決勝日:10月10日(日) 会場:岐阜県揖斐郡坂内村・坂内バイクランド 観客数:1500人 天候:くもり、時々晴れ 気温:27度
10月9日(土)に上陸した台風22号の影響が心配された10日(日)開催の全日本トライアル選手権中部大会。大会前日の土曜日には多少の雨はあったが、当日の競技中に雨はなかった。会場バイクランド坂内は河川敷を利用した施設だが、増水もなくスムーズに競技は運営された。
小川友幸(Honda)は、2週間前にスペインのコルドバで開催された国別対抗の「トライアル・デ・ナシオン」に出場し、2004年世界チャンピオンを獲得している藤波貴久(Repsol Montesa HRC)らと共に闘い、日本の3位入賞を遂げ帰国したばかりである。デ・ナシオンにおいてトライアル強国スペイン、イギリスなどとし烈な戦いをした直後の小川の果敢なトライに、観客達は熱い声援を送り続けた。
世界選手権参戦から帰国した野崎史高(スコルパ)が今シーズン全日本選手権初参加となった。野崎は2004シーズンに世界ランキング12位を獲得している。世界の場で活躍している野崎が、全日本のリザルトにどう絡んでくるかも、見どころのひとつだ。
今回の設定は15セクション。持ち時間は5時間30分で2ラップする。ほとんどのセクションは高低差があり、長めの設定である。難度が高く見応えも充分。国際A級スーパークラスのハイレベルな闘いを最後まで見届けるべく、多くの観客が1周約4キロのコースをトップライダーと共に移動していった。
第1、第2セクションは、手始めに比較的容易な設定のものだった。トップライダー達はほとんどここをクリーンで抜けるが、渋谷勲(ヤマハ)がセクションカードに触れたとして5点減点となった。渋谷は今シーズン何度も優勝争いに絡み、今大会も注目されていただけに、この朝一番の失敗は大きい。
第2セクションでは小川が1点のミスをするが、その後第7セクションまでは美しくクリーンを続ける。特に今日の小川はキレのあるライディングを続けていてた。しなやかなリカバリーのアクション、後輪をグリップさせるタイミング、そしてスピード感。恐らく今シーズンの中で最も冴えた小川を見ることができたのではないだろうか。好調の小川は、第8セクション内で時間オーバーで5点減点になった影響はあるが、最終セクションを1点でアウトするパフォーマンスを見せ、1ラップを合計15点で消化した。
連勝中の黒山健一(ベータ)は、1ラップ目の第10セクションまでクリーンを続けていた。小川も乗れていたが、黒山もまた、今年の全日本で最も好調なライディングをしていたようだ。黒山は今大会最も難しいと言われる第11セクションをあわやクリーンの1点で通過し、これまた難度の高い最終第15セクションを2点で通過。黒山の1ラップ目の減点はわずか3点だった。
今シーズン全日本初参戦の野崎も、1ラップ目の前半はクリーンを続けていた。しかし第11と、第15セクションで5点になり、1ラップ目は合計12点である。
したがって、1ラップ目のトップは3点の黒山健一、2番手は12点の野崎史高、そして3番手は15点の小川友幸と続く。ちょっと差が開いて4番手は23点の田中太一(ガスガス)。朝一番の第1セクションで5点をとってしまった渋谷勲は24点である。
1ラップ目の成績に多少の開きはあるが、トップ3の駆け引きは、まだまだ行方がわからない。黒山も好調だが、絶好調の今日の小川は波に乗っている。
2ラップ目の第2セクションでは再び小川が1点のミス。続く第3でも1点のミス。対する黒山はミスなくクリーンを続けているが、今日の小川はまったくプレッシャーに負けることがなかった。その後の小川の追い上げは凄まじかった。最強セクション第11でクリーンを達成し、さらに第15最終セクションもクリーンしてしまった。第11、15共に今日クリーンで抜けたのは小川ただひとりだけ。小川の高度なパフォーマンスに大歓声はなりやまない。
黒山は最終セクションで5点になり、2ラップ目は計8点。総減点11点で優勝を決める。小川は2ラップ目を3点でまとめ黒山に迫ったが総減点18点で2位へ。3位は総合計22点の野崎史高となった。
勝利した黒山健一は、残る最終戦を前に、今シーズンのチャンピオンを決定している。黒山のチャンピオン獲得は今年で5度目。過去に山本昌也(Honda)、藤波貴久(Honda)が5度の全日本チャンピオン記録を残しているが、黒山がその記録に並ぶことになった。
次戦は10月24日、宮城県スポーツランドSUGOでの東北大会が第8戦・最終戦となる。 |