いつものように、各選手が長い下見を繰り返して、なかなかトライに入らない第1セクション。トップライダーの中では、真っ先にトライしたのが小川だった。急な岩盤を上り、難度の高い出口で小川の減点は1点。ここで黒山健一(ヤマハ)は減点5点。野崎史高(ヤマハ)はただ一人クリーンして、SUGOが得意なところをアピールする。
黒山は、続く第2セクションでも5点。小川とのチャンピオン争いに臨む緊張が、正確なライディングに狂いを生じさせていた。ここは小川も野崎とともにクリーンしている。
岩を積み上げた第3セクション、今度は小川と野崎が5点になると、黒山はここをわずか1点で通過する。野崎が試合をリード、これを追う小川という展開となったが、黒山も調子を取り戻してきた。
トップクラスの動きがふたたび止まったのが第5セクション。ざくざくとした地面の上りで、ラインができていないため、様子見で全員がけん制しあう状況となった。ここでも小川が真っ先に動く。しかし、今度はそれが裏目に出て5点。このあと、さらに長い下見をしてトライした黒山は1点、野崎はクリーン。小川は野崎に5点のリードを許し、さらに田中太一(Honda)にも3点リードされ、黒山には1点差まで詰め寄られる結果となった。
水が流れる沢から岩を駆け上がっていく、自然の中に設定された第7、8セクションは、今回の中では数少ないトライアルらしいセクション。一歩先んじて第7セクションに到着した小川は、ライバルがまだ到着する前にトライを開始して3点。田中は5点となったが、黒山、野崎はともにクリーンして、この時点で小川は4位まで後退してしまった。さらに第9セクションの大岩上りでも5点となった小川は、1ラップ目を終えたところでトップの黒山に6点差、3位の田中とは1点差の4位となった。
しかし、小川以外のトップグループは、前半の下見に時間を使いすぎたために、1ラップ終盤にタイムオーバーの危機にあった。ランキングトップの小川は最もスタートが遅いが、そんな中で先頭を切って走る小川は、1ラップ3時間半の持ち時間に間に合った。ライバルたちはタイムオーバー減点を取り、中でも野崎はタイムオーバーを嫌って比較的クリーンの出やすい第10セクションを回避した。野崎の1ラップ目の順位は2位だが、小川とはわずか2点差だ。
2ラップ目。第1セクションと第3セクションは全員が5点。第4セクションで黒山が1点をついて、小川との点差は5点に。小川は第4セクションからクリーンを続けて第9セクションにやってきた。ここで1点の小川。しかし黒山もここで1点。小川は第1から第3まで連続5点の田中、第4まで連続5点の野崎を逆転して、2位までポジションを回復してきた。
しかし、2ラップ目の最終セクション、小川がゲートマーカーに触れたとして5点を宣告される。これで黒山との差は10点に。優勝を争うには、やや点差が開きつつあった。2ラップを終えて、黒山25点、小川35点、田中と野崎が46点(クリーン差で田中が上位)と、田中と野崎の3位争い以外は点差が開いて、いよいよ勝負は3ラップ目に入った。
小川は、この時点で確実に2位を守る作戦にシフトしつつあった。今シーズン、ランキングトップを守っている一因には、勝てないときの2位キープがあった。第4セクションの泥の斜面を滑り落ちてしまった小川は、優勝争いはこれまでと、完全に2位キープに戦法を切り替えていた。
ところがこのあと、黒山が減点を重ねはじめた。第7、そして最終セクションで5点をとった黒山は、さらにタイムオーバー減点が6点。トータルで減点は50点となった。これに対して、第4セクションの5点以降は1点が3つと、確実にセクションを走り終えた小川は、タイムオーバーなしでトータル減点は51点。終わってみれば、小川はわずか1点差で勝利を逃す結果となった。
今回2位を守り、ランキングでは黒山にいまだ6ポイントをリードしている小川だが、試合後は勝てる試合を落とした悔しさをにじませていた。
序盤、好調だった田中太一は、トップ争いに加われた実感には満足しつつも、トップとの19点差が課題となった。終盤に減点をとって、野崎に3点差で逆転を許してしまったのも悔しいところだ。シーズンオフの負傷から復帰した尾西和博(Honda)は、最下位の7位で試合を終えている。
次戦は9月16日。本州の西の端、山口県下関のフィールド幸楽トライアルパークにて開催される。全日本選手権もいよいよ残り2戦となった。ランキングトップの小川と2位の黒山の点差は6ポイントとなっている。 |