決勝日:10月24日(日) 会場:宮城県柴田郡・スポーツランドSUGO 観客数:1100人 天候:晴れ 気温:21度
全日本トライアル選手権は第8戦東北大会で、今シーズンのラストラウンドとなる。見どころは、前戦中部大会でシリーズチャンピオンに確定した黒山健一(ベータ)と、ランキング2位をキープし続けてきた小川友幸(Honda)の高次元のテクニック争い。そして世界選手権シリーズ参戦から帰国し、前戦中部大会がシーズン初参加だった野崎史高(スコルパ)の3人が優勝争いにどう絡んでくるかに集まった。天気に恵まれたスポーツランドSUGOには、10セクションが設営され、シーズン最後の全日本選手権が行われた。
今回のセクションは、比較的難易度は低めの設定だった。とはいえ、スーパークラスのセクションは国際B、Aクラスと比較すると格段に難度が上がっている。中でも湿った斜面に大岩が点在する第3セクションや第9、第10セクションは、トップクラスでも一瞬のミスで失敗になるハイテクニックが要求されるものだった。全日本クラスのセクションは、どこもオートバイが走れるとは思えない厳しい地形ばかり。ライダーはこれに果敢に挑んでいく。
急斜面に設定された第1、第2セクションは全体の中では易しめといえる。しかし、ちょっとしたミスをすると、5点のフルペナルティになる可能性があるものだった。スタート順が早めの野崎が第1、第2と早めにトライをして美しくクリーンして行く。そして黒山、小川らがトライするが、黒山が第2セクションのテープを切断してしまい思わぬ5点減点。簡単なセクションだけに、このミスは痛手だった。黒山はこの5点で、以後の競技展開に大きな乱れを生じてしまった。小川は独特の美しいフォームで難なくクリーンで通過する。
難セクションの第3は、湿った沢から急斜面に配置された大岩を越えてゆく。このセクションがひとつの勝負所だった。難セクションにライダー達は時間をかけ慎重に下見するが、短い下見でトライしたのは野崎。これが見事なクリーンだった。トライアルでは他選手の走りを見て参考にするのも作戦のひとつだが、野崎は自分のイメージでクリーンをたたき出した。
これに続かんとする後続だが、小川を始め、ことごとく大岩からたたき落ちてしまった。後半の追い上げに期待しながらも、この日の野崎の好調ぶりが、このあたりでライバルの深刻な脅威となって見えた。
小川は、最終セクションの岩盤登りにも失敗したが、1ラップ目の減点はトータルで10点。オールクリーンの野崎、9点の田中太一(ガスガス)に続いての3位。すでにチャンピオンを決めた黒山が11点で続いている。野崎の好調は誰の目にも明らかだが、2位争いはし烈だった。野崎もこの集中力がとぎれ、好調が崩れ去ることもある。その期を逃さずトップに出るには、1点の減点も許さずに、残るセクションを駆け抜けなければならない。
しかし2ラップ目以降も、この日の野崎は崩れなかった。さすがにオールクリーンはしないものの、2ラップに5点がひとつと1点がひとつ、3ラップに5点がひとつ。それがすべての減点だった。
対して小川は、第3セクションを3回とも登れずに5点となってしまった。ライディングのうえでは、ほんのわずかな失敗だが、このセクションではそれが致命的な失敗となり、さらにこの日の試合展開では、全部で4つの5点は、ライバルに対して取り返しのつかないビハインドとなってしまった。
勝利は、最後まで集中力を維持した野崎。野崎はこれが初優勝となった。2位は、序盤のつまづきから追い上げてきたチャンピオン黒山。3位に田中が入り、4位が渋谷勲(ヤマハ)。小川は渋谷にわずか1点差ながら、5位のポジションに甘んじることになった。シリーズランキングでは、黒山に続く2位をキープして、2004年の全日本選手権を終了した。 |