新潟大会でRTL250Fを全日本初優勝に導いた小川友幸選手(Honda)は、4年ぶりの優勝で得た勝利の感覚を、さらに高い次元のトライアルにつなげようと猪名川にやってきた。
猪名川は近畿大会の顔となった会場だが、コースは沢に沿って設けられ、大きな岩もあり、コース移動もかなりの重労働だ。各セクションも、滑る山肌のところどころに待ちかまえる大岩を攻略するのに、多くの体力を消耗する。全日本の中でも、最もフィジカルに厳しいとされている会場でもある。
序盤、試合をリードしたのは、小川選手だった。全日本チャンピオンの黒山健一選手(スコルパ)を含めた全員が5点となった第3セクションで、小川選手は唯一3点。黒山選手は前戦の第3戦新潟大会から4ストロークのニューマシンに乗っている。このまま、小川選手が2連勝に向かって突き進むのではないかという予想が、会場を支配した。
しかし、小川選手とて簡単に勝利できるものではない。A級のみのセクションとなっている第6、第7セクションで連続5点となった小川選手に緊張が走る。それでも、第11セクションで1点をとってからは、その後のセクションをクリーンでまとめ、1ラップ目の総減点は16点。黒山選手に5点の差を奪い、好調の出だしとなった。一方、黒山選手は第9セクションのインの壁登りでまさかの失敗。イージーミスだったという黒山選手だが、この失敗の分だけ、小川選手がリードを奪った。
2ラップ目、小川選手は黒山選手に対してリードを守るが、鬼門の第6、第7セクションでは再び5点。黒山選手は第7セクションをクリーンで終えていたため、その差は縮められつつあった。しかし、マシンとのコンビネーションに悩む黒山選手からは、昨年、無敵だった印象が影をひそめている。小川選手と黒山選手、どちらがよりミスを削ることができるか。戦いは、セクションを消化するごとに接戦となっていった。2ラップ目、小川選手16点に対し黒山選手は14点。5点差が、3点差まで縮まった。
3ラップ目に入って、小川選手にミスが出た。序盤の4セクションで5点を含む13点を失ったのだ。この4セクション、黒山選手は9点にまとめ、ついに小川選手はここまで守ってきたトップの座を黒山選手に譲り渡してしまった。しかし最後になって、小川選手は第6セクションを3点、第7セクションでクリーンをたたき出し、再びトップに。このころから6時間ある持ち時間が残りわずかとなり、黒山選手も小川選手も戦況を細かに把握することなく、目の前のセクションを正確に走ることだけに全力を注いだ。黒山選手は、第7セクションで3点をとった以降はクリーンでまとめ、試合終了。一方の小川選手は、第9セクションで1点を出してゴールした。双方とも、2分ずつタイムオーバーを喫して、最終結果が出るのを待った。
結果は、わずか1点差で、小川選手の勝利だった。黒山選手が、どこか1カ所でも5点を3点で抑えていれば、試合の結果は変わっていた。小川選手にすれば、どこかであと2回足をついていたら、2連勝はならなかった。接近戦の末の勝利だった。
小川選手は、これで自身初の全日本2連勝を成し遂げた。いつ勝利してもおかしくないとされながら、なかなか勝利に恵まれなかった小川選手。2連勝の喜びをかみしめつつ、勝ち続けるリズムを学習しはじめた。シーズン制覇に向け、小川選手の2006年は本格的にスタートを切った。
1週間後の世界選手権日本大会をはさんで、次戦の第5戦北海道大会は8月6日に開催される。
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