北陸大会、近畿大会と2連勝した小川友幸選手(Honda)は、ここで勝利すれば3連勝となる。シーズン終盤を占う意味でも、北海道大会は注目すべき一戦となった。
小川選手は大会数日前の練習で首を痛めるというアクシデントに遭遇したが、大きなハンディとならないよう、対策をほどこして北海道へやってきた。マシンも、今年に入ってから小川選手のお気に入りの仕様が固まって、マッチングも急速に高まっている。
試合が始まると、まず第1セクションで最初のドラマが起こった。出口にそびえるとがった岩が、ライダーたちを苦しめる。最初にここを登ったのは、ルーキーの坂田匠太選手(ガスガス)だった。足を着きながらだったが、力強くセクションを走破。しかし、その後にトライした田中太一選手(Honda)、野崎史高選手(ヤマハ)らは、次々にこの岩から落ちていくことになった。
そんな中、美しいライディングフォームと、華麗なアクセルコントロールで、岩の凹凸にマシンを丁寧に合わせていった小川選手が、唯一ここをクリーン。最後にトライした黒山健一選手(スコルパ)もまた、岩の頂点からサイドに転落して5点。第1セクションにして、小川選手はライバルに5点のリードをとることに成功した。
小川選手は、その後も丁寧なライディングで、ひとつひとつセクションをクリーンしていき、まったく危なげない走りで、1ラップ目を進んでいく。第6セクションでは、一見簡単な土の斜面で足を出してしまった。
小川選手の独走を阻まなければいけない黒山選手だが、細かい足つきをいくつか喫したあと、第8セクションの泥沼からの上りで、再び上りきれずの5点となった。この時点では、黒山選手よりも野崎選手のほうが上位につけていた。野崎選手と小川選手の間には、9点差があった。野崎選手も黒山選手と同じマシンを駆るが、新潟大会よりのニューマシン投入で、マシンとのマッチングに腐心している最中である。
1ラップ目、小川選手が唯一5点となったのは、斜面を斜めに加速しながら岩をポンと越えてアウトする第9セクション。岩の高さはそれほどでもないが、テクニカルな加速とアクセルコントロールを要求するという点で、通好みのセクションだ。
ここは小川選手とともに野崎選手も5点となったため、1ラップ目を終えた時点では、小川選手に続く2位の座は黒山選手、そして3位に野崎選手となった。小川選手の減点数は6点で、アドバンテージは7点。2ラップ目以降もこの調子で走るとすれば、十分なアドバンテージともいえるが、わっさむのセクションは一つ間違えると簡単に5点になるところばかりで、まだまだ油断は禁物だ。事実、第9セクションで5点となった野崎選手は、ここから調子を崩して、2ラップ目の序盤にかけて、4連続で5点となってしまっている。
2ラップ目、1ラップ目に6位と低迷した田中太一選手が猛チャージ。1ラップ目の小川選手のように、次から次へとクリーンを叩き出す。2ラップ目の減点はわずかに3点。1ラップ目に31点をとった同じライダーとは思えない好ラップだ。
小川選手は2ラップ目も調子を崩さない。難セクションの第7セクションを、1回の足つきでクリアしたあとの第8セクション、川から大岩を越える最後のポイントで失敗するも、なんとか1点に抑えた。
2ラップ目の小川選手の減点は1点が2つで、合計2点。田中太一選手の3点をしのぐ好ラップ。黒山選手は2ラップ目を8点で回ったが、その点差はさらに開いて、13点となっていた。
そろそろ、ギャラリーの間では「今日は小川選手で決まった」とささやかれるようになっていたが、小川選手は最後まで、セクションの一つひとつに集中していく。北海道とはいえ、このエリアは暑さも厳しく、気温33℃。湿気がないので風が吹けば涼しいが、じりじりと照りつける太陽は、ときにライダーの集中力をも奪っていく。最後までコンセントレーションを保つのは、なかなか至難の技である。
3ラップ目、ようやく黒山選手が調子を上げてきた。しかし黒山選手が残るセクションをすべてクリーンしたとしても、小川選手が築いた13点のリードを吐き出すようなミスをしなければ、形勢は逆転しない。ひとつ、またひとつとクリーンをするたびに、小川選手の勝利は確実なものになっていく。
第8セクションの出口、2ラップ目に失敗のあったところで、小川選手が1点。しかしここを1点で抜けたことで、残る2つのセクションが5点の場合でも、小川選手の勝利が確定した。そんな中、残る2セクションも、小川選手はほどよい緊張に包まれてトライした。
最後のセクションをクリーンし、小川選手の3ラップ目の減点はわずかに1点。1ラップ目から3ラップ目まで、まさに文句なしの勝利だった。クリーン数25は黒山選手の20を大きく上回り、5点がたったひとつというのも、他を圧倒する記録だった。
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