会場の大日ヶ原は広大な山林エリア。沢もあり、岩もあり、さくさくの泥の斜面あり。観戦者が自分のオートバイでセクションを回って観戦することができる全日本選手権でも唯一の大会だ。
迎えた決勝日。小川は朝一番からマシンを安定して走らせることができない。1ラップ目、8人中5人がクリーンした第1セクションでも、土の斜面でグリップを失い減点2点。続く第2セクションでも、大岩に上ったときに1回足が出た。ライバルの黒山健一(ヤマハ)、野崎史高(ヤマハ)はクリーンを続けている。この後、小川はさらに第5セクションでも1回の足つきがあって、減点が少しずつ増えていく。
4メートルはあろうかというえん堤に駆け上がる第7セクション。トップライダーにとっては、このえん堤登りはそれほど難しいものではなかった。ところが小川は、セクションの入り口の比較的小さな岩から落ちて、減点5点となってしまった。先行した野崎も5点になっていたため、野崎に追いつくには大きなチャンスだったが、点差を縮めることはできなかった。
第9セクション、第10セクションと小川はさらに減点1点ずつ。1ラップ目の小川の減点は11点だった。野崎は5点がひとつと1点ひとつ、さらにタイム減点を加えて7点。そして黒山は、減点なしで1ラップ目を終えていた。
2ラップ目、小川は気持ちを切り替えて本来の走りを取り戻してきた。バランスはまだ完全とはいえないが、2ラップ目の小川は11セクションをすべてクリーンで終えた。
しかし、小川のこのばん回も勝利を呼び込むことはできなかった。黒山は、1ラップ目に続いて2ラップ目もすべてのセクションをクリーン。2ラップを終わって、小川と黒山の差は10点。逆転が難しい点差だけに、小川は2位の獲得に全力を注いだ。
1ラップ終了時点で、小川は野崎に5点の後れをとって3位。2ラップ目のオールクリーンによって、小川は野崎をかわして2位に浮上した。しかしその差は僅差で、3ラップ目にまた減点を喫しはじめた小川は、ぎりぎりの集中力で2位確保に努めた。小川が減点5点になった第2セクションでは、ライバルの野崎も5点となった。
結果、黒山は1分のタイムオーバーを含んでわずか減点2点。小川は黒山に続いて、18点で2位の座を得た。3連勝はならなかったが、1位2回、2位1回の小川は、2位の黒山に7点のリードをとってランキングトップにつけている。
田中太一(Honda)は、今回はどうにもペースをつかめず、多くの減点を喫して5位となった。手首を骨折して治療中の尾西和博は、まだ欠場が続いている。 |