ドイツ、ヴィリンゲンに集まった大観衆を前に、グレッグ・ミナー選手はワールドカップ通算3度目、Team
G Cross Hondaに入って2度目の勝利を手にした。決勝戦の途中で雨が降り、2分半のコースはコンディションが大幅に変化。レース内容は緊迫し、ファンを大いに楽しませた。まずトップに立ったダン・アサートン選手(Animal
Giant)は、2分23秒04というタイムを破る者が現われるかどうかじっと待っていたが、これを実現したのはミナー選手ただひとりだった。
チームにとって、この週末は最悪の形でスタート。水曜の夜、マティー・ライコネン選手とミナー選手の2台のマシンがトランスポーターから盗み出される事件が発生。幸いそれらには最新技術を誇るギアボックスは組み込まれていなかったため、メカニックと技術スタッフは全力を挙げて木曜朝のフリー走行までに新しいマシンを組み立て、ふたりのライダーは1時間遅れただけでコースに出ることができた。
コースには人工的に作られた大ジャンプがいくつもあり、雨天のため、路面が非常に柔らかく厳しい状況となった。脚力の優れたライダーには有利な条件だったが、ほとんどの選手は練習走行の段階から苦戦を強いられた。計時走行ではTeam
G Cross Hondaのふたりが揃ってトップ5入り。ミナー選手が2番手、ライコネン選手が5番手という内容で、ミナー選手と0.19秒差でトップに立ったのは、ワールドカップ暫定ランキング3位のオーストラリア出身のミック・ハナー選手だった。
準決勝は寒さの中で行われた。コースは朝の雨が残ってウエット・コンディションのまま。ミナー選手とライコネン選手の目標は、上位で準決勝を終え、貴重なポイントを稼ぐことだったが、ハナー選手がまたもこのコースで強さを発揮、2分23秒21というこの状況で最速のタイムをマークして準決勝を制した。ミナー選手は2分25秒05で2番手につけ、ライコネン選手も3位に入ってポイントを獲得。世界チャンピオンのファビアン・バレル選手はスタートできず、この日は無得点に終わった。
決勝レースの結果が、総合順位を大きく左右する状況となり、ハナー選手が1位でゴールすれば、ポイント・リーダーの座はハナー選手のもの、ミナー選手がハナー選手を破れば、こちらもトップに立つことができる。準決勝のあと、強い風と若干の日射しによってコースが乾いてきたが、走行時間の半ば頃には再び雨が降り始め、非常に滑りやすくなった。その後雨は弱くなったが、コースの75%を占める開けた草地のセクションは、かなり路面が荒れていたため、メカニックはブロックが最大のマディタイヤに交換、ライコネン選手は最後から3番目にスタートした。
ライコネン選手は脚力が要求されるこのコースが不得手だったが、3番手のタイムで中間地点を通過。終盤、タイムをロスしたが、それでも7位という好成績でレースを終えた。続く最後から2番目の出走ライダー、ミナー選手は、すべてのジャンプを見事にクリアし、ダブル・ジャンプをこなして、滑りやすい岩場のセクションでもミスを犯さなかった。中間地点をアサートン選手より丸4秒早く通過したミナー選手は、2分19秒59でコースを走りきり、ハナー選手ひとりを残して首位に躍り出た。全員が大型スクリーンに注目する中、ハナー選手はスタート、コース半ばの高難度の岩場セクションでマシンのコントロールを失い、泥の中に激しく転倒。マシンを起こして走り出すのに長時間を要したハナー選手は、77位という結果に終わり、ポイントを獲得できなかった。これにより、ミナー選手がワールドカップの総合ポイントでランキング1位に浮上。これはフォート・ウィリアムで開催された2004年の開幕戦以来となる。
ミナー選手は4Xシリーズの練習走行にも参加したが、決勝レースには出場しなかった。予選でも観客サービスを念頭に置いて走ったミナー選手は、彼らしい大ジャンプでファンを沸かせたが、コースアウトを喫して64人の出走者の中には入らなかった。盗難事件を考慮すれば、今週末はダウンヒルに専念できたことが、結果的に最高の成果をもたらしたといえる。
チームはこのあと、6月12日にワールドカップ第3戦が行われるオーストリアのシュラートミングへ移動する。
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