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team HRC現場レポート

開幕戦のツインリンクもてぎ大会から2週間。惜しくも開幕2レースを2位/2位で終えた高橋巧が、その悔しさを晴らすべく、第2戦の鈴鹿2&4では絶好調。圧巻のダブルウインを飾り、ランキングもトップに立った。

高橋巧

Vol.13

帰ってきた「あのころ」のHRC
高橋巧 圧巻のダブルウイン!

2週間前の全日本ロードレース開幕戦。ここで、Team HRCのエース高橋巧は、ライバルである中須賀克行選手(ヤマハ)に敗れ去った。開幕戦の2レースで、中須賀選手との差は0秒829と0秒113――僅差ではあるが、見方によっては届きそうで届かない、高い壁のようにも感じられた。

それでも高橋は、第2戦・鈴鹿2&4大会で見違える走りをみせる。レースを前にした事前テストで、すでに自己ベストを更新するタイムで走り始め、そのタイムの出し方もこれまでのものとは違っていた。


高橋巧
高橋巧

宇川徹 Team HRC監督(以下、宇川)
「(高橋)巧は事前テストからノリに乗ってましたね。いつも通り、黙々とテスト項目をこなしました。コースインしてすぐに全力で走ってくる。そこでバイクやセッティングの良し悪しを見て、そのままロングランに入るんです。どんなに速いマシン、速いライダーだって、1周だけ速いのはダメ。20周のレースなら20周ずっと速いペースを維持する、これがレースシミュレーション。今年の巧は、それが今まで以上にできています」


宇川徹 Team HRC監督
宇川徹 Team HRC監督

事実、高橋はこの事前テストで、自己ベストタイム2分4秒945を更新し、さらに2分4秒台で20周近くをこなしてみせた。言うまでもなく、鈴鹿2&4の決勝レース周回数、レース1の14周、レース2の18周を想定したレースシミュレーションだ。

レースウイークに入り、金曜の事前練習。高橋はここでもトップタイムをマークし、走行1回目にはなんと、自己ベストをさらに更新した2分4秒391をマーク。総合2番手以下に、なんと1秒以上の差をつけたトップタイムだった。

高橋はその勢いのまま土曜の公式予選へ。Bグループに属していた高橋は、先に走行したAグループのライダーのタイムを見て一つの決意をする。


高橋巧
高橋巧

高橋巧(以下、高橋)
「今回は4輪と同じコースを走ることで、特に4輪の走行後は路面のコンディションがあまりよくないのですが、Aグループのタイムを見ると『さほど悪くなさそうだな』って。『これは3秒台に入るかもしれない』って思いました」

鈴鹿サーキットでのJSBマシンでは、もちろん2分3秒など前人未到のタイム。昨年の最終戦、つまりマシンが熟成されつくした状態で出した自己ベストから約1秒も更新しなければ3秒台など入らない。けれど高橋は、そこに確たる自信があったのだ。

その自信を表すように、高橋はBグループ走行枠でまっさきにコースインすると、ピットアウトした次の周、つまり計測1周目に2分4秒台前半をマークし、2周目にとうとう2分3秒874という途方もないタイムを叩き出す! それまでの自己ベストを、なんと1秒以上も縮めてみせた。もちろん、鈴鹿サーキットのニューコースレコード。このタイムが場内放送にのると、サーキット中が一瞬ざわめいた。


高橋巧
高橋巧

高橋
「『よし、3秒台に入った!』と思いましたが、『このままもう1周、セカンドベストも3秒台に入れたい』と思ってアタックを続けました。それくらいフィーリングもよかったし、路面状況も悪くなかった。そのままロングランに入っても4秒台の前半で周回できたので、『今回はうまく走れてるな』と思いました」

セカンドベストとは、2レース制で行なわれる鈴鹿2&4の、2レース目のスターティンググリッド決めのためのタイムのことで、予選のベストタイムでレース1のグリッドが、2番目にいいタイムがレース2のグリッドを決定する、という意味だ。結果、高橋はセカンドベストでも2分3秒963をマークし、2つのレース、ダブルポールポジションを獲得する。今の日本で、鈴鹿サーキットを2分3秒台で周回できるのは、CBR1000RRWと高橋巧ただ一人だけだ。


高橋巧
高橋巧

高橋
「マシンは昨年から大きくは変わっていないんです。もちろん、細かい仕様はセッティングは常に進めていますが、僕が今の仕様に乗り慣れてきたというのが大きいと思います。マシンを僕寄りに作ってもらって、双方が歩み寄っている。バイクと僕の調子がかみ合ってきました」

土曜の公式予選後に行われたレース1でも、高橋は予選までの絶好調を持続してみせた。ホールショットを獲得して、そのままハイペースで走行を続けると、このペースについてこられるのは中須賀選手のみ。1周目のバックストレッチで中須賀選手が前に出たものの、2周目のS字進入では、再び高橋が前へ。それも、わずかに空いた中須賀選手のインを刺してのパッシングだった。


高橋巧
高橋巧(#13)

高橋
「あそこは前に出られたくなかった。レースは、ずっと前を走って逃げる作戦でしたので、中須賀選手に前に出られて抑えられると、ほかのライダーも追いついてきて混戦になってしまう。それがイヤで、すぐに抜き返したんです」

高橋、中須賀選手の順でレースは3周目へ。しかしここで、中須賀選手が転倒。レースは高橋の独走となっていく。高橋は、中須賀選手に追われなくともペースを緩めることはなく、2番手以下との差をぐんぐん広げ、最終的に2位渡辺一樹選手(スズキ)に16秒の大差をつけてフィニッシュ。今シーズン初優勝を挙げた。


高橋巧
高橋巧

宇川
「強いレースでしたね。事前テストも予選もよかったから、あの巧のスピードにはだれも追いつけないでしょう。『スタートを決めて逃げるだけ逃げちゃえ』とは言ったのですが、まさかあんなにその通りになるとは」

この圧勝劇はレース2でも続くことになる。日曜朝のウォームアップ走行でも、2番手に1秒以上の差をつけてトップタイムをマークした高橋は、決勝レースでもスタートを決め、渡辺一馬選手(カワサキ)と重なるように1コーナーへ。しかし2コーナーを立ち上がるころには渡辺選手を引き離し始め、集団の先頭を走り始める。


高橋巧
高橋巧

しかし、集団のトップだったのはここまで。ポジションを落としたわけではなく、2周目には早くも集団を抜け出してしまい、独走態勢に入ってしまったのだ。高橋を追うのは、渡辺一馬選手、加賀山就臣選手(スズキ)、MuSASHi RT HARC-PRO.Hondaの水野涼、渡辺一樹選手、中須賀選手、野左根航汰選手(ヤマハ)といったオーダーだったが、高橋のペースが飛びぬけて速く、2周目にはもう2番手以下との差を2秒とし、3周目には6秒、4周目には10秒のビッグアドバンテージを築いた。結局レースは、高橋の独走と、その16秒以上後方に2番手集団というレース1同様の図式となって、このまま18周を走りきった高橋が優勝。まさに圧巻のダブルウイン、第2戦を終えて、高橋がランキングもトップに躍り出た。


(左から)高橋巧、宇川徹 Team HRC監督
(左から)高橋巧、宇川徹 Team HRC監督

高橋
「レース1はうまくいきましたが、レース2は中須賀選手にマークされると思っていました。絶対に接戦になるから、僕は僕の強みである『スタートから3周のスピード』に賭けていました。新品タイヤからのスタート3周、5周は、だれにも負けない。接戦になってもそこを武器に前に出ようと思っていたんです。『絶対に競り負けない』と。でも独走になってからは次の目標を少し迷いましたが、『だったら次は2分4秒台をずっと出して周回してやろう』と決めました。4輪のレースのあとだから、路面コンディションがそれほどでもなく、4秒台の周回こそできませんでしたが、5秒台前半で周回できて、レベルの高い走りをみせられたと思います」


高橋巧
高橋巧

鈴鹿2&4は、接戦の様子もなく、高橋の強さばかりが印象に残ったレースとなった。2&4レースということで、観客戦を埋め尽くした、土曜2万3000人、日曜3万5000人の大観衆、それも大多数の4輪ファンにHondaの強さを見せつけた1戦だった。

高橋もレース人生で覚えがないという、事前テストから公式練習、予選、ウォームアップラン、そして2つの決勝レースですべてトップを獲るという完全勝利。その流れをうまく、次戦・スポーツランドSUGO大会に持ちこみたい。


(左から)高橋巧、宇川徹 Team HRC監督
(左から)高橋巧、宇川徹 Team HRC監督

宇川
「すべてがかみ合ったレースでは、『巧はこんなに速い』。それを再確認できたレースでしたね。開幕戦だって、負けはしましたが、内容は悪くない負け方でした。あれで負けたのがよほど悔しかったんでしょう。今回は、本当に気合いが入っていました。これを当たり前と思わず、このレースを再現できるように、これからもがんばります」

かつて宇川がTeam HRC監督に指名されたとき、その発表記者会見でこう言ったことがある。

「ただチームが復活するだけじゃなく、強すぎて憎たらしいHRCを復活させたい」

全セッションでトップタイムをマークし、2レースともに2位以下に16秒の大差をつけた鈴鹿2&4での高橋とTeam HRCは、かなり憎たらしかった――。

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