10月16日、全日本トライアル選手権シリーズの第7戦中部大会が開催された。会場は愛知県岡崎市のキョウセイドライバーランド。この会場で全日本選手権が開催されるのは、16年ぶりのことだ。高低差のある斜面と大岩、岩盤が多数存在する恵まれた環境で、ダイナミックかつテクニカルな見応えあるセクションが作られた。競技は朝から好天に恵まれたが、前夜の雨でセクションはグリップが悪化していて、難易度を増していた。
競技は13セクションを持ち時間5時間で2ラップする。さらに国際A級スーパークラスに限り、2ラップ終了後に3つのセクションをトライする方法がとられた。SS(スペシャルステージ)と称するこの競技方式は、観客の競技の見やすさを狙ったもの。過去導入されていたことがあるが、久しぶりの試みだ。パドック近くの観戦しやすい場所に用意されたSSは、難度がきわめて高く、実に多くの観客がセクションのまわりに集中し、ライダーの果敢なトライに息をのんだ。
前戦第6戦で小川友幸選手(Honda)は、マシンコンディションが自分自身のベストマッチングに最も近づいたと語っていたが、今回の中部大会まで、さらに乗り込んできたという。今日の小川選手の走りは、時折のミスは見られたものの、随所に完成度の高さを見ることができた。
1ラップ目の小川選手は、第1、第2セクションとたて続けにクリーンで通過し、好スタートをきった。しかし、第3セクションをセクションインしてすぐのステアケースのポイントで、セクションカードの上を越えてしまい5点減点。続く第5セクションでもミスをして5点減点。競技が始まってすぐに、ややペースを乱してしまった。
小川選手が見事なクリーンを披露した第2セクションで、連勝中の黒山健一選手(ベータ)はベタ足の3点減点になってしまったが、その後はミスなくクリーンを出し続けた。その黒山選手に勝負を挑んだのは、野崎史高選手(スコルパ)。世界選手権の参戦から戻った野崎選手は、今年の開幕戦以来の参戦。小川選手をおさえた減点数で、セクションを回っていった。
トップ集団は慎重に下見をしてトライし続けていたが、国際A、国際B混走のセクションは予想外の渋滞が起こり、1ラップ目後半から競技は慌ただしくなってきた。特に、第9〜13セクションはほとんど下見をすることなくセクションインしていった。そんな慌ただしい中を、黒山選手と野崎選手は集中力を維持させ、共に1ラップ目を減点4で終えた。小川選手は1ラップ目を19点で終え、3番手につけた。
2ラップ目の小川選手は、1ラップ目にクリーンだった第2セクションで失敗してしまったが、それ以外にミスはなく、黒山選手と野崎選手との差を詰めていった。小川選手の2ラップ目のスコアは8点。しかし、波に乗った黒山選手は2ラップ目を減点1点でまわり、2ラップ終了時点で1ラップ目のタイムペナルティーを含めて7点。野崎選手は2ラップ目を6点でまわり、計15点となった。小川選手はこの時点で31点。残る3つのSSでばん回するチャンスはないが、3位を維持するにはここが勝負となる。
大観衆が見守るSSでは、全員が5点になっている1番目のセクションを小川選手だけが1点で通過。2番目のセクションは3点。3番目のセクションを1点で登りきり、大喝采を浴び続けた。SSで5点減点をとらなかったのは小川選手だけ。総合結果は、黒山選手が22点で優勝。27点の野崎選手が2位、小川選手は40点で3位となった。黒山選手は今大会の結果で、最終戦を前にシリーズチャンピオンが確定した。
前戦の北海道大会のランキングで、田中太一選手(ガスガス)と同点の2位に追いついた小川選手は、ここで田中選手を引き離し、ランキング単独2位に浮上。小川選手らしい走りが帰ってきた終盤戦であった。
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