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タイトル争いも大詰め、残り2戦となった全日本ロードレース選手権。最終戦の鈴鹿は、東コースで行われることが決定している。これは初の試みであり、どんなレースになるか予想することが難しいため、もてぎ戦の重要度が増すと見られていた。今回のレースには、秋吉耕佑(F.C.C.TSR Honda)がJSB1000にスポット参戦。また、ヨシムラスズキにも徳留和樹が参戦。彼らのポジション次第ではタイトル争いに影響が出ることも考えられ、こうした実力者の参戦は大きな注目を集めた。
もてぎの事前テストは、台風の影響で最初の2日間は雨となった。トップタイムを記録していた秋吉は、ここでテストを切り上げた。3日目最終日の最終セッションは、かろうじてドライとなり、ランキングトップの亀谷長純(Honda DREAM RT 桜井ホンダ)がトップタイムを記録した。
レースウイークに入り、期待を集めた秋吉が、金曜日のフリー走行の1コーナーで転倒してしまう。「ギャップに乗ってしまい、フロントが切れ込んで転倒してしまった。完全に自分のミス。MotoGPからの乗り換えだということを意識して、もっと優しく乗らないといけない」と反省したものの、手応えは十分。2番手タイムを記録して走行を終えた。
予選はノックアウト方式で行われ、最終セッションに残ったトップライダーたちが激しいアタック合戦を繰り広げた。ポールポジション(PP)は酒井大作(スズキ)、2番手は山口辰也(MuSASHi RTハルクプロ)で、この2人が1分50秒台を切り1分49秒台を記録した。3番手は中須賀克行(ヤマハ)でフロントローを獲得。4番手には秋吉がつけた。5番手は柳川明(カワサキ)、6番手に大崎誠之(ヤマハ)。亀谷は最終セッションでセットアップを変更。アタック時間のほとんどをピットで過ごし、Tカーでコースに出たのはラスト3分の時点だったが、そこからのアタックで7番手に食い込んだ。8番手に横江竜司(ヤマハ)、9番手に伊藤真一(Keihin Kohara R.T.)、10番手に高橋巧(バーニングブラッドRT)がつけた。
予選が終了した夕方から雨が落ち、路面を濡らした。路面状況が雨で変化したことや、決勝日が快晴となり路面温度が予選より上昇したことなどから、決勝のレースは転倒者が多く、赤旗も続出した。
JSB1000では、朝のウオームアップランで秋吉が予選タイムに迫る1分50秒593のトップタイムを記録。2番手の山口も1分50秒756で、2人だけが50秒台を記録し、好調を印象づけた。しかし、秋吉はサイティングラップの5コーナでスリップダウンし転倒。グリッドには並べず、ピットスタートを目指したが、マシンの修復が間に合わないことが判明。コースに出ることを断念し、そのままリタイアとなった。
決勝のホールショットは酒井。2番手に中須賀、3番手に山口がつけ、この3台がトップ争いを繰り広げた。4番手には柳川が浮上。5番手亀谷、6番手伊藤、7番手に大崎、8番手に高橋が続いた。しかし、12ラップ目に転倒車両からオイルが漏れたために赤旗中断。周回数がレースの75%をクリアしていなかったことから、2レース目が9ラップで争われることになった。
第2レースのスターティンググリッドは第1レースの11ラップ目の通過順位。ホールショットを奪った酒井は、1レース目の好調そのままに逃げた。中須賀と山口が2位争いを展開したことも酒井の独走を助けることになり、そのままチェッカーを受けた。山口は中須賀を激しくプッシュしたが前に出ることはできず、2位中須賀、3位山口でチェッカー。4位にはトップ争いに迫る勢いを見せた柳川が入った。5位は亀谷と伊藤で争われた。伊藤は後半にペースアップし、トップと変わらないハイペースで追い上げたが届かず、亀谷が逃げて5位でフィニッシュ。伊藤は6位となった。7位に大崎、8位に高橋が続いてチェッカーを受けた。
ところが、レース後に行われた車検で亀谷が音量規制値の違反となり、失格の裁定が下された。これを受け、リザルトは5位伊藤、6位大崎、7位高橋と繰り上がることになった。しかし、桜井ホンダはこの裁定に対して抗議を出しており、審議を待つこととなった。
ST600はA、B組に分かれ、午前・午後、それぞれ20分間の予選が行われ、黒川武彦(カワサキ)が昨年に続いてPPを獲得した。2番手に清水直樹(カワサキ)、3番手に調子を取り戻してきた野田弘樹(テルル・ハニービーレーシング)、4番手にランキングトップの手島雄介(TSR with ALT)、5番手に小西良輝(MuSASHi RTハルクプロ)がつけた。
決勝のホールショットは清水。それを黒川が追った。黒川は2ラップ目で首位に立ち、レースをリード、2番手に野田が浮上し、3番手清水、4番手佐藤祐児(ヤマハ)、5番手に手島、6番手に小西が続いた。数珠つなぎのトップ争いとなったが、6ラップ目の4コーナー立ち上がりで2台が転倒。コース上にマシンが残され、赤旗中断となった。
その後再スタートが切られたが、またしても4コーナー先で5台の多重クラッシュが発生し、赤旗が提示された。決勝はすべてのスケジュールが終わってから再開される予定だったが、JSB1000でも赤旗が提示され、2レースになりタイムスケジュールがずれ込んだため、ST600の第3レースは行われなかった。ST600の順位は、第1レース5ラップ目の順位で決定し、ポイントは3分の1となった。この結果、黒川が初優勝を達成。2位に野田、3位に清水が入り表彰台に上がった。手島は5位、小西は6位、7位に関口太郎(Team TARO&PLUS ONE)が入った。
GP250の予選は35分間1回でグリッドが争われた。Moto2マシン、モリワキエンジニアリングの「MD600」が岡山に続きスポット参戦し、森脇尚護がトップタイムを記録した。PPは宇井陽一(ヤマハ)。
決勝は、ホールショットを奪った森脇に宇井と及川誠人(ヤマハ)が襲いかかったが、森脇がペースアップし独走状態に持ち込み、トップでチェッカー。宇井は2番手となり、3番手争いをしていた及川と渡辺一樹(ヤマハ)は1コーナーで接触転倒。渡辺はコース復帰したが、及川はリタイア。宇井もV字で転倒し再スタート。代わって250ccのトップとなった藤田拓哉(ヤマハ)も転倒。最終的には星野知也(ヤマハ)が優勝。2位は追い上げた渡辺。3位は、最後尾から追い上げた福山京太(ヤマハ)となった。
GP125は、40分1回の予選が行われ、17歳の尾野弘樹(BATTLE FACTORY)が「今回は1人で走って1人でタイムを出そうと決めていた。単独で出せたタイムでPPだからうれしい」と初PPを獲得。
決勝は尾野が絶妙のスタートを決めホールショットを奪った。それに、山田亮太(TEAM PLUS ONE)、菊池寛幸(チームウイリー)、矢作雄馬(桶川塾&ENDURANCE)、柳沢祐一(18GARAGE RACING TEAM)、篠崎佐助(ヤマハ)、大久保光(18GARAGE RACING TEAM)が続いた。その後、トップ争いから篠崎がコースアウトし脱落。尾野がレースをリードしたが、7ラップ目に山田が首位を奪う。8ラップ目にはすかさず尾野がトップを奪ったが、9ラップ目には追い上げた大久保が前に出た。大久保、菊池、尾野、山田、柳沢が横一列に並んでコーナーに突っ込み、ラインがクロス。尾野がヘアピンでオーバーランし、後れたがすぐにコースに戻り、トップ争いに復帰。V字で仕掛けたが、再びコースアウトしてしまう。そこで菊池がスパートをかけ、絶妙の駆け引きでトップを奪い、そのままチェッカーを受けた。2位山田、3位柳沢、4位大久保となった。尾野は10位でチェッカーを受け、ポイントを獲得。この結果を受け、菊池が75ポイントでランキングトップに浮上。2位の尾野(68ポイント)と最終戦で年間チャンピオンの座を争う。
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 39 | 酒井大作 | スズキ | 9 | 16:45.639 |
2 | 1 | 中須賀克行 | ヤマハ | 9 | 16:46.521 |
3 | 634 | 山口辰也 | Honda | 9 | 16:46.847 |
4 | 87 | 柳川明 | カワサキ | 9 | 16:47.953 |
5 | 33 | 伊藤真一 | Honda | 9 | 16:53.612 |
6 | 2 | 大崎誠之 | ヤマハ | 9 | 17:01.161 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 705 | 黒川武彦 | カワサキ | 5 | 9:54.903 |
2 | 6 | 野田弘樹 | Honda | 5 | 9:55.235 |
3 | 16 | 清水直樹 | カワサキ | 5 | 9:55.753 |
4 | 81 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 5 | 9:55.914 |
5 | 48 | 手島雄介 | Honda | 5 | 9:56.629 |
6 | 634 | 小西良輝 | Honda | 5 | 9:57.332 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
ー | 83 | 森脇尚護 | MD600 | 10 | 19:19.175 |
1 | 46 | 星野知也 | ヤマハ | 10 | 19:58.013 |
2 | 8 | 渡辺一樹 | ヤマハ | 10 | 19:58.662 |
3 | 14 | 福山京太 | ヤマハ | 10 | 20:11.392 |
4 | 24 | 小口理 | ヤマハ | 10 | 20:15.853 |
5 | 48 | 柴原誠 | ヤマハ | 10 | 20:16.646 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 1 | 菊池寛幸 | Honda | 10 | 20:34.368 |
2 | 5 | 山田亮太 | Honda | 10 | 20:34.630 |
3 | 6 | 柳沢祐一 | Honda | 10 | 20:34.681 |
4 | 20 | 大久保光 | Honda | 10 | 20:34.821 |
5 | 11 | 矢作雄馬 | Honda | 10 | 20:36.460 |
6 | 2 | 井手敏男 | ヤマハ | 10 | 20:44.421 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 酒井大作 | スズキ | 112 |
2 | 中須賀克行 | ヤマハ | 103 |
3 | 柳川明 | カワサキ | 103 |
4 | 山口辰也 | Honda | 97 |
5 | 大崎誠之 | ヤマハ | 97 |
6 | 亀谷長純 | Honda | 94 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 手島雄介 | Honda | 79.3 |
2 | 小西良輝 | Honda | 59.7 |
3 | 小林龍太 | Honda | 51 |
4 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 50.7 |
5 | 武田雄一 | ヤマハ | 49.7 |
6 | 中冨伸一 | ヤマハ | 47.3 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 宇井陽一 | ヤマハ | 67 |
2 | 渡辺一樹 | ヤマハ | 62 |
3 | 及川誠人 | ヤマハ | 54 |
4 | 星野知也 | ヤマハ | 42 |
5 | 藤田拓哉 | ヤマハ | 39 |
6 | 福山京太 | ヤマハ | 35 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 菊池寛幸 | Honda | 75 |
2 | 尾野弘樹 | Honda | 68 |
3 | 山田亮太 | Honda | 56 |
4 | 徳留真紀 | ヤマハ | 54 |
5 | 大久保光 | Honda | 45 |
6 | 岩田裕臣 | Honda | 42 |
コメント
山口辰也(JSB1000 3位)
「SUGOの転倒による手の痛みは、岡山国際の時に比べれば少なくなり、ライディングに影響するほどではなかったのですが、無意識に手をかばうようなセッティングにしてしまったのかもしれません。ブレーキングがよくありませんでした。中須賀君をパスすることができませんでした。今回はセッティングのミスです。今回の反省を生かして最終戦に挑みます」
野田弘樹(ST600 2位)
「事前テストからドライで走る機会がなく、セットアップを詰めるのが大変でした。予選でも路面温度が低かったり、風が出たりと条件がそろわず、調子を上げることができませんでした。それでも、前半戦はなかなかうまくリズムに乗ることができませんでしたが、ここにきて予選ではフロントローに並び、決勝では表彰台に立つことができました。この調子で、最終戦は優勝を目指します」
菊池寛幸(GP125 優勝)
「SUGO戦の決勝に続き、今週の金曜日にエンジンが焼けつき、その対策を進めながら車体のセッティングを考えていました。気温が上がったら攻めのセットに、気温が下がったら守りのセットにと考え、準備をしていました。決勝日は気温が上がり、攻めていけたのがいい方向にいきました。尾野との一騎打ちなら、仕掛ける場所は決まっていました。逃げられるほどの余裕はなかったので、山田の位置を確認してこれは混戦になるなと思い、作戦を変更。スパートもうまくいきました。全体的なペースは遅く、レベルとしては高くはないが、若手ライダーたちのテクニックは、自分たちベテランをしのぐものがあるというのは認めています。彼らに必要なのは、勝負をする意志と経験。もっと積極的に挑んできてほしいと思います。レギュレーションも厳しいものにしてハードルを上げることが、彼らを育てることになると思います。全日本の敷居は高い方がいいと思います」
山田亮太(GP125 2位)
「トップに出てレースを引っぱれたらと思っていたが、混戦の中でシフトミスをしたら、集団の後ろになってしまいました。尾野がヘアピンでオーバーランしたことに助けられ、光(大久保)、柳沢、自分というオーダーで差が詰まりスリップが効いたため、前に出ることができてラッキーでした。まだ、レースを組み立てる余裕がありませんでした。菊池さんにいいようにやられてしまった、という感じです」
柳沢祐一(GP125 3位)
「スタートで遅れ、トップ争いに追いつくのに時間がかかってしまいました。チームメートの大久保にだけは負けたくなかったので、彼を目標に追いかけました。そこまでで、今回はいっぱいいっぱい。表彰台に上がることができてよかったです」