最先端の昂ぶりを。後輪を左右別々に電気で回して曲がる 04_SPORT HYBRID SH-AWD

スーパースポーツNSXにも
受け継がれた
3モーターハイブリッド技術

エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステム。
燃費などの環境性能を高めるためのテクノロジーという認識が今の世の中でも一般的だが、
Hondaはこれを走りの昂ぶりを高める技術としても研究してきた。その集大成といえる
3モーターハイブリッド。意のままの走りの究極をめざして生んだ、世界初の駆動システムである。

最初は惨憺たるものだった。試作車としたのは、7人乗りSUVの改造車。改造といっても根本から全くの別物だった。なにせ当時ガソリンエンジン車しかない車両に、3つのモーターとバッテリーを積み込んで仕立てたハイブリッド車だ。3つのモーターのうち2つは後輪の車軸とつながり、後輪を左右別々に回す。まさに前人未踏の技術。これでこの上ない操る喜びをめざしたが、試走の結果は普通のクルマ以上に思い通りにならないクルマだった。エンジンと3つのモーターを機能させ、一瞬ごと、状況に即した最適な駆動力を各車輪に送る。それにより、人の意志に自在に応える、安心と昂ぶりに満ちた走りを生む。それが理想だったが、各メカの制御がとてつもなく難しかった。「とても量産できるとは思えない」。社内の役員試乗でも声が上がった。研究開発のスタートは、時を大きくさかのぼる。燃費を犠牲にせず加速性能を飛躍的に向上させる駆動システムとは。それがそもそもの開発の狙いだった。4WDにすれば加速性能は高められるが、大型車では燃費が悪化する。相反する性能を追い求める中で、モーターを使う発想が出てきた。

一方で、Hondaが以前から重ねていた研究があった。それは、より自在に曲がる技術。ハンドルを切ると後輪も曲がる技術を実用化し、プレリュードに載せたのは1987年。その後、駆動輪である前輪の駆動力に左右で差をつけ、旋回を助ける技術を世に出し、さらに、四輪の駆動力を変化させる「SH-AWD」を編み出し、2004年の先代レジェンドに搭載した。この技術は、主に前輪で駆動し、状況に応じて後輪にも駆動力を分け、しかも後輪の左右で駆動力に差をつけられるもの。カーブでは、曲がる側とは逆の後輪に駆動力を多く配分してクルマを後押しし、クルマ自身に「第2の曲がる力」ともいえる旋回力を生む世界初の技術だった。この発想が、並行するハイブリッドシステムの開発と結びつく。モーターなら回転の瞬間から強力なトルクを発揮でき、そこはエンジンでは望めない。また、モーターで後輪を回せば、エンジンの力を後輪に伝えるシャフトなどが要らず軽くできる合理性もある。 そして、革新的なのは、モーターで後輪を回せば、エンジンの作動に依存せず後輪を駆動でき、モーターを2つ使えば後輪を左右別々に、自在に駆動できる点だった。

この技術なら、エンジンの力を四輪に配分するのとは異なり、減速時などアクセルオフでも後輪が回せ、低速時でも後輪1輪だけを回して「第2の曲がる力」をつくれる。完成すれば必ず画期的な技術になる。その確信を胸に3モーターハイブリッドへの挑戦は始まった。ガラクタと呼ばれても、開発者たちは技術を積み上げ、壁を超えていった。先代レジェンドが生産を終える1年前、2011年初頭の役員試乗では肯定的な驚きが相次いだ。制御が格段に進歩していた。その間の過程を「筆舌に尽くしがたい困難の連続」と開発者らは述懐する。さらに約4年をかけて熟成し、3モーターハイブリッドシステムを載せたレジェンドが誕生した。だが挑戦は終わらない。2018年には、「この技術を生かしたドライバーズ・カーとは何か」という問いに真正面からぶつかり、制御にさらに磨きをかけ、答えを出した。刻々と変わる状況で安心感に包まれ、心豊かに操れる究極の自在さを。人間の自由な移動をめざすHondaが挑むのは、豪華さの高級ではない、パフォーマンスの最高峰だ。開発者たちの夢と執念の成果であるこの走りを、ぜひご体感いただきたい。

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