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2013年5月12日(日)・決勝 会場:熊本県・小田浦和田山タナカ森林農場 天候:晴れ 気温:28℃
観客:1200人 セクション:泥、木材、岩
5月12日(日)、全日本トライアル選手権第3戦が熊本県の小田浦和田山タナカ森林農場で行われ、小川友幸(Honda)が厳しい戦いの末に優勝。小川友幸にとって、2011年シーズンの第4戦中部大会以来、2年ぶりのこととなりました。
11日(土)の午前中、九州地方は激しい雨に見舞われました。会場となった小田浦和田山タナカ森林農場は、土の斜面が中心のため、雨が降るとコースがドロドロになります。セクションは土曜日の最後のチェックで、雨設定に変更されました。これが12日(日)の激戦の引き金となりました。
トップライダーたちは、難関を次々にクリーンしていきます。小川友幸と、その手ごわいライバルである、黒山健一(ヤマハ)、野崎史高(ヤマハ)、小川毅士(ベータ)の中で、最初に減点をしたのは小川友幸でした。土の斜面を上る第3セクションでの、ちょっとした足着きでした。続く第4セクションでは、小川毅士が1点。いつもならこうした減点の積み重ねで勝負の行方が決まっていくのですが、この日の小川友幸は、じっとばん回のチャンスをうかがっていました。
第6セクションで野崎と小川毅士が3点、小川友幸もここで1点を取ってしまいます。この時点でトップは黒山で減点ゼロ。小川友幸が2点、野崎が3点、小川毅士が4点という、トップ4名の激しい戦いでした。
第7セクションは、途中で木を迂回するようにターンしてから、頂上まで上る設定で、その難度の高さはこの日、一番でした。ここは結局、全員が5点で勝負はつかず。点差は変わらず2ラップ目を迎えます。
第6セクションまでを、いずれもすべてクリーンした上位の4選手。いよいよ、難関の第7セクションに着きました。2ラップ目、ここを唯一通過できたのが、小川友幸でした。長いヒルクライムを、絶妙のアクセルワークで上っていき、最後に枝木を越えてからは、右に左にマシンを振りながら上っていきます。小川友幸はこのセクションを3点で通過。ほかのライダーは5点を取り、これで小川友幸と黒山が同点となりました。
そんな中、ほぼ全員がクリーンしていく2ラップ目の第8セクションで、黒山が1点を取ります。これで1点差ながら、小川友幸が単独トップとなりました。
3ラップ目では、小川毅士にところどころミスが出始めましたが、小川友幸、黒山、野崎の3人はクリーン合戦。そして再び、第6セクションまでをすべてクリーンで、第7セクションにやってきました。野崎が2ラップ目の小川友幸を思い出させるかのような3点。これが2人目の第7セクションの走破でした。黒山の登坂は見事で、クリーンで抜けるかと思われたそのとき、マシンが動きを止め、最後にはテープを切って5点となってしまいます。最後にトライした小川友幸は、黒山同様にクリーンを狙いますが、わずかにマシンがラインをそれた瞬間に3点で抜ける選択をし、見事、頂上までマシンを運びます。最後の第8セクションは小川毅士を除く3人がクリーンし、3ラップを終えた時点では小川友幸がトップ。しかし、2番手との差はわずか3点でした。
小川友幸を追うのは、黒山だけではありませんでした。3ラップ目、第7セクションでの3点のほかはすべてクリーンをしてきた野崎が、黒山に並びます。この時点で、残るスペシャルセクション(SS)の結果次第では、小川友幸に勝利も3位も可能性のある戦況でした。
インターバルを挟んで、2つのSSで最後の勝負が始まります。1つ目は、第2セクションだった場所。インターバルの間に手直しがされ、険しい山の頂上まで上る設定になりました。ゼッケン番号が大きい順にトライした各選手は、最後の難関に差しかかったところで、次々に5点になってしまいました。小川毅士も野崎も5点となり、いよいよ小川友幸の番です。
下からスムーズに加速をした小川友幸、アクセルを必要以上に開けず、エンジン音が響かないままに登坂していきます。それは、世界選手権日本GPから小川友幸が乗り始めたニューエンジンの真価が発揮されたシーンでもありました。小川友幸はするすると険しい山の頂上まで上っていき、最初にクリーンとなりました。そして大歓声が止まないうちに、黒山のトライです。ここで黒山が5点となれば、その時点で小川友幸の勝利が決まります。黒山は小川友幸と同じように、スムーズにするすると坂を上っていき、同じようにクリーンです。勝負は最終セクションに持ち越されました。
最終セクションは、第8セクションとして使われていたもので、3ラップのうちは足着きの少ないセクションでしたが、SSでは、入口と出口の設定が大きく変わっており、難度が増していました。ここを黒山がクリーンで通過し、小川友幸はクリーンできません。しかし1点で通過して、見事首位の座を守って試合を終えました。
小川友幸選手にとって、ファクトリーマシンのエンジンを使用した最初の全日本選手権。そのプレッシャーをはねのけての勝利でした。シーズン2戦目にして、小川友幸選手と黒山選手は1勝1敗。獲得ポイントは同点になりました。残る2013年シーズンが、楽しみになってきました。
小川友幸(優勝)「世界選手権ではニューエンジンでの乗り込みが不足した状態で挑んだのですが、今回は十分にできて、いい状態で試合に臨むことができました。しかし、まだ新しいエンジンに慣れていない部分もあり、『このエンジンで勝たなければ』というプレッシャーと、新しいエンジンのポテンシャル、特性に慣れきっていないことへの戸惑いとで、厳しい戦いになりました。それでも、2年ぶりの勝利ですし、なによりニューエンジン投入の初戦で勝てたということで、たいへんよい結果でした。これでシーズンの戦いも振り出しに戻せたので、幸先のいい再出発になりました」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 小川友幸 | Honda | 0 | 14 | 20 |
2 | 1 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 16 | 22 |
3 | 3 | 野崎史高 | ヤマハ | 0 | 26 | 20 |
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 30 | 16 |
5 | 7 | 田中善弘 | ベータ | 0 | 34 | 18 |
6 | 5 | 柴田暁 | Honda | 1 | 49 | 11 |
10 | 8 | 斎藤晶夫 | Honda | 0 | 68 | 11 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 小川友幸 | Honda | 37 |
2 | 黒山健一 | ヤマハ | 37 |
3 | 野崎史高 | ヤマハ | 30 |
4 | 小川毅士 | ベータ | 24 |
5 | 田中善弘 | ベータ | 24 |
6 | 柴田暁 | Honda | 18 |
10 | 斎藤晶夫 | Honda | 12 |