西日本を中心に大きな被害を残した台風12号。その直撃を受ける形になったのが、全日本選手権第3戦中国大会でした。台風がこの地方を直撃したのは、大会前日の土曜日。会場ではセクションやコースの最後の仕上げをしている真っ最中で、台風の状況を探りながら、流れがきつくなった川のセクションなどをキャンセルして、日曜日の開催を迎えました。台風の通過中も、不思議と会場では風はなく、雨が降るだけだったのは不幸中の幸いでした。
大会当日は、雨が降ったり止んだり、いまだ台風の余波を感じる天候となりましたが、前日の雨と比べれば、ずいぶんと過ごしやすい一日となりました。ただし、選手にとっては、雨の様子を見ながらトライしなければならない、やや難しいコンディションとなりました。台風を想定してセクションの難易度も下がっていたため、勝負はより難しくなっていました。
小川友幸(Honda)は、第1セクションを1点で抜けて試合をスタート。黒山健一(ヤマハ)は3点。野崎史高(ヤマハ)が唯一クリーンしました。
第2セクションは、ほぼ全員がクリーンでしたが、第3セクションは、泥々の滑る設定に全員が5点となりました。続く第4セクションはトップライダーがそろってクリーンと、なかなか勝負が動きません。
第6セクションでは、小川の3点、野崎の5点に対し、黒山がクリーンしてトップに出ます。しかし、小川とはわずか1点差、野崎も小川に遅れることわずか1点で、まだまだ僅差です。
続く第7セクションでは黒山と野崎が3点。小川はここを1点で抜け、今度は小川が黒山に1点のリード。さらに第8セクションでは小川の1点に対して、黒山は丸太の一本橋に失敗して5点。小川のリードは5点に広がりました。その後、第10セクションで小川が1点、黒山がクリーンでその差は4点。
そして、第11セクション。小川は痛恨のミス。1ラップ目では、9人中2人しか記録していない5点をとってしまいました。これで黒山が1点のリード。さらに最終12セクションで黒山が1点、小川が3点をとったことで、両者の点差は3点となりました。
そしてもう1人、小川と並んで20点で1ラップ目を折り返したのが、野崎でした。ラップの序盤は失点を重ねた野崎が、小川の5点で一気に差を縮め、さらに最終セクションを1点で抜けて同点に追いついたのです。
トップの3人が3点差という状態で2ラップ目に入りました。一つひとつのセクションが、優勝戦線に直接影響するし烈な戦いとなりました。そんな中、小川は第1セクションで3点。追う立場としては、いきなり苦しい状況を作ってしまいました。
しかし中盤の第6セクションから第8セクションでは、黒山が3セクション連続で3点。3点、1点、1点でここを抜けた小川との差は、再び僅差となりました。野崎は、ここを3点、2点、3点と失点しています。
最終の第12セクションに到着したとき、小川の減点は30点でした。黒山は28点、野崎が31点。小川が逆転優勝を飾るには、このセクションをクリーンする必要があります。対して黒山は、1回の足つきでセクションアウトすれば、小川がクリーンをしたとしても勝利が手に入ります。
しかし、この最後の勝負で、小川は5点となってしまいました。黒山はクリーン。野崎も1点でここを抜け、最後の最後で小川は2位表彰台を野崎に譲り、3位となってしまいました。
2週間後のトライアル・デ・ナシオンへの参戦が決まっている柴田暁(Honda)は減点がかさみ、前回の3位表彰台から今回は6位とやや不本意な結果に終わりました。クリーンセクションでも5点を取るなどの失敗が敗因でした。
東日本大震災の影響で全5戦となった今シーズンの全日本選手権。残るは中部大会と東北大会の2戦のみとなります。
小川友幸(3位)「今日は自分のライディングとしては悪くなかったのですが、勝負どころが少なかったようで、この結果になりました。失敗らしい失敗は1ラップ目の第11セクションくらいだったのですが、結果的にはそれが致命的となりました。あと2戦、今年はまだ勝ちがないので、とにかく1勝を挙げるべくがんばります」
柴田暁(6位)「今回は狙っていたのですが、それが空回りを生む結果となりました。最後までクリーンしていたのに5点となるなどしたため、実際以上に自分の結果が悪く思えてきて、それも悪く作用してしまいました。2週間後のトライアル・デ・ナシオンで、また刺激を受けて、後半の2戦をきっちり走りたいと思います」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
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1 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 28 | 14 |
2 | 3 | 野崎史高 | ヤマハ | 0 | 32 | 13 |
3 | 1 | 小川友幸 | Honda | 0 | 35 | 9 |
4 | 5 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 50 | 11 |
5 | 9 | 宮崎航 | ベータ | 0 | 81 | 2 |
6 | 7 | 柴田暁 | Honda | 0 | 85 | 2 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 黒山健一 | ヤマハ | 60 |
2 | 小川友幸 | Honda | 49 |
3 | 野崎史高 | ヤマハ | 45 |
4 | 小川毅士 | ベータ | 35 |
5 | 柴田暁 | Honda | 34 |
6 | 田中善弘 | ベータ | 31 |