォークで、本当に参加できて良かったなと、一瞬だが走行への不安が消えて楽しむが、ゴッツさんがスタートの準備を始めると一気に緊張が戻る。

そしてあっと言う間にスタート。

給油を終えたゴッツさんがピットイン。

いよいよだ。

燃費計は6.3。このまま維持と思っ た瞬間6.2に。ペースは34秒台。燃費は後で挽回することにしてペース維持で走り続ける。

それにしても暑い。だんだん汗が冷えず、熱がこもる感覚に。

ペースは35〜36秒台にして燃費は6.2。

マズいと思いつつもこれ以上ペースを落とすわけにもいかず、葛藤。

スティント後半、頭がキンキンしてきた。これが熱中症か?

1.5リッターも飲まないと思っていた水もあっという間になくなる。とにかく無事に引き継ぐことだけを考えて走行した。

マシンを降りた直後、猛烈に汗が出て体が熱くなり、さらに頭痛がひどくなる。水をかけてもらい体を休める。妻が給水ボトルやウエア類を用意してくれる。

あっという間に2度目の走行だ。

「今野さん燃費6.3ね!」の村上さんの言葉に申し訳なくなる。

燃費計を見たら6.3。私の分を取り戻してくれたことにさらに申し訳なくなる。

他車と絡んだ時は38秒台までラップを落とすも燃費は6.3を維持。

やっと燃費走行のコツが分かってきたような気がする。

このスティントも後半は体が熱く、体力的につらかったが「つらい時は声を出せ」と昔部活で言われたことを思いだして実践。なんて言ったかは覚えていない。そして村上さんへバトンタッチ。

あぁ私の仕事が終わったぁ! というのが本音。

(あ)さん、持永さんが「お疲れ!」と握手してくれて本当にうれしかった。

村上:
自分の出番、燃費計が6.2になっていて焦る。まずは6.3に戻すことを最優先しよう。

2周走るが戻る気配はない。ラップタイムは38秒、アクセルを踏みたい気持ちを抑えて絶対に6.3に戻すと決めて走る。

がんばってがんばってようやく6.3に戻った。

ほぼ同時に残燃料警告灯が点灯。

パッシングでピットに伝えると、次の周には給油ピットインの指示が出た。

「もう終わり?」。

ドライバー交代で今野さんに「燃費6.3でお願いします」と3回くらいお願いした。

うざかったと思う。

2回目の走行は、燃費計は6.3。

今野さんありがとう。

だが、タイムは35秒台。オーバースピード?

また悪い癖が出てきたか?

サインエリアで妻が手を振って応援してくれているのが見える。手を振り返したいが、マシントラブルなどと勘違いされるとまずいので、視線で「見てるよ」と合図を送る。

そろそろガソリンの警告灯が点くかな、と思ったところでピットインの指示。順位はかなり下がってしまった。

本番は難しいなぁと思いながら遅い昼食を取る。

残り1時間時点で総合11位、クラス4位。

ゴッツさんがクラス3位のフィットとの差をどんどん縮めていた。

残り30分、もしかしたら行けるかも!

ラップタイムに釘付けになる。

最後はわずか10秒及ばず、総合9位、クラス4位。

最初の給油でロスしていなければ、自分が練習どおりのタイムで走れていれば……という悔しい気持ちと、いやこれは自分の実力以上の結果だ……という気持ちが入り混じる。

無事にレースを終えられて良かった。夢のような3日間だった。


裕子さんはピットロードで心配そうな顔をして村上さんを応援していた。「気がついてくれてないみたい……」とちょっと寂しそう。ちゃんと気がついていましたよ!

金曜日のふたりの実力ほぼ互角だった。突っ込みすぎが多くてちょっと危なっかしい村上さんと、マージンを取りすぎて何も起こらない今野さん。タイムアップの壁にぶつかる2大パターンだ。でも、レースが終わってみれば……もうふたりのドライビングがどうかなんて、どうでもよくて……趣味のレース参戦を応援してくれるステキな奥様がいるふたりが本気でうらやましいでしょ?ちなみにボクは、これまでのJOY耐史上最長の3時間45分も走って軽く熱中症になりました。編集長(あ)と持永さんは間違いなくドSだわ。


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