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team HRC現場レポート

Vol.11

チームのために、ファンのために
高橋巧、待望の初優勝!

全日本ロードレースに、10年ぶりの復活を果たしたHondaワークスチーム、Team HRC。いよいよ迎えた最終戦・鈴鹿大会。ここまで、何度も惜しいところまで迫ったものの、最終戦まで優勝できないままでした。高橋は前年度チャンピオンの意地として、チームは最強チーム復活へのプライドをかけて、シーズン初優勝を目指した最終戦となりました。

高橋巧

ここまで開催のなかった
ウエットレースへの自信

待望の初優勝だった。雨に見舞われた全日本ロードレース最終戦、第50回MFJグランプリ。2レース制の最終戦、そのレース1で、Team HRCの高橋巧が後続を大きく引き離して、独走の今季初優勝。それは、待望の、そして一つの目標としていた結果だった。

高橋巧(以下、高橋)「勝ったのはもちろんうれしいです。でもこれは、僕の力じゃない。チームのみんなが、いいマシンを作ってくれたからだと思っています。まだ一つ勝っただけ。最終レースも勝って終わりたい」

高橋巧高橋巧

最終戦まで7大会10レース。ニューマシンCBR1000RRWを実戦を通じて開発を続けてきたTeam HRCと高橋。まだまだ理想の状態には遠いというが、このニューマシンの強みを引き出せる状況の一つが、雨でのレースだった。

高橋「今シーズンは、レースもですが、テストでもよく雨が降りました。雨のレースは、僕自身も苦手にしていないし、ニューマシンの強みを出せるコンディションでもあります。でもいざ決勝レースとなると、なかなかウエットレースがありませんでしたね」

開幕戦・もてぎ大会は低い路面温度のまま、降った雨が止んでからのウエット路面でレース1が行われた。第3戦・オートポリス大会も、降った雨が止み、濡れた路面が乾いていく中でのレースだったし、第4戦・菅生大会のレース1でも、同じようなコンディション。そういえば鈴鹿8耐でも、高橋が走った1スティント目、降った雨がどんどん乾いていく路面状況だった。ウエットレースとはいえないほどの、中途半端なコンディションばかり。そして前戦の岡山大会は、フルウエットの路面で公式予選を走ったものの、決勝レースは天候不良のために中止となってしまった。

高橋「テストや予選で雨になると、すごく調子がいいし、うまくマシンを仕上げられて、コントロールできる。自信を持って乗れるけれど、実際にウエットの決勝レースがないから、本当はどうなるのか、分からないんですけどね」

レースが中止となった岡山大会の控室で、そう語っていた高橋。その思いが、最終戦のレース1に通じることになったのだ。

高橋巧高橋巧

納得の自己ベスト
1シーズンの大きな飛躍

今大会を前に行った事前テストでも、2日間のテストで、ドライとウエットコンディション両方を走ることができた。しかもウエットコンディションは、降った雨が止み、路面がウエットから乾いていくような路面コンディションでも走ることができた。

レースウイークに入ると、鈴鹿サーキットは金曜の合同テストから気持ちのいい秋晴れ。そして金曜、土曜と快走をみせた高橋は、自己ベストを更新してみせる。それまでの鈴鹿サーキットでの自己ベストが、第2戦・鈴鹿2&4の公式予選での2分05秒465だったのに対し、金曜の合同テスト1回目で早くも2分05秒530をマークしてトップタイムを奪取すると、土曜の公式予選では2分04秒945をマークし、中須賀克行選手(ヤマハ)に続く予選2番手を獲得してみせたのだ。

今、日本のJSBライダーの中で、鈴鹿サーキットを2分04秒台で走れるライダーは、中須賀選手と高橋、ただ2人だ。

宇川徹宇川徹

宇川徹 Team HRC監督(以下、宇川)「実はこのレースから、マシンを大きく変更しています。細かいところの積み重ねですが、(高橋)巧の要望を汲んでの新しいスペックです。その成果もあって、事前テスト、それからウイークに入って金曜から土曜と、いい走りを見せてくれました」

高橋「今シーズンは、ずっとマシンのセッティングを積み重ねている感じです。それも、すでにマシンの基本的なパフォーマンスが高いのは分かっているので、パーツをどんどん交換するというより、今あるパーツの組み合わせで最善のセッティングを詰めていっている状態ですね。最終戦は、外から見ると分かるところでは新型スイングアームを採用していますが、それだけじゃなく、いろいろ細かいパーツが変わっています」

しかし決勝レースが行なわれる日曜は、朝から雨が降り、朝のウォーミングアップランからフルウエット。ここで高橋はトップタイムをマークする。ウエットレースへの自信は、ますます高まっていた。

そして、2レース制で行なわれるうちのレース1で、高橋は独走優勝を果たすのだ。

高橋巧高橋巧

フロントロー2番グリッドからスタートした高橋は、ホールショット奪うと、スタートからどんどん後続を引き離す。2番手以下との差は1秒、3秒、5秒と広がり、10周という超スプリントで行われたレース1で、2位の中須賀選手に8秒以上の差をつけてフィニッシュ。復活したTeam HRCにとって、そしてファクトリーライダーとなった高橋にとって、待望の初優勝だった。

高橋「決勝日の朝起きて、雨だったから、これは勝つチャンスがある、と思いました。新仕様のマシンでは、あまり雨は走っていなかったんですが、朝のウォーミングアップランからすごくフィーリングがよくて、決勝ではスタートから1周から2周が勝負だと思ったから、とにかくプッシュし続けました。途中、2番手以降との差が3秒とか4秒になったことをサインボードで知って、あまりプッシュしすぎないように少しだけペースを抑えました。あれくらいの雨で、2分16秒台で走れることって、今までそうそうなかったことだから、すごく安心してマシンを走らせられました。やっぱり勝ててうれしいですし、チームがいいマシンを作ってくれたから、それに結果で応えられたのがうれしいです」

高橋巧(左)高橋巧(左)

他クラスのレースをはさんで、日曜の最終レースとなったレース2。お昼すぎから雨はやみ、少しずつ路面は乾いていったが、気温がなかなか上がらなかったからか、走行ラインが乾くにはまだまだ。レース2開始へ向けてのピットアウトでは、様子見でスリックタイヤでスタートした高橋だったが、1周回ってレインタイヤヘスイッチ。この判断は、間違いではなかった。

レース2でも、スタートから飛び出した高橋。レース1でも抑え切った中須賀選手、野左根航汰選手(ヤマハ)、ブラッドリー・レイ選手(スズキ)、渡辺一馬選手(カワサキ)を従えてトップを快走する。しかし4周目、後方からハイペースで追い上げてきた清成龍一選手(MORIWAKI MOTUL RACING)が高橋と中須賀選手のトップ争いに追いつくや、すぐにパスしてトップに浮上。清成選手は、レインタイヤを履いた高橋や中須賀選手とは違うメーカーのタイヤで、しかも「インターミディエイト」というウエットからドライ路面寄りのタイヤを装着しての出走だった。

レースは、インターミディエイトを履いた数名の選手がハイペースで走行するなか、清成選手がトップを独走。それでも中須賀選手と2番手争いを展開した高橋は、中須賀選手の先行を許したものの、3位フィニッシュ。2018年の最終レースを表彰台登壇で締めくくった。

高橋巧(#1)高橋巧(#1)

(左から)高橋巧、清成龍一(左から)高橋巧、清成龍一

高橋「レインタイヤは正解だったとは思いますし、いいペースで走れていたんだけど、清成さんだけが次元が違う走りをしていて、とても追いつけませんでしたね。3位という結果に納得はしていませんが、全力で走れたので、それはよしとしています。欲を言えば、この新しいスペックのマシンで、ドライで精一杯走りたかった」

新生Team HRCでの1年目、高橋は8大会12レースを戦って、優勝1回/2位5回/3位3回でランキング2位でシーズンを終えた。チャンピオンゼッケンは明け渡してしまったが、ニューマシン、新しい体制でのシーズンとしては悪くない。

高橋「いや、悪いです。1回しか勝てなかったし、チャンピオンを獲れなかったのは負けです。たくさん反省点があったので、そこを修正して、また来年も走る機会をもらったら、リベンジしたい。それでも、Hondaワークスチームの復活ということで、勝てないままでも、たくさんのファンの方が応援してくれて、チームも精一杯サポートを続けてくれた。ひとまず1勝だけはできたので、ファンの皆さんやチームのみんな、Hondaに少しだけ恩返しできました」

高橋巧(左)高橋巧(左)

チャンピオンは逃してしまったが、ニューマシンの進化はどうだったのだろう。

高橋「ベースポテンシャルが高いのは分かっていましたし、ワークスマシンとなって、昨年までのマシンよりいろいろなことが変わっていましたね。特にストレートスピードが伸びました。その分タイムが上がって、もう一段ステップアップしたことで、新しい問題も出てきてしまった。そこを解消しようともがいた1年でしたね。でも、最終戦の仕様は、すごく気持ちよく乗れました。こういう方向にしたいな、ってマシンになってきて、これで鈴鹿を2分04秒台で走れるという証明ができた。もっとレースがしたい、これで最終戦なのがもったいないです」

新チームを預かることになった、チーム監督1年生の宇川は、こう語る。

宇川「シーズン最後になって、ようやく新しいかたちが見えてきました。巧がこういうマシンにしたい、チームがこういうマシンにしよう、という方向性がうまくかみ合って、相乗効果でレベルアップできましたね。チームは1年目ということで、言い訳をするようですが、慣れないことばかり。やはり10年のブランクというのは大きくて、チームスタッフの人材育成から始めた1年目でした。ただ、こういうところが足りない、こういうところをもっと強化したい、という狙いがハッキリ分かった1年でした。来年に向けてのいい助走ができたかな、と思います。全日本も鈴鹿8耐も2位ですから、悔しいし、おもしろくないですよ。勝ちたい、チャンピオンになりたい気持ちはずっと持ち続けています」

チャンピオンは獲れなかった。優勝も1回しかできなかった。
しかし、来年に向けてのいい準備ができたシーズンになった。ファンが期待する最強チームの復活へ向けての、いい助走をつけられた1シーズンになった――。

高橋「中須賀さんには敗れましたが、自分との戦いではいい戦いができたと思います」

高橋巧高橋巧

昨年のこのレース、高橋のベストタイムは決勝レース中の2分06秒266。
1年後にここを2分04秒945で走った高橋は、1年で1秒3ものタイムアップを果たしたことになる。

チャンピオン奪回に向けての準備は、上々だ。

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