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見応えある高難度のセクションを行く小川 |
2003年全日本選手権第2戦九州大会。開催地の猿ヶ城キャンプ場は、山深い谷あいに位置する。セクションは大小の岩がゴロゴロする河原に4つ、岩が点在する池に2つ、そして山肌の急斜面に4つの計10個が設営された。参加ライダーは国際A級、B級合わせ計78名。最上級の国際A級スーパークラスは8名によって競われた。
開幕戦で2位となり、シリーズタイトル獲得に向けて巻き返しを図りたいHRCクラブミタニ所属の小川友幸は、前戦の腰の痛みもほぼ解消し今回にかける。しかし、世界選手権のトップランカーである強豪の黒山健一(BETA)をはじめとして、初勝利に向けて張り切る渋谷勲(ヤマハ)や田中太一(ガスガス)など、手ごわいライバルも健在だ。
今回も小川と黒山は、互いに相手の出方を探りながらトライにかかる。このふたりに先駆けてトライに入ったのが渋谷。渋谷は前回同様、今回も快調にクリーンを重ね、序盤戦をリードする。
小川は第1セクションで1点、第2セクションで2点減点と、不本意な出だし。一方、渋谷も第5セクションでイージーミスを起こして3点減点となる。また、黒山も第3セクションの大岩を登りそこねて5点減点。そんななか、序盤に快調だったのが、第2セクションの1点減点のみの田中太一。しかし小川も第3セクション以降クリーンを連発。田中が1ラップ目の最終セクションで3点減点を喫すると、1点差ではあるが、小川が1ラップ目のトップに躍り出た。
しかし、2ラップ目に黒山の快進撃が始まった。難関の第7セクションで1点をとったほかは、すべてクリーン。これで黒山はこの日初めてのトップに立った。小川に不運が襲ったのは、2ラップ目の後半のこと。全10セクションのなかでも比較的簡単な第9、第10のふたつで5点減点を喫してしまったのだ。2ラップ目に入って、ライバルたちが減点を少なくしているなかで、この10点減点は優勝を狙うためには致命的な痛手となってしまった。
終わってみれば、タイムオーバー覚悟で最終セクションをじっくりトライし、タイムペナルティ1点を献上した黒山が、2位に4点の差をつけて優勝を遂げた。黒山は上位陣4人のなかで、唯一3つの失敗5点を計上していたが、クリーン数は誰よりも多く、この結果につながったのだ。2位は、田中と渋谷が同点で争うことになった。ライバルの減点数を把握していないまま、神経を擦り減らしながらトライを続けた結果、減点数は同一でクリーン数の差によって、田中の2位が決定した。
小川は2位のふたりと同じく、5点減点は2つしかないものの、これがクリーンセクションのものだったことが不運であった。優勝した黒山の減点数が20点というこの日の難易度からすると、2位と8点差はきん差とはいえないものだった。しかしこのふたつの5点は、ミスとはいえライディング自体の失敗ではないので、本人の自信も揺らがないだろう。これでランキング争いでは、2連勝の黒山が一歩リード。しかしシーズンは始まったばかりで、小川のこれからの反撃に注目だ。次戦、第3戦は、ゴールデンウィークの5月4日、新潟県新潟市東方の、大日ヶ原トライアル場で開催される。
●小川友幸(4位)
「今日は、よくなかったですね。走り自体がそんなに悪かったという感じではないのですが、2ラップ目の後半に2つの5点をとってしまったのが痛かった。テープに触れて、テープを切ってしまったのと、エンジンが突然止まったという5点なので残念です。これがなければ、上位にもそん色ない結果だっただけに、今日は悔しい1日となりました。次の新潟までに、原因と対策を徹底的に追求していきます」 |