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第8戦
東北大会(宮城)
2003年10月26日 開催
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レースレポート

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観客は藤波の一挙手一投足を見守った
藤波はクリーンを連発し、優勝を果たした
5位になった小川。年間ランキング2位を確保

藤波貴久が接戦を制して貫禄を示す

■決勝日時 :10月26日(日)
■観客数 :1100人 
世界ランキング2位の藤波が、今年初めての全日本参戦
世界ランキング2位の藤波が、今年初めての全日本参戦

 前回第7戦中部大会で、黒山健一(BETA)が2年連続の全日本チャンピオンを決めて、いよいよシリーズも最終戦を迎えた。 今回は、世界選手権に専念するために日本を離れていた藤波貴久(Honda)が帰国、今シーズン初めて全日本選手権に参戦することとなった。 今年、藤波が日本でトライアル大会を走るのは、世界選手権日本大会に続いて2度目。会場には、久しぶりの藤波の走りを見ようとするファンがつめかけ、今シーズンのチャンピオン黒山との勝負を見届けるべく、トップ選手の一挙手一投足を見守った。

 第1セクションは、ほとんどがクリーンする設定だった。いわば肩慣らしといったところ。第2セクションも、大方のトップライダーがクリーンした後、本格的な勝負は第3セクションから始まった。

 小川友幸(HRCクラブミタニ)が岩から岩への飛びうつりに失敗して、5点減点となり、渋谷勲(Yamaha)、野崎史高(SCORPA)がそれぞれ1点をついたあと、藤波のトライとなった。ここで藤波は足をついてしまい、彼らしくもない1点減点を喫してしまった。

 実は藤波は、朝のウォーミングアップでヒルクライムに挑戦、失敗してマシンともどもからみあって転落するアクシデントに見舞われていた。このとき、藤波はマシンとヘルメットの間に左手をはさみ、手のひらが腫れ上がって人差し指が動かないという緊急事態に見舞われていた。左手人差し指は、全てのクラッチ操作を担当する大事な指。この指が動かなくては、トライアルはできない。第1、2セクションでは、動かない指をなんとかごまかしてクリーンしたものの、第3セクションでは、心配していたことが現実になった。クラッチを瞬間的につないで加速するところで、指が思ったように動かない。足をついて軌道修正するしか方法がなかった藤波は、ここで減点1を献上することになったのだ。

 一方、黒山、田中太一(GAS GAS)はここをクリーンして、藤波は追う立場となった。そして第4セクション。オーバーハングの岩登りが難所のここでは、ほとんどのライダーが失敗して5点となっている。田中が2回足つきで辛くも通り抜けた後、藤波と黒山だけが残された。ここで藤波は、黒山のトライを待つ作戦に出る。今日の10セクションの中で、このセクションが一番の難セクションと考えた藤波は、どの方向から岩を攻めたらいいのか、最終判断を黒山の走りから盗もうとしたのだった。

 ところが藤波には、ゴール時間のハンディがあった。今シーズン、一度も全日本選手権に参戦していない藤波は、ランキング順でのスタートが最も早い。ゴールしなければいけない時間は、黒山との間に9分間のギャップがあった。黒山が持ち時間ぎりぎりにゴールして、藤波が黒山と同じ時間にゴールしたとすれば、藤波には9分間分のタイムペナルティがついてくることになる。それだけで9点となり、少ない減点数の勝負になれば、この減点は致命的だ。

 それでもなお、藤波は黒山を待った。藤波にとって、ここが勝負所だった。黒山は、セクションに入ってからラインを変更して1点。それを見て自分の行き方を決めた藤波は、しかし同じく1点の減点。2対1で、1ラップ目の後半戦へと突入した。好調だった田中は、ラップ後半で減点を加えて、優勝争いからやや遠ざかり、勝負は完全に藤波対黒山に絞られてきた。

 第9セクションで、黒山が1点を喫した。これで藤波と同点。まさに1点を争う攻防、そして迎えた最終セクション。全日本では、1ラップ目の持ち時間が3時間半という規則がある。黒山を牽制して試合を進めていた藤波は、制限時間ぎりぎりに10セクションに入った。ここで時間のなさからの焦りか、藤波はヒルクライムの頂上で失速。なんと一気に5点減点で、苦境に立たされる。これを見てトライした黒山は、手堅く1点でここを走破し、その差、4点となった。

 2ラップ目、黒山は第2、4セクションと1回ずつ足をついて、藤波との点差は2点となる。藤波は、このラップをすべてクリーンという走りっぷりを見せていた。指はあいかわらず動かないが、上手にごまかしながら走り続ける。藤波の実力をもってすれば、この日のセクションは全部クリーンして当然といっていいだろう。さらに、1ラップ目に藤波が落ちた最終セクションで、今度は黒山が失敗。首位は逆転して、藤波は3点のリードを奪うことになった。

 しかしドラマはこれで終わったわけではない。2ラップ目に入った第3セクション、藤波が出口でちょっとしたミスを喫す。ずり落ちようとするマシンを引きずり出すのに、3点の減点をとられ、再び黒山が同点に追いついた。次の第4セクションで、藤波は再び1点減点。これでトップは、三度黒山のものとなった。このまま両者クリーン合戦が続いて迎えた最終セクション。藤波は最後のセクションもクリーンして、残り時間3分前にゴールした。

 黒山のゴール時間は、これに遅れること12分。黒山のトライに注目する藤波陣営。黒山は、残り時間2分を切ったころ最終セクションに入った。最後の登りを豪快にクリアしたかにみえたが、やや谷よりに進路をとってしまった黒山は、ここで足をついて進路を修正した。これが黒山痛恨のミスとなった。実は黒山は計算間違いをしていたのだ。黒山の計算では、ここで足をついても藤波に勝利することになっていた。無理してクリーンで出ようとして時間がなくなるのを、黒山は恐れたのだ。

 結果、両者の減点は11点。同点の場合は、クリーン数の勝負となる。藤波のクリーン数は25。黒山は23。これで、藤波の最終戦勝利が決まった。

 2人にとってはクリーン合戦の勝負だったが、3位の田中は減点28。ランキング2位の小川は、野崎にも後塵を拝して、5位という結果に終わっている。


●藤波貴久(優勝)
「世界選手権に専念していたので、久々の全日本となりましたが、今回は絶対に勝たなければいけない試合でした。結果は優勝できましたけど、内容的には、けっしてほめられるものではありません。スタート順が誰よりも早くて、黒山選手と同じペースがとれなかったことや、朝の転倒による手の不具合もあったかもしれませんが、言い訳にはならないと思います。手のケガはそんなにひどいことはないとは思いますが、明日レントゲンをとりに行きます。今年は、このあとまたヨーロッパに戻って、インドアトライアルのシリーズに参戦します。また、次のシーズンも、応援よろしくお願いします」

 
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