Presented by pen

第1回 アートを感じ、触発される旅へ。

NEW オデッセイ×軽井沢千住博美術館

気鋭の芸術から、デザインを紐解く。

「本質を感じる知への旅」第一回は、軽井沢千住博美術館が舞台。現代美術作家の千住博さんが考える芸術がもつ役割を紹介しながら、NEW オデッセイのエクステリアデザインの魅力を紐解きます。

芸術は人がコミュニケーションをするために生まれた知恵。

芸術には多種多様な側面、形式があります。さらにモチーフ、テーマ、展示される場所、扱われ方も作品それぞれによって全く異なってきますが、どんなものも創造しているのは人であることはいうまでもありません。故に、作家が生きてきた時代性、環境、価値観こそが最大の素材であり、個性を形づけているという点においてはすべて共通だといえます。鑑賞者は美しさだけでなく、それに気づかされた瞬間に共感や驚きを得て、感動に至るのです。

高校生時代に岩絵具という日本の伝統的な画材料や和紙の美しさに惹かれ、以来、それらを用いた作品を描き続け、国内外で非常に高い評価を受けている現代美術作家の千住博さんは芸術を「人がコミュニケーションをするために生まれた知恵」だといいます。1995年にヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞し、その後、日本を代表する寺院の襖絵やグランドハイアット東京、東京国際空港第2ターミナルといった施設に作品を提供してきた千住さん。彼が主なモチーフとしているのは、滝をはじめとした自然の姿。作品を通し、自然に美を求めていた日本人のルーツを千住さんは訴えかけているのです。

今回はその考えが体現された美術館に新しいオデッセイで訪れました。辺りが木々に覆われ爽やかな空気が漂う、中心部から少し離れた中軽井沢。軽井沢千住博美術館はそんな場所と調和するように、ひっそりと佇んでいます。

タブーを逆手に取った、これまであり得なかった美術館。

軽井沢千住博美術館のエントランス。木々に囲まれた小道を歩いて、ここまで行きます。壁面のガラスはすべてUVカット加工が施されており、鑑賞者の目、作品にとっても優しいつくりになっています。

軽井沢千住博美術館が建てられたのは2011年。「当初、コンセプトとして千住さんが掲げたのは“これまでになかった、あり得ない美術館”をつくることでした」と、館長の品川惠保さんは話します。美術館やギャラリーといった芸術作品を展示する空間は、一定間隔で飾りやすいように広く平らな面で壁が構成され、作品が自然光で焼けてしまうのを防ぐために閉ざされている、いわゆるホワイトキューブが一般的。いわずもがな、作品を観ることを一番の目的としているわけなのですが、軽井沢千住博美術館はそれらの要素をあえて覆し、タブーを逆手に取っているのです。

フリーハンドで描かれた図面を元につくったという外観のカーブ。「木が日光を遮るくらい成長したら、なかのカーテンを取り外すことも考えているんです」とは品川館長の談。

設計を手がけたのは、建築界のノーベル賞と例えられているプリツカー賞を受賞した建築家ユニット、SANAA(パートナーは妹島和世さん。金沢21世紀美術館、ルーブル美術館ランス別館などが代表作)のひとりとしても知られる西沢立衛さん。千住さんは以前より、西沢さんを日本一の建築家と称えていたそうで、運命的な出会いを果たした後に直接ラブコールを送り、このコラボレーションが実現したといいます。まず、他の美術館と大きく違う点は建物の存在感です。軽井沢千住博美術館の前にはバイパスが走っているのですが、中軽井沢の環境と同じように、150種類にも及ぶたくさんの木が美術館の周りを囲っているため、その姿は道路からほとんど見ることができません。主張をするのではなく、ランドスケープのなかに溶け込み、一体になること。それが千住さんと西沢さんが求めたテーマでした。

先鋭的で親しみやすい、芸術とオデッセイの共通点。

作品が点在し、中庭から柔らかな日光が挿し込む館内の一角。床は起伏がある元々の地形にあわせてつくられているため、平らな部分や段差がほとんどなく、スロープ状になって繋がっている点も特徴です。

展示室においても、世界観は一貫されています。扉を開くと、白とコンクリートで構成されたニュートラルな空間のなかで、ランダムに立てられた薄く長細い壁に千住さんの作品群が一点ずつ飾られ、一般的には展示室に設けられない、中庭が2つあるのです。さらに特徴的なのは順路がないこと。鑑賞者は誰かにペースを乱されたりすることなく自由に館内を回ったり、作品の前に置かれたチェアに腰をかけ、くつろいだりすることができます。その様は、美術館というよりも綺麗に整えられた日本庭園でゆっくりと散歩をしているようにも見えます。

千住さんは滝の一部分だけを描いた≪ザ・フォール≫で、1995年のヴェネツィア・ビエンナーレで絵画作品としては東洋人初となる名誉賞を受賞しています。以後、滝をモチーフとした作品はシリーズ化されており、こちらは2004年に描かれた≪ウォーターフォール≫。

金屏風に日没時の湖畔の風景が描かれた非常に豪華な作品は、建築のカーブに沿うように展示されています。軽井沢千住博美術館には、千住さんが20代の前半だった頃から現在に至るまでの様々な作品が保管されており、折々の企画に応じて入れ替えられているそう。

一般的にミニバンは居住性を重視するため、背を高く設定することが多いもの。しかし、オデッセイは異なります。求めたのは居住性を犠牲にせず、エレガントさやスポーティさを配合し、ミニバンという枠を越えること。故にオデッセイは他のミニバンと比べ、全高が低くなっているのです。

重心を低く設定し、ロー&ワイドなフロントフェイスに仕立てている点は初代から共通する部分。鋭い直線によって構成されたエアロパーツによって、力強さが増しています。

サイドスカートからフェンダーアーチ、リアまでが見事に繋がっている斬新なキャラクターラインは、流麗なプロポーションを物語っています。

千住さんが常に志向するのは「あらゆる文化的な垣根を取り外すこと」。日本画、美術館という枠組みにとらわれず、自らを解放しながら表現領域を広げていく。それは前衛的な作家やアウトサイダーなどの排他的な考え方とは真逆の、より多くの人によりよい観方、芸術との接し方を提案する、門戸を開く行為だと考えられます。

以上の先鋭的な一方で軽井沢の豊かな環境に馴染み、すべての人を受け入れるという千住さんの芸術のあり方は、新しいオデッセイのデザインにも当てはまります。ミニバンという日本の道路事情や日本人のライフスタイルにマッチした、高い実用性が求められるカテゴリーに属しながら、流麗さをアピールするラインが随所に刻まれ、工芸的ともいえる精巧さをもつ。オデッセイはその歴史のなかで常に時代と向き合い挑戦しながらも、時代のトレンドに流されずに、本質的な価値がどこにあるのかを問い続けてきました。そして、その都度、従来にはなかった付加価値を与えることで、乗用車の領域を広げてきたHondaの真骨頂といえるモデルなのです。

美術館を堪能し帰路へ。次回はどこに向かうのか、乞うご期待下さい。

<美術館情報>

軽井沢千住博美術館

長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
開館時間:9時30分〜17時(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週火曜(但し、祝日の場合と、GW、7〜9月は開館)
冬期休館:12月26日より2月末日
入館料:1,200円(一般)、800円(学生) ※中学生以下無料
http://www.senju-museum.jp