決勝日:3月28日(日) 会場:熊本県鹿本郡菊鹿町矢谷・矢谷渓谷トライアル場(特設) 観客数:1870人
2004年シーズン第2戦は、例年同様九州大会がスケジュールに組み込まれた。ただし会場は3年ぶりに矢谷渓谷が選ばれた。地形を存分に生かしたこの会場は、トライアルらしい"自然への挑戦"が見もの。山間のハイキングを楽しみながらトライアル観戦というギャラリーに囲まれて、選手たちは熱い戦いを繰り広げた。
HRCクラブミタニ所属、小川友幸(Honda)は、試合直前の木曜日になって、腰を痛めてしまった。金曜日を安静に過ごし、運ばれるようにして会場入りした小川は、土曜日にライバルたちが練習に精を出すのを横目に、じっと安静にして、少しでも症状が回復するのを待った。しかしコンディションに劇的な改善は見られぬままに試合は開始。下見をする小川は、歩くのにも最大限の注意を払っているのがわかる。
序盤の小川は、第1セクションで1点、さらに第2セクションで5点を喫してしまい、やはり体の調子が問題となっているのかと思われたが、試合の滑り出しで失点するのは小川には良くあること。その後、やや調子を立て直し、ライバルに戦いを挑んでいく。第1戦関東大会では、勝利を狙える戦況から一気に4位へ転落したこともあり、今回は起死回生の1戦だったのだが、1ラップ目の成績は4位。今回は4位でも十分で完走できるかどうかが心配、と言うのが小川を見守る周囲の一致した見方だった。
2ラップ目も、小川は1ラップ目より減点を1つ増やして、かろうじて4位をキープするにとどまった。5位の小川毅士(Honda)には25点近いアドバンテージがあるが、3位の渋谷勲(ヤマハ)には8点差をつけられている。なんとか完走はさせたいというのが、周囲の願いになった。
3ラップ目に入ったが、1ラップ目に1点、2ラップ目に2点の減点を喫していた第1セクションで3点を失い、この日の小川は終盤になっても復調のきざしをつかめない。ところがこの後、小川は最後のひとふんばりを見せる。第2、7、8セクションで1点ずつ減点し、合わせて6点減点しただけで、3ラップ目をまとめたのだ。1ラップで6点の減点は、優勝した田中太一(ガスガス)をのぞけば、黒山健一(ベータ)が2ラップ目に出しているだけだった。
小川の3ラップ目の頑張りは、確実に結果を残した。渋谷が3ラップ目に減点を増やしたこともあって、5点差をつけて、小川が表彰台の一角に登ることになったのだ。今回は、打倒黒山を田中太一に持って行かれた形だが、黒山も田中も、かつては小川とチームメイトだった。プライベートの仲は良いのだが、勝負の場でのライバル心はまた別もの。次回こそ、打倒黒山を自らの手で勝ち取るべく決意を残して、小川は苦しかった九州大会の会場を後にした。次戦は5月9日、関東新潟大会となる。
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