ニューマシンでのデビュー戦を6位で終えた小川友幸(Honda)は、2週間の乗り込み期間を経て、2005年全日本トライアル選手権第2戦・九州大会に臨んだ。これを雪辱戦としなければいけない小川は、前回の成績により、ライバルより少し早いスタート時間を与えられると、そのままライバルに先がけてセクショントライを開始する。
自分より早くスタートしたライダーよりも早く第1セクションにトライしてクリーンした小川は、続く第2、第3、第4セクションと、次々にクリーンしていく。一気に第5セクションまでクリーンを続けた小川の減点は0。ここまでのライバルの減点を見てみると、前回優勝の黒山健一(ベータ)は3点。黒山は、第1で1点、第2で2点と、細かい減点を加えていた。田中太一(ガスガス)は3点と5点を合わせて8点、渋谷勲(ヤマハ)は5点ふたつと1点ふたつで12点。序盤戦の小川は、ライバルより圧倒的に優位に立っていた。
ひとつには、朝からぽつりぽつりと降っていた雨が、時間の経過とともに徐々に雨足を強めていて、セクションのコンディションが悪化していた。小川は誰より先にトライしたことで、コンディションの良好な状態でセクショントライをすることができたのだ。
沢沿いの斜面に設けられた第6セクション、小川がわずかなミスで1点の減点。しかしこれでも、小川はリードを守っていた。ところで次の第7セクションのヒルクライムセクション。ここで先行が裏目に出てしまった。誰のわだちもないヒルクライムは、とてもクリーンが狙えるようなものではなかった。そして小川は、クリーンを失っただけでなく、ここでこの日初めて、5点を喫してしまった。クリーンの山を築いていた小川の緊張感に、ここでわずかに狂いを生じた。
次の第8セクション。河原の大岩をつないで設けられたこのセクションで、小川にさらに不運が襲った。マインダーが告げる残り時間がよく聞き取れず、残り時間が少ないのだと思い込んでしまった小川は、最後のポイントをやや性急にトライ。ここを登りきれずに5点となってしまった。さらに第9セクションでも1点を加えた小川は、キャンプ場の散歩道を利用して作られた最終第10セクションの大タイヤでも5点となり、なんと序盤が好調だったにも関わらず、1ラップ目を減点17。3位で折り返すことになった。渋谷、小川、田中の3人が減点17で同点。黒山は序盤の小さなミスをすっかり取り戻して、1ランプ目の減点はたった4点。追い上げて優勝を目指しつつ、熾烈な2位争いに勝利するのが、小川の使命となった。
与えられた試合の持ち時間は5時間。1ラップ目の持ち時間は3時間半だったので、残り2ラップは45分ずつで回らなければならない。トップライダーの多くは、2ラップ目に1時間を使って、3ラップ目は10セクションを30分で駆け回るというあわただしい試合展開を見せた。
2ラップ目、田中が18点とわずかに減点を増やしたが、小川と渋谷は17点、1ラップ目と変わらず、2位争いは小川と渋谷のふたりで争われたかに見えた。しかしこのラップ、小川は第4セクションで大岩を登りそこね、立ち木とマシンの間にひじを挟み、左腕に大きな違和感を感じたまま、残りのセクションを消化することになった。左手には、力が入れられない。第1戦に続いて、再び小川は苦しみのトライを強いられることになった。
雨はさらに強くなって、コンディションは悪化した。わだちが深くなって、容易に走破できたポイントも難易度を増している。そんな中、3ラップ目、渋谷が大きく崩れた。第1から第3まですべて5点。これで、小川の2位争いは、一気に優位となったかに思えた。小川はこのラップ、減点を15点に減らして帰ってくる。左ひじの負傷を考えると、善戦したといってよかった。
ところが伏兵がいた。田中がこのラップを11点で終了、トータルで小川を3点上回って、2ラップ目までの4位から、一気に2位に浮上。結局、小川は3位となった。第1戦の雪辱は果たし、今後さらにニューマシンとの慣熟を進め、より上位獲得を狙う。
次回、第3戦新潟大会は地震の影響で準備に支障があり中止。第4戦近畿大会は、世界選手権日本大会をはさんで開催される。衝撃のデビューを果たしたもてぎを走ることで、全日本中盤戦に向けてのよい刺激が与えられることだろう。
|