round 1

April 04 2010
ALL JAPAN ROAD RACE CHAMPIONSHIP TSUKUBA
第1戦 筑波サーキット

JSB1000高橋巧、亀谷長純を抑えて開幕勝利!
世界選手権帰りの中上貴晶、ST600の激戦を制して優勝
J-GP3大久保光が全日本初優勝飾る!

全日本ロードレース選手権が筑波サーキットで開幕した。今季から世界選手権のMoto2クラスに通じるJ-GP2クラスが新設され、ST600のステップアップクラスに位置する。600ccエンジンをオリジナルで制作したフレーム、またはST600車両のフレーム(改造可)に搭載したマシンで、タイヤはスリックもしくはST600公認タイヤが使用可能だ。15台のエントリーがあれば単独開催されるが、現状は4台しかないためにJSB1000との混走で争われることになった。また、GP125クラスはJ-GP3と名称が変わり、08年から4サイクル250ccマシンと混走していたが、2サイクルマシンと4サイクルマシンでは性能差が大きいことから、今年から2サイクルマシンはラム圧が禁止され、車両規則が変更されることになり、7kg増の77kgとなった。

最高峰JSB1000には秋吉耕佑(F.C.C.TSR Honda)がフル参戦することになった。伊藤真一(Keihin Kohara R.T.)はシーズン前に今季限りで全日本を卒業することを発表。「ラストシーズンをチャンピオンでしめくくりたい」と、有終の美を飾ることを誓った。成長著しい若手ライダー、高橋巧はMuSASHi RT ハルク・プロに移籍、勝てる体制を得たことで注目度アップ。昨年はタイトル争いを繰り広げた亀谷長純(Honda DREAM RT 桜井ホンダ)も「取り逃がしたタイトルを取りにいく」と目標を語った。J-GP2には小西良輝(MuSASHi RT ハルク・プロ)、高橋江紀(バーニングブラッドRT)らが参戦する。

開幕戦ということで木曜日からフリー走行が行われた。金曜日のフリー走行は午前中に強い雨が降り、午後には上がったものの路面はウエット。事前テストは3日間行われたが気温は上がらず、冷たい雨というコンデションで、晴れたのは最終日だけ。最終日はタイヤテストのため、限られたライダーの走行だったこともあり、多くのライダーはレースウイークでのマシンの調整となった。予選日は晴れ間がのぞくコンディション。JSB1000/J-GP2は1時間の予選が1回というタイムスケジュールだ。木、金と連続トップタイムの亀谷が予選でもキーマンとなった。木曜日の段階で56秒台を出していた亀谷は、さらにタイムアップしてトップに。そのタイムを伊藤が破る場面もあったが、再び亀谷が塗り替える展開。高橋巧も飛び出し自己ベストを更新したが、亀谷のタイムには届かず、伊藤もさらに更新することはできなかった。秋吉はピットインアウトを繰り返して調整。タイムを上げていったが、亀谷のトップは揺るがず、ポールポジション(PP)が決定した。上位7台が56秒台を記録。コースレコードは昨年、伊藤が記録した55秒142、亀谷も55秒を記録しており、決勝でタイム更新できるかもポイントだ。

  • 高橋巧(中央)、亀谷長純(左)高橋巧(中央)、亀谷長純(左)
  • 高橋巧高橋巧
  • 亀谷長純亀谷長純
  • 小西良輝小西良輝
  • 中上貴晶(中央)中上貴晶(中央)
  • 中上貴晶中上貴晶
  • 大久保光(中央)、岩田裕臣(左)、鎌田悟(右)大久保光(中央)、岩田裕臣(左)、鎌田悟(右)
  • 大久保光大久保光

決勝日は気温が下がって路面温度も低く、タイヤ選択に悩むこととなった。スタートで飛び出したのは伊藤だったが、走りだしてすぐにタイヤ選択を誤ったことに気づく。伊藤は思うようにマシンをコントロールできず、ホールショットは高橋巧が奪った。高橋巧はスタートからスパート、それを亀谷、柳川明(カワサキ)、中須賀克行(ヤマハ)、秋吉、伊藤、武田雄一(ヤマハ)が数珠つなぎで追う展開。高橋巧はオープニングラップをトップで通過し、レースをリードした。2ラップ目には、MCコーナーで伊藤がまさかの転倒。再スタートを試みようとしたがマシンのダメージを考慮して断念した。次のラップには伊藤と同じタイヤを選択した秋吉が、1ヘアピン立ち上がりで転倒。クラッシュパッドに挟み込まれたマシンを引っ張り出して再スタートするが、トップ争いに加わるのは難しい状況になった。トップ争いは高橋巧と亀谷の一騎打ちに。高橋巧をピタリとマークする亀谷だが、周回遅れのマシンが絡むと微妙にその差が開き、打開策を見つけることができずに周回を重ねた。高橋巧は自身のペースを守りながらトップを死守。最後まで首位の座を守り抜き、うれしい優勝のチェッカーを受けた。2位には僅差で亀谷、3位には中須賀が入り、表彰台へと上がった。秋吉は22位でチェッカーを受けた。

JSB1000と混走のJ-GP2では、小西が予選14番手でトップ、高橋江紀は予選落ちとなった。決勝は小西が11位でチェッカーを受けてトップで、たった一人の表彰台に上りシャンパンファイトした。

昨年のST600チャンピオンの手島雄介(TSR)は、Moto2の開発を主軸にしながら の参戦となり、今季の全日本はスポット参戦。世界選手権から帰国した中上貴晶(MuSASHi RT ハルク・プロ)は、小林龍太をチームメートとして参戦し、徳留和樹(バーニングブラッドRT)がフル参戦を決めた。さらに、JSB1000から山口辰也がモリワキクラブへ移籍。岩田悟(TSR)、野田弘樹(テルル・ハニービーレーシング)、関口太郎(Team TARO PLUS ONE)らは継続参戦となる。

ST600は午前、午後、A、B組に分かれての予選で、手島は1回目の予選開始早々に転倒。全身を強く打ち、午後の走行に賭けた。今回はピレリ勢が好調で、新垣敏之(ヤマハ)がPP。2番手に豊田浩史(ヤマハ)、3番手に岩崎朗(岩崎III兄弟☆aZ☆日光SC)、4番手に岩崎哲朗(RS-ITOH&ASIA)、中上が5番手、山口が7番手、小林が11番手、15番手に中山真太郎(ATU. AKI team しんたろう with KR)、野田は16番手、手島20番手、関口が21番手、渡辺一馬(CLUB PLUS ONE)が21番手、徳留24番手。岩田はセットアップを詰めきれずに予選落ちという結果になった。

決勝は、新垣がスタートで首位。渡辺は1コーナーで転倒してしまう。新垣がレースをリードし、それを岩崎朗、豊田、山口らが追う展開。豊田はファステストラップをたたき出し、一時トップに迫った。その争いのなかで、岩崎が11ラップ目に転倒してリタイア。混沌とするトップ争いに迫った中上は、次々と先行車を捕らえ16ラップ目の1ヘアピンで新垣をアウトからパスすると、一気にトップに躍り出てスパート。新垣も負けじと食らいつくが中上のトップは揺るがず、07年スペインGP3位以来の表彰台、全日本では4年ぶりの勝利を獲得した。2位には新垣、3位には豊田が入った。山口が4位、手島はダメージの残る身体で奮闘して10位。中山が13位、野田が14位、16位に関口、20位に徳留となった。

J-GP3は鎌田悟(ENDURANCE+桶川スポーツランド)が初PPを獲得。決勝でのホールショットは大久保光(18 GARAGE RACING TEAM)が奪う。1コーナーで柳沢祐一(18 GARAGE RACING TEAM)が転倒、その影響で浦本修充(MuSASHi RT ハルク・プロ)も転倒するが、再スタートを切る。さらに2ラップ目の1ヘアピンでは藤井謙汰(TSR)もクラッシュに巻き込まれて転倒し、右ヒザを痛めリタイア。ファーストラップを制したのは岩田裕臣(TEAM PLUS ONE)、大久保、鎌田、長島哲太(Projectμ7C HARC)、菊池寛幸(WHEELIE with KRT)が続く。激しいつば競り合いとなったトップ集団から鎌田が前に出るが、大久保がすぐに奪い返してレースをリード。トップ争いは大久保、鎌田、長島、岩田に絞られる。岩田は様子を見ながら大久保、長島のバトルの背後に付けた。マシンをぶつけあうトップ争いは一歩も譲らない戦いを見せる。そこに岩田をパスした鎌田が追いつくが、24ラップ目に岩田が再び3番手に浮上。大久保は一歩も引かない走りを貫く。23ラップ目には岩田が長島を捕らえて2番手に浮上、長島は鎌田との3位争いを繰り広げる。最終的に大久保が全日本初優勝を飾り、2位に岩田、3位争いは鎌田が制した。浦本は最後尾から18位まで追い上げた。

コメント

高橋巧(JSB1000 優勝)「事前テストからいい感じで乗ることができていました。レースウィークの木曜日の走行が始まってすぐに転倒してしまい、その出遅れが響いて予選ではタイムを伸ばせなかったという反省もありますが、決勝はいい流れだったと思います。スタートから絶対にいけると信じでダッシュして、あせらずにしっかり走ろうと心掛けていました。勝ててうれしいです。かなりうれしいです。トップ争いができる自信ができました。ありがとうございます」

亀谷長純(JSB1000 2位)「事前テストは雨しか走れませんでした。木曜日から決勝に向けての準備が始まったので、ロングランもタイヤ選択もできなかった。タイヤに関しては、同じダンロップ勢の中須賀選手と情報交換しながら絞り込みましたが、思っていた以上に路面温度が低くなり、不安もありました。高橋巧選手の後ろで自分との違いを観察していましたが、バックマーカーが絡むなど、タイミングをつかめずに届きませんでした。自信があっただけに残念ですが、今年の目標はチャンピオンですから、これから巻き返していきます」

小西良輝(J-GP2 優勝)「まだ試行錯誤している部分も多く、現状で最大限のことをやるしかないという状況で、フラストレーションのたまるレースでもあります。レース結果はシミュレーションしていた通りでした。これから、じっくりとマシンと向き合い、いいレースができるように仕上げて、多くのライダーが乗ってみたいと思ってもらえることが目標。しっかりがんばっていきたいと思います」

中上貴晶(ST600 優勝)「予選結果を見て、ピレリを履いているライダーがタイムを出していたので、ピレリ勢の序盤のスパートについていけるかが大事だと思っていました。中盤から後半にかけては自信があったので、序盤にうまくいけば勝てると……。3〜4ラップは走りを観察して探っていました。うまく前に出ることができましたが、最終ラップは、すぐ後ろで音がしていたので気が抜けませんでした。2ヘアピンで後ろを見たら離れていたので勝てたと思い、張りつめていた気持ちがやっと緩みました。07年の夏のスペインのレース以来の表彰台で、心の底からうれしくて、レースができる環境をくれたチームや、応援してくれる人たちへの感謝で涙が出ました。指のケガの影響は残っていて痛みもありますが、走っている時は大丈夫でした」

大久保光(J-GP3 優勝)「朝のフリーで勝てると思えたので、とにかくレースを引っ張って行こうと思っていました。スタートは自分が思っていた以上に決まり、1コーナーでトップに立ったのですが、思うようにペースが上がらず、トップを守れなかったけれど、冷静に、抜かれたら抜き返せばいいと思いました。マシンが走っていたので裏ストレートで抜けると思いながら攻めました。ラスト10ラップにタイヤの状況を見ながらペースを上げようと思っていました。2位に岩田選手がいるのは掲示板で分かっていたので、絶対に仕掛けてくると思いましたが、トップでチェッカーを受けるんだと考えて走りました。最終ラップの最終コーナーを立ち上がって、やっと勝てたと思いました。まだまだ、タイムが出ていないので、これから、出せるように改善していきたい。すごくうれしくて表彰台では緊張してしまいました」

岩田裕臣(J-GP3 2位)「昨年はなかなかうまく走れなくて、人間が遅くなったんじゃないかって思ったりしていました。引退も考えましたが、応援してくれる人たちに恵まれて走ることを決めて、開幕戦で表彰台に乗れてよかった。少しは恩返しができたかなと思えましたし、レースを続けてよかったなと思えました。本当は勝ちたかったしチャンスもあったと思いますが、若くて元気がよく、マシンをぶつけ合うくらいの争いをしていたので、様子を見ていたら、タイミングを逃してしまった。様子を見すぎたと反省もあります。でも、今日の大久保選手は速かったですね」

鎌田悟(J-GP3 3位)「大久保選手のマシンが走っていたので、自分が前に出て、タイムが落ちるよりも大久保選手を先行させた方がいいと冷静に考えることができていたんですが、大久保選手と長島選手のバトルを見ながら仕掛けようとしていたんですが、岩田選手が前に出てしまい、攻略しようとしましたが、ギア抜けしたりと思うように走れず、届かなくて……。でも絶対に表彰台には上がらなければとがんばりました。初表彰台はすごくうれしいです」

決勝

JSB1000 / J-GP2

順位 No. ライダー マシン タイム/差
1634高橋巧Honda28:20.762
26亀谷長純Honda+1.057
31中須賀克行ヤマハ+19.010
487柳川明カワサキ+23.911
545武田雄一ヤマハ+51.716
632新庄雅浩スズキ+57.327

ST600

順位 No. ライダー マシン タイム/差
173中上貴晶Honda24:37.691
220新垣敏之ヤマハ+0.941
352豊田浩史ヤマハ+1.052
430山口辰也Honda+2.722
519國川浩道Honda+5.091
675大崎誠之ヤマハ+6.565

J-GP3

順位 No. ライダー マシン タイム/差
16大久保光Honda25:33.684
25岩田裕臣Honda+1.472
323鎌田悟Honda+1.584
412長島哲太Honda+1.849
57矢作雄馬Honda+2.758
629渡辺陽向Honda+4.950
ポイントスタンディング

JSB1000

順位 ライダー マシン 総合ポイント
1 高橋巧 Honda 25
2 亀谷長純 Honda 22
3 中須賀克行 ヤマハ 20
4 柳川明 カワサキ 18
5 武田雄一 ヤマハ 16
6 新庄雅浩 スズキ 15

ST600

順位 ライダー マシン 総合ポイント
1 中上貴晶 Honda 25
2 新垣敏之 ヤマハ 22
3 豊田浩史 ヤマハ 20
4 山口辰也 Honda 18
5 國川浩道 Honda 16
6 大崎誠之 ヤマハ 15

J-GP2

順位 ライダー マシン 総合ポイント
1 小西良輝 Honda 25
2 宇井陽一 ヤマハ 22
3 生形秀之 スズキ 20

J-GP3

順位 ライダー マシン 総合ポイント
1 大久保光 Honda 25
2 岩田裕臣 Honda 22
3 鎌田悟 Honda 20
4 長島哲太 Honda 18
5 矢作雄馬 Honda 16
6 渡辺陽向 Honda 15