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SPOTLIGHT ON THE FIGHTERS

山口辰也選手(やまぐちたつや)


なんとしても勝ちたい
自分のためにではなく、チームのために
僕に続く若手たちのために


4サイクルのリッターエンジン(1000cc未満)で、最高速300kmにも到達しようかという驚異のスピードを叩き出す国内最高峰のクラスがJSB1000だ。MotoGPと人気を二分するヨーロッパのスーパーバイク世界選手権も同じリッターエンジンだが、JSB1000は8時間耐久レースへの参戦を意識したレギュレーション(改造規定)で、日本固有の進化を遂げている。山口辰也(TOHO Racing With MORIWAKI)のほか高橋巧(MuSASHi RT HARC-PRO)、浦本修充(MuSASHi RT HARC-PRO)、ジョシュ・フック(F.C.C TSR Honda)、秋吉耕佑(au & teluru・Kohara RT)、渡辺一馬(au & teluru・Kohara RT)など、Honda CBR1000RRを駆る10名以上がレギュラーライダーとしてエントリー。国内外のメーカー車両がエントリーする中で、最大勢力を誇っている。

■トップチームの壁は大きいけれど、背中は見えている

現実的な目標として、優勝という言葉を口にするのは難しいですが、Honda勢の中でトップに立ちたいと考えています。つまり、僕自身がチーム運営の目標としているMuSASHi RT HARC-PROの2台よりも前でチェッカーを受けるということです。まずはその目標に向けて、チーム一丸となって取り組んでいます。届かない夢ではありません。昨シーズンから今シーズンにかけて、何度か高橋巧選手に並んだり、前に出ることもありました。背中に手が届くところまでは来ているのです。後わずかなんですけどね。チームのがんばりはサポートという形で成果を出しています。例えばブレーキやサスペンションなど、専属スタッフの方が一年を通してチームに帯同していただき、しっかりしたサポート体制を取ってくださっています。うれしいと同時に期待の大きさを感じ、心地よいプレッシャーになっています。あとはエンジンや車体など、基本的な部分をサポートしてもらえるよう望んでいます。

■チームからMotoGPに行けるようなライダーを輩出したい

チームとしてはようやく5年目。歴史あるHonda勢のトップチームには及びませんが、それでも着実に階段を上がっています。昨年度は全日本ロードレース選手権に複数台がエントリーし、チームのメンバーも増えました。すでに若手の中には、地方戦やエリア戦にエントリーして表彰台を獲得するなど、相応の成績を残す者もいます。“TOHOブランド”が少しずつ浸透してきているのかな、と感じています。この流れを大きなうねりにするためにも、まず僕が勝つことが大切なんです。そうすることで、メディアをはじめ、レース関係者の注目度が高まり、レース体制がどんどんよくなってくると考えています。相乗効果ですね。僕が現役のうちには難しいかもしれないですが、最終的にはMuSASHi RT HARC-PROのような実力と体制を整えて、世界に出ていくようなライダーを育てるのが僕のミッションだと考えています。辛抱強く僕のレース活動を支えてくださったチームオーナーの福間(勇二)社長への恩返しのためにもね。

■継承すべきものはレース以外にもある

自分で言うのも変ですが、ここ数年、ライディングテクニックは向上していると感じています。一般的には力が落ちてもおかしくない年齢なのですが、うまくなっています。サーキットを使った走行テストやトレーニングの頻度が極端に少なくなっている分を、僕はオフロードやトライアルのトレーニングを取り入れることでカバーしています。チームのメンバーをはじめ、資金的に厳しいプライベータ―やスキルアップを考えているライダーに勧めています。また小排気量マシンでのトレーニングを含め、スキルアッププログラムを作って、ビギナーからでも確実にステップアップできるライディングスクールを開催。チーム体制に加えて、TOHO Racing Clubのクラブ員にも、トレーニングノウハウを継承していきたいと地道に取り組んでいます。

■表彰台が見える場所に食い下がり、意地を見せます

後半戦最初のレースとなった第6戦オートポリスでは、ノックアウトQ1でブレーキ系統にマイナートラブルが見つかり、トップグループに割って入ることができませんでした。セッション中に修復できる内容でもなかったので、そのままQ2へ。それでも高橋選手とのギャップは、わずかコンマ1秒程度と、存在感をアピールできたと自負しています。決勝レースでは、柳川明選手(スズキ)をパスするのに必要以上の周回数を使ってしまい、セカンドグループの前に出たときにはレース終盤。ベストを尽くして最後までプッシュしましたが、さすがにそこからの逆転はできませんでした。また、世界へのチャレンジもまだあきらめていませんよ。自分のためだけでなく、チームや後輩たちのためにもね。残るレースは岡山国際サーキットと鈴鹿サーキットでの2戦。表彰台が見えるポジションに食い下がって、意地を見せたいですね。

山口辰也 山口辰也 山口辰也 山口辰也 山口辰也 山口辰也