前戦まで3連勝を挙げ、好調をキープする小川友幸選手(Honda)。今回勝って4連勝とすれば、チャンピオンシップを優位に進めることができる。そういう意味でも、小川選手にとってはこれまでの3戦以上に、今回は重要な一戦となる。
コンディションはすこぶる快調。小川選手には腰痛という長年の持病があるが、最近は体調維持にも努めていて、ライディングに影響が出るほどの症状までには至らず、レースにはまったく支障のない状態が続いている。加えてマシンのコンディションが、どんどんとよくなっている。小川選手には、勝ちパターンが備わってきていた。
しかし一方、4連勝への思いは、大きなプレッシャーとなって小川選手を襲った。決勝の朝の小川選手は、身体がかたかった。野崎史高選手(ヤマハ)と黒山健一選手(スコルパ)がクリーンした第1セクションで減点2点。直角にたった岩に飛びつくポイントだったが、必要以上に構えてしまった結果の減点だった。
この後、発射台がない、2メートル級の岩に飛びつくポイントのある第4セクションで1回足つきを喫した小川選手だったが、それでもこの時点では、いくつか細かいミスを犯した黒山選手と同点。次の第5セクションでは、黒山選手のフロントホイールに木の枝が刺さって進路を乱すというハプニングもあって、この日初めて1点差ながら試合をリードすることになった。
この日の勝負の焦点となった第6セクション。助走のない滑りやすい大岩を駆け上がっていくポイントで、小川選手はこの日初めての5点を喫する。1ラップ目のこのセクションをクリーンしたのは、黒山選手ただ一人だった。1点のリードは一気に解消されて、逆に黒山選手の4点リードを追う展開となった。
さらに追い討ちをかけるように、ヒルクライムの先に横たわる岩に飛びつく第9セクションで、小川選手はまたもこれを上れずに5点。ここでは黒山選手をはじめ、野崎選手、そしてこの日は出だしから5点を取って波に乗れなかった田中太一選手(Honda)もクリーンを叩き出した。小川選手の連勝は、ここにきて危うい状況となりはじめた。
1ラップ目、トップは黒山選手の4点(タイム減点を含むと6点)で、小川選手は5点が2つ多い14点。両者の間には、野崎選手が入り、小川選手の苦戦が続く。
2ラップ目、小川選手にさらに悪夢が襲いかかる。点差を縮めるには、なんとしてもクリーンを続けなければいけない。第4セクションの直角岩は、足をついてマシンを持ち上げれば確実性は上がるが、ここでクリーンを狙った小川選手は、足を出すことを拒んだ代償としてリアタイヤを滑らせて、後輪でゲートマーカーを跳ねてしまった。これで小川選手はさらに5点を追加した。
この後、さらに第6セクションでも1ラップ目と同じ状況で小川選手は5点。もっとも、このセクションは今回の難セクションのひとつで、黒山選手も2ラップ目には上りきれずに5点となった。
ここで調子の波に乗ったのが田中選手だった。滑りやすい斜め岩の上で、田中選手はグリップを確かめるように、グイグイと確実にマシンを前進させて上りきった。これは大きなアドバンテージとなり、田中選手のばん回が始まった。
2ラップ目が終わったところで、黒山選手は若干減点を増やしたもののトータル11点(タイム減点を含むと13点)。対して小川選手は31点となっていた。2ラップ目の時点で2位につけたのは田中選手で25点。さらに野崎選手が29点につけて、小川選手を上回った。
最後の3ラップ目、黒山選手は難関の第6セクションを、安全策をとったラインで2点で切り抜ける。小川選手も同じような安全策をとって1点。しかし田中選手は、ただ一人でクリーンを狙い、2ラップ目と同じく見事にクリーン。2ラップ目の第6セクションから調子づいた田中選手が、ゴールに向けてさらに気合の入った走りを見せた。
3ラップ目は、黒山選手の8点に対して、小川選手は5点、さらに田中選手は4点のベストスコアタイで10セクションを走り終えた。しかし黒山選手の独走を阻むまでは及ばず、田中選手は久々の2位表彰台を獲得、小川選手はなんとか野崎選手をかわして3位表彰台に滑り込んだ。
この試合前までに3点あった小川選手のシリーズポイントのビハインドは、これで8点に広がった。残りは2戦。小川選手がチャンピオンになるには、小川選手が2連勝し、黒山選手が3位以下になる必要がある。
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