会場のMTBワールド瀬女は、毎年JCFの大会が行われ、昨年は全日本選手権大会の会場にもなっている。コースは比較的長距離の全長3650m。さらに666mという標高差が示す通り、こう配の険しい“激坂”も多く、ハイスピードエリアとテクニカルエリアが交互に現れる。中でも最大の特徴は、瀬女名物の通称「ブナ林」と呼ばれるシングルトラックで、急斜面に木の根や大小の岩が不規則に露出しており、ライダーにとっては転倒やパンクに注意しなくてはならない難セクション。以前から、ブナ林を制する者が瀬女の勝者となるといわれているほど、ライダーの技量がストレートにタイム差に反映する。
午後12時10分から行われたエリート男子予選。やや慎重な走りでまとめた内嶋は、5分1秒166のタイムで予選4番手につける。井手川直樹(G Cross
Honda Idegawa)はブナ林の出口で前転クラッシュを喫して、大幅なタイムロスで5分7秒760の予選6番手。また、クラッシュ時に右手の指を深く切るダメージを負ってしまう。井手川のチームメートである永田はコース後半でリアタイヤがパンク、思うように加速できないままゴールするも、5分2秒036は予選5番手という結果。トップタイムは安達靖(Team
Ikuzawa)が4分55秒台を出しており、3番手までが5分を切る好タイム。予選で4〜6番手に並んだHonda勢の決勝でのタイムアップと大逆転劇が期待された。
午後2時40分から決勝が開始。予選通過の30台が1分間隔のリバーススタートで走行を開始した。前年までは圧倒的に雨天の多い会場だったが、今年は爽やかな秋晴れに恵まれて、決勝時の路面コンディションはこれまでにないほど良好。全体的にタイムアップが必至の状況となった。そして最初に5分の壁を越えたのは井手川。負傷した指をテーピングでしっかり固めて、痛みを押し殺しながらの力走で、自身の予選タイムを14秒以上短縮する4分53秒531をマークして、暫定トップに立つ。そして次にゴールした永田のタイムに、会場は大きなどよめきに包まれた。4分47秒821という、井手川を5秒7以上も引き離す圧倒的なタイムを叩き出す。さらに内嶋が予選タイムを11秒近く詰める4分50秒269で2位に食い込み、Honda勢の1-2フィニッシュを決めた。
今回の最終戦終了とともに、シリーズランキング、ナショナルランキングが決定した。7月の全日本選手権大会で2007年ナショナルチャンピオンに輝いた内嶋は、シリーズ、ナショナルランキングともに今季2位を獲得。井手川はシリーズ5位、ナショナルランキング3位。チームメートで成長著しい19歳の永田はシリーズ4位、ナショナルランキング5位の成績でトップライダーの仲間入りをアピールしたシーズンとなった。 |