第1セクション、第2セクションを続けてクリーンしたのは、小川と田中太一(Honda)の2人だけだった。第2セクションで黒山は減点1点、野崎史高(ヤマハ)は5点となっている。しかしその後、小川は第3セクションで5点をとり、田中は第4、第5と連続で5点をとってしまった。これで試合のリードは、黒山が握った。
しかし小川は踏んばる。第5セクションでは黒山の2点に対して1点。ざくざくとした斜面で、ふとした瞬間に足が出てしまう難しいセクションだった。これで両者の点差は3点となり、黒山がリードを保っているものの、ミスひとつでひっくり返る緊迫した戦いとなった。
ところがミスをしたのは小川のほうだった。タイトで高い岩に飛び上がる第9セクション、黒山が1点で上がったのに対し、小川は別のラインを選んだものの上れず。これで点差は7点となった。ばん回不可能な点差ではないものの、点数が開き始めてきた。
この日、台風11号の影響で、天候は次第に悪くなることが予想されていた。そしてその通り、小川らが1ラップ目の第7セクションに到着したころ、一瞬激しい雨に見舞われた。しかし、本格的な雨にはならず、気まぐれに時折、岩を濡らしただけで通り過ぎていく。降り続けるより、かえって走りにくい状況となった。
2ラップ目も、状況に大きな進展はなかった。第4セクションで黒山は2点をとるも、小川はここで5点。点差は10点にまで広がった。さらに第5セクション、ここでは小川と黒山が5点。両者の点差は変わらず10点だが、田中が2点で抜けたこともあって、小川は田中に2点差まで詰め寄られることになった。
小川のがまんのトライアルが始まったのはここから。第6セクション、濡れた岩にはじかれて黒山が落下するのを尻目に、小川は美しくクリーン。10点差を5点差まで巻き返してきた。
3ラップ目、第2セクションの岩の頂上で軽く足をついた小川だが、バランスを崩しながらも大岩からなにごともなく着地した。第4セクション、小川のクリーンに対し、黒山が5点。これで点差はわずか1点となった。さらに第5セクションで小川の1点に対して黒山は5点。これで両者は逆転して、ようやく小川が試合のリーダーとなった。
2ラップ目で黒山が失敗した第6セクション。ここでは形勢が完全に小川に傾いていた。絶対の自信を持ってセクションに挑む小川に対し、黒山は水を含んだマッド路面に苦戦。小川はクリーンし、黒山は3点。これで小川のリードは6点に広がった。
最後の勝負は、そこまで小川が一度もアウトできていなかった第9セクションだった。3ラップ目にして、小川はようやく3点で脱出。黒山は2度目の5点。これで両者の点差は8点にまで広がり、残るセクションは2つ。最終セクションに小川が到着した時点で、すでに小川の勝利は確定的となっていた。
4勝と2位3回の小川。3勝と2位1回、3位3回の黒山。ランキングでは、両者には9点の点差ができた。次戦最終戦では、黒山が優勝したとしても、小川は5位に入ればタイトルを決定できる(同点の場合は、上位入賞回数が多い者がランキング上位につく)。しかし小川は、最終戦で勝利して、有終の美を飾ってタイトルを獲得すべく、最後の戦いに闘志を燃やしている。
田中は、中盤では小川に迫る勢いを見せたが、3ラップ目にいくつかの大クラッシュを喫して、最後は小川と23点差まで差を広げられてしまった。しかし田中は、今回久々に表彰台の一角を得ることに成功している。尾西和博(Honda)は、今回も本来の調子を発揮できず、7位に終わっている。
次回は10月14日。愛知県岡崎市近郊のキョウセイドライバーランドで開催される。全日本選手権も、いよいよ次戦が最終戦だ。 |