前回の第2戦九州大会からおよそ2ヶ月半ぶりの全日本大会。その間にはツインリンクもてぎでの世界選手権「ウイダー日本グランプリ」があったものの、第3戦の新潟大会が昨年の地震の影響によって開催中止を決めたため、ややインターバルの長い開催日程となっている。
しかし今年からニューマシンを駆る小川友幸選手(Honda)にとって、インターバルが長くても休む間がない。ニューマシンを自分の好みの仕様、好みのセッティングとするため、精力的にテストに明け暮れてきた。そして仕様が新しくなれば、その新しい仕様に乗り慣れるため、また乗り込みの時間が必要だ。インターバルの時間は、あっという間にすぎた。
猪名川サーキットは、全体が大きな沢となっていて、大きな岩盤や滑りやすい斜面にセクションが設けられている。全日本の中でも、もっとも体力を消耗する会場のひとつだ。ただ、台風4号の接近と、前日までにまとまった雨が降ったこと、当日の天気予報も雨を予想するものが多かったため、セクション設定は危険度の少ない、やや容易なものとなっていた。もちろん、そうはいっても国際A級スーパークラスのセクションは、一瞬のミスがマシンの前進を止め、最大失点の5点となるものが多い。クリーンを狙いつつも、5点になるのは避けなければいけないという、二律背反の試合運びが要求されたのが、この日の近畿大会だった。
オープニングから第3セクションまで、小川選手はきれいにクリーンを重ねた。この時点で、ライバルは同じくクリーンを続けている黒山健一選手(ベータ)。第3セクションで1点をついた渋谷勲選手(ヤマハ)がこれに続いていた。ランキング2位の田中太一選手(ガスガス)は第3セクションで5点をとってしまい、これ以降優勝争いから後退した。
第4セクション、小川選手は大きな二段岩盤を登りそこねて5点。ここをクリーンしたのは黒山選手ただひとり。黒山選手の優位が、このあたりから試合を支配していった。ただ、その他のライバルがみな5点なので、2位争いは相変わらずし烈だ。
小川選手の誤算は、終盤第9セクションでの5点だった。水の中に玉石の浮く沢から土の斜面を登っていくポイントで、登りきれずマシンを止めてしまった小川選手は、このセクションを2点でまとめた渋谷選手と合計12点で同点に並ばれた。黒山選手はここを1点でまとめて合計6点。すでに黒山選手の優位は圧倒的となっていた。
このあと、最終12セクションまでに黒山選手は1点を追加し、さらに1分のタイムオーバーを含めて1ラップ目の減点は8点。小川選手と渋谷選手は10セクション以降をすべてクリーンにするが、第9セクション付近で国際B級の渋滞に巻き込まれた小川選手は、1ラップ目に3点(3分)のタイムオーバーを加算してしまった。渋谷選手に3点のリードを許し、4時間にわたる1ラップ目の攻防を終えている。
2ラップ目、1ラップ目の失敗を糧として、より正確なライディングを目指す各ライダー。ここで5点をひとつもとらずに、堅実に点数をまとめたのは黒山選手で、このラップは合計8点。これに肉薄したのが渋谷選手だった。渋谷選手は1ラップ目に5点となった第4セクションでまたも失敗してしまうものの、このラップを9点でまとめて、黒山選手に離されまいとトライを進めた。
小川選手は、渋谷選手を逆転して黒山選手に次ぐ2位の座は確保したいところだったが、このラップはミスが目立ち、第9セクションで5点、第11セクションで5点。2ラップを終えて、渋谷選手に11点差と、その差が開いてしまう苦しい展開となった。
3ラップ目、小川選手はここでもまだ減点を詰め切れない。クリーンを続けていた土の斜面の第1セクションや、がらがらの沢登りの第7セクションでも3点、さらに2ラップ目にはクリーンしていた第4セクションでもまた登りきれず5点をとってしまい、3ラップ目が終わってみれば、渋谷選手との点差は14点差。結果3位に終わった。
次回、第5戦中国大会は広島県鹿野町のHIROスポーツランドにて、真夏の8月7日に開催される。
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