3連勝で迎えた前戦の中国大会は3位となり、初の全日本チャンピオンに向けて、この第7戦中部大会は負けられない戦いとなった小川友幸選手(Honda)。前戦では、4連勝を狙うばかりに、自分にプレッシャーをかけてしまったという反省から、今回は自分の戦いをすることを第一に考え、試合に臨んだ。また、同じHondaマシンを駆る田中太一選手(Honda)も2戦連続の表彰台入りを狙う。
舞台となったキョウセイドライバーランドは、モータースポーツと交通安全施設が融合されたエリアで、周回路となる周囲の山々には13のセクションが設営された。今回は、2ラップを走り終えたあとに、国際A級スーパークラスのみが、3セクションのスペシャルセクションを走る設定となっている。観客の見やすいロケーションで、迫力のあるトライが披露されるのは、全日本としての格式を保ちつつ、観客サービスに努める中部大会ならではの特色だ。
セクションは、ほとんどすべてが斜面の大岩を走破していく設定。小川選手、田中選手、黒山健一選手(スコルパ)以外の選手は、試合開始早々に5点減点などをとって、第3セクション終了時点で、早くも優勝争いはこの3人に絞られる形となった。3人の中では田中選手が第2セクションで岩に駆け上がった際にわずかにバランスを崩して1回の足つきを喫し、また第3セクションでは小川選手と田中選手がそれぞれ急坂の岩肌を上っていく際に足を出し1点ずつ失点した。これに対し、黒山選手はすべてのセクションをクリーンして試合を進めていく。
第7セクションは20mはあろうかという垂直の壁を上るヒルクライム。ここをまず黒山選手がクリーンすると、次にトライするのは小川選手。しかし小川選手は、わずかに勢いが足りず、頂点で2回の足つきでマシンを押し上げることになった。最後にトライした田中選手はRTL250Fのエンジン特性を生かし、高いギアでスピードにのせたが、それでも1回の足つき。これで小川選手と田中選手は3点で同点、黒山選手とは3点差ということになった。
ところが試合はまだまだわからない。第9セクションは複雑な形状の岩が組み合わさった上り坂。タイミングよく岩の表面で加速していく必要があったが、ここで黒山選手が失敗。5点をとった。小川選手も田中選手も、ここをクリーンすれば黒山選手を逆転してトップに立つチャンスだ。
まず小川選手がトライする。クリーンするのは至難の業だが、田中善弘選手(ガスガス)、尾西和博選手(Honda)、成田匠選手(ヤマハ)、野崎史高選手(ヤマハ)と、3点でここを通過したライダーは多い。ただ、小川選手は3点では黒山選手を逆転できない。どうしてもクリーンが欲しいという思いで岩に向かった。しかしタイミングがとれず、岩につきささって失敗。黒山選手と同じく、5点となった。点差は変わらず3点。
そして田中選手。田中選手のマシンとそのライディングは、こういったシチュエーションを得意としている。見事、この難関を足つきなしで走破した初めてのライダーとなった。その先で1回の足つきをしてしまったものの、ここまでのトータルは4点。田中選手が、この日初めて試合のリードをとった。
さらに11セクションで黒山選手が1点。ここは小川選手、田中選手ともにきれいにクリーンして、田中選手、黒山選手、小川選手はそれぞれ2点ずつの点差を持って1位から3位に並んだ。しかしこれだけの点差では、まだ安心できない。
そして、田中選手の不運は12セクションだった。1回の足つきながらうまく抜けたかに思えたが、オブザーバーは5点の採点。残りわずか1メートルの時点で、1分のセクション持ち時間を使い果たしてしまっていた。1ラップ目は黒山選手が6点でトップ、2位に小川選手で8点、田中選手は9点で3位ということになった。
2ラップ目、スコアが動いたのはやはり第3セクション。1ラップ目は小川選手と田中選手が1点ずつ失点したが、2ラップ目は小川選手が3点。田中選手はここを1点。これで再び田中選手が2位に浮上した。しかし黒山選手はクリーンを続けていて、その差は5点に広がった。
黒山選手はさらに、1ラップ目に失敗した第7でもクリーンし、11セクションまでクリーンを続ける。小川選手はヒルクライムでやはり勢いが足りずに1回の足つき。さらに難関の第9セクションで再び失敗し、トータル減点は17。田中選手はこの両方をクリーンして、トータル10点。黒山選手に4点差と、勝利を狙える位置につけて、逆転のチャンスをうかがっている。
しかし田中選手の不運は、またもラップ終盤に待っていた。11セクションでわずかなミスから5点となってしまった田中選手は、さらに次の12セクションでは、ゲートマーカーに触ってしまい、これも5点。あっという間に10点の失点をして、優勝争いから大きく後退してしまった。そればかりか、小川選手にも逆転を許すことになって万事休した。
2ラップ目終了後、そのままスペシャルセクションの3セクションが始まる。高さのある大岩や巨大なタンクに駆け上がるなど、特にトライアル競技を初めて見るような観客には迫力満点のセクション群となっている。しかし上位陣にとってはその難セクションも物の数ではなく、小川選手がSS1で1点をついた以外はみなクリーンした。
結果、2位争いは田中選手20点に対して、19点の小川選手が2位となった。田中選手は終盤の2つの5点が惜しまれる結果だった。
黒山選手のチャンピオンシップポイントは、これで131点。小川選手は120点で、その差は11点となった。残るは最終戦SUGO大会のみなので、逆転タイトルは難しくなった。田中選手の獲得ポイントはこの時点で105点。こちらはすでに黒山選手とのポイント差が26点あり、タイトルの可能性はなくなっている。
2006年全日本選手権は、いよいよ10月29日、スポーツランドSUGOで最終戦を迎える。
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