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後半戦に突入した全日本ロードレース選手権。JSB1000は前回のSUGO戦で負傷した山口辰也(MuSASHi RTハルクプロ)が復帰。頭を打ったダメージはほとんどないが、右手小指の骨折と、手のひらを強く打った打撲から腫れがひいておらず、グリップを握るのも困難で、走行に影響するのは否めない。また、事前テストに参加できなかったこともあり、不安を抱えての参戦となる。ランキングトップの亀谷長純(Honda DREAM RT 桜井ホンダ)、復活を狙う伊藤真一(KeihinKoharaR.T.)、ルーキー高橋巧(バーニングブラッドRT)も勝利を狙う。
レースウイークは、真夏並みの日差しで気温は29℃、路面温度は45℃まで上昇。事前テスト以上に上がった気温と路面温度に合わせて、マシンセットアップを見直すことになった。JSB1000はノックアウト方式で予選が行われた。1回目の走行結果の上位24台が2回目の予選に進むことができる。ここでトップタイムをマークしたのは酒井大作(スズキ)、2番手に亀谷、3番手柳川明(カワサキ)、4番手山口、6番手伊藤、高橋は9番手で通過した。
2回目の予選では12台に絞られる。ここでも酒井がトップタイム。2番手には山口。3番手に伊藤が浮上。亀谷は6番手。高橋は変わらず9番手で最終セッションに進んだ。
最終セッションでは中須賀克行(ヤマハ)がトップタイムを叩き出し、ポールポジションを獲得。以下、2番手酒井、3番手柳川、4番手亀谷、5番手伊藤までが1分29秒台にひしめいた。山口は6番手、高橋は8番手から決勝に挑むことになった。
決勝のシグナルグリーンと同時に飛び出し、ホールショットを奪ったのは中須賀。それを酒井、柳川、伊藤、亀谷、山口、大崎誠之(ヤマハ)、井筒仁康(カワサキ)、高橋が追う展開。2ラップ目、高橋は井筒をとらえポジションアップ。トップ争いもし烈になり、中須賀に酒井が仕掛けるが、中須賀がトップを死守。亀谷は5ラップ目に柳川をとらえ4番手に浮上。中須賀、酒井、伊藤、亀谷、柳川、山口、大崎の7台によるトップ争いとなり、コンマ差での攻防を繰り広げた。1コーナー、ダブルヘアピンなどでポジションを入れ替えるシーンが見られた。
亀谷は8ラップ目に伊藤をとらえ3位に浮上。10ラップ目に酒井が中須賀をとらえ首位に立ち、その後ベストタイムを連発してトップを不動のものにする。2番手争いは中須賀、亀谷で争われた。亀谷は14ラップ目に中須賀をパスして2番手に浮上し、酒井を追った。16ラップ目、伊藤も中須賀をとらえ3番手へとポジションアップ。今度はターゲットを亀谷に定めてヘアピンで仕掛け亀谷をとらえたが、クロスラインで再び亀谷が前に出て逃げきった。
優勝は酒井。2位に亀谷が入り、僅差で伊藤が3位。4位に中須賀、5位に柳川。手の痛みをこらえて参戦した山口は6位に入り、貴重なポイントを獲得。高橋は8位でチェッカーを受けた。
ST600の予選は1回、50分の走行によるタイムアタックが行われた。「SUGOで約束した通り、決勝に向けてのマシン作りをしっかりした結果」と手島雄介(TSR with ALT)がPPを獲得。連勝を狙う小西良輝(MuSASHi RTハルクプロ)は転倒してしまい9番手、3列目スタートとなった。
決勝ホールショットは清水直樹(カワサキ)。だが、すかさず手島がトップを奪いレースをリードする。それを清水、佐藤裕児(ヤマハ)、野田弘樹(テルル・ハニービーレーシング)、小林龍太(MuSASHi RTハルクプロ)、高橋江紀(KeihinKoharaR.T.)が追う。手島は力強いライディングで主導権を握り、レースを引っ張る。すると、トップ集団から高橋が遅れ、代わって追い上げてきた小西が加わり、手島、清水、佐藤、小林、野田、小西の6台でトップ集団が形成された。小林は5ラップ目に清水をとらえ3番手に浮上。また、小西は周回ごとにポジションアップし、9ラップ目には3番手まで浮上。13ラップ目には小林をとらえると、トップの手島に襲いかかる。最終ラップのヘアピン進入で手島をとらえると、そのまま優勝のチェッカーをくぐった。2位には手島。小林は3位で表彰台に上った。野田は6位。岩田悟(TSR)は8位。高橋は14位でレースを終えた。
GP250には、世界的な注目を集めるMoto2マシン、モリワキエンジニアリングの「MD600」がスポット参戦。予選で森脇尚護が駆り、独特なエンジン音を響かせ、フリー走行から好タイムをマークした。予選は45分、1回で行われたが、森脇はトップタイムとなる1分31秒915を記録。10ラップ目にはリボルバーコーナーで転倒。幸い、身体にダメージはなかったが、「もっと、タイムを上げたかった。テスト項目も残したまま。決勝朝のウオーミングアップランでしっかりテストして決勝を走りたい」と語った。本来の250トップタイムは宇井陽一(ヤマハ)が記録した。決勝スタートで飛び出したのは森脇でレースをリード、そのまま独走し先頭でフィニッシュ。レースは宇井と及川誠人(ヤマハ)のトップ争いとなり、予選タイムを超える好走を見せた及川が、宇井をとらえて1993年全日本昇格以来、初優勝を飾った。2位に宇井、3位は渡辺一樹(ヤマハ)で表彰台に上がった。
GP125は、前回のSUGOでトップに立ちレースをリードしながら、エンジントラブルでリタイアと涙を飲んだ菊池寛幸(チームウイリー)がPPを獲得した。決勝ホールショットは菊池。序盤から8台による激しいトップ争いが繰り広げられた。菊池がレースをリード、それを尾野弘樹(BATTLE FACTORY)がとらえ、5ラップには首位を奪う。尾野、菊池の2台が抜け出たように見えたが、岩田裕臣(DyDoミウレーシング)、山田亮太(TEAM PLUS ONE)が追いつき、9ラップ目には山田、10ラップ目には岩田がトップに立つ。ユースカップの若手ライダー大久保光(18 GARAGE RACING TEAM)と、浦本修充(TEAM IRONBARONS)がペースアップし、トップ争いに追いつく。11ラップ目には菊池が再び前に出てレースをリード。それを、岩田、尾野、大久保、山田、浦本、篠崎佐助(ヤマハ)、矢作雄馬(桶川塾&ENDURANCE)が数珠つなぎで追う展開。ここから浦本が1コーナーで痛恨の転倒で戦列を離れ、12ラップ目には篠崎がマシンストップ。13ラップ目、トップの菊池がスパートをかけ、尾野、大久保、山田、岩田、日浦大治朗(Team NOBBY)、矢作らが追ったが、14ラップ目のヘアピンで転倒があり、赤旗が提示。13ラップ目の通過順位でレースが成立し、菊池が2勝目を飾った。2位は尾野。3位に大久保が入り、初表彰台を獲得した。
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 39 | 酒井大作 | スズキ | 20 | 30:17.899 |
2 | 8 | 亀谷長純 | Honda | 20 | 30:19.492 |
3 | 33 | 伊藤真一 | Honda | 20 | 30:20.035 |
4 | 1 | 中須賀克行 | ヤマハ | 20 | 30:21.453 |
5 | 87 | 柳川明 | カワサキ | 20 | 30:21.758 |
6 | 634 | 山口辰也 | Honda | 20 | 30:21.976 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 634 | 小西良輝 | Honda | 15 | 24:03.636 |
2 | 48 | 手島雄介 | Honda | 15 | 24:03.927 |
3 | 73 | 小林龍太 | Honda | 15 | 24:04.214 |
4 | 16 | 清水直樹 | カワサキ | 15 | 24:04.383 |
5 | 81 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 15 | 24:07.748 |
6 | 6 | 野田弘樹 | Honda | 15 | 24:08.969 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 3 | 及川誠人 | ヤマハ | 15 | 23:26.559 |
2 | 41 | 宇井陽一 | ヤマハ | 15 | 23:27.064 |
3 | 8 | 渡辺一樹 | ヤマハ | 15 | 23:33.076 |
4 | 33 | 藤田拓哉 | ヤマハ | 15 | 23:49.941 |
5 | 46 | 星野知也 | ヤマハ | 15 | 24:15.227 |
6 | 14 | 福山京太 | ヤマハ | 15 | 24:20.375 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 1 | 菊池寛幸 | Honda | 13 | 21:21.267 |
2 | 3 | 尾野弘樹 | Honda | 13 | 21:22.350 |
3 | 20 | 大久保光 | Honda | 13 | 21:22.914 |
4 | 5 | 山田亮太 | Honda | 13 | 21:23.645 |
5 | 55 | 岩田裕臣 | Honda | 13 | 21:23.833 |
6 | 8 | 日浦大治朗 | Honda | 13 | 21:24.684 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 亀谷長純 | Honda | 94 |
2 | 酒井大作 | スズキ | 87 |
3 | 柳川明 | カワサキ | 85 |
4 | 大崎誠之 | ヤマハ | 82 |
5 | 中須賀克行 | ヤマハ | 81 |
6 | 山口辰也 | Honda | 77 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 手島雄介 | Honda | 72 |
2 | 小西良輝 | Honda | 53 |
3 | 小林龍太 | Honda | 49 |
4 | 武田雄一 | ヤマハ | 45 |
5 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 42 |
6 | 中冨伸一 | ヤマハ | 42 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 宇井陽一 | ヤマハ | 57 |
2 | 及川誠人 | ヤマハ | 54 |
3 | 渡辺一樹 | ヤマハ | 45 |
4 | 藤田拓哉 | ヤマハ | 39 |
5 | 星野知也 | ヤマハ | 22 |
6 | 福山京太 | ヤマハ | 20 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 尾野弘樹 | Honda | 62 |
2 | 菊池寛幸 | Honda | 55 |
3 | 徳留真紀 | ヤマハ | 54 |
4 | 山田亮太 | Honda | 39 |
5 | 岩田裕臣 | Honda | 33 |
6 | 大久保光 | Honda | 32 |
コメント
亀谷長純(JSB1000 2位)
「いつものようにスタートを失敗してしまい、5〜6番手からの追い上げのレースになってしまったが、それでも2位になれてよかった。鈴鹿8耐以降、ダンロップタイヤのテストも進み、アベレージを上げることができるようになった。それが、前戦SUGOのPP獲得や、今日の走りにつながっていると思う。また、CBR1000RRも2年目でマシンが仕上がってきたことも大きい。ランキングトップにいることで、周りからチャンピオンについて聞かれることが増えたが、自分自身は気にしていない。開幕戦筑波の優勝も、トップの伊藤さんが転倒しての優勝ということもあり、自分の力を示しての勝ちが欲しい。だから、残りは優勝だけを目指してがんばりたい。今回、伊藤さんを抑えてHondaトップになれたことはうれしく思っています」
伊藤真一(JSB1000 3位)
「表彰台は、いつ以来か忘れるくらい久しぶり。なかなかうまく噛み合わずにきたので、今回は昨年のセットアップに戻して挑みました。決勝朝のウオームアップランでトップタイムを記録することができて、満足できるレベルにマシンが仕上がったと手応えがあった。トップ争いができると思ったが、やはり、まだというところもあった。自分の速いところと遅いところとがあり、満足できる状態にセットアップできるまでに仕上げることができていなかった。次こそは、しっかりトップ争いできるようにしたい」
小西良輝(ST600 優勝)
「予選の組み立てが悪くて転倒してしまい、9番グリッドからの追い上げとなり、イメージトレーニングでは4パターンくらいを想定して優勝を描いていた。手島選手と小林選手のトップ争いを観察して、得意なところと不得意なところを見て、勝負どころを考えていました。最終ラップまでタイヤを温存して最後の最後に仕掛けました。レースはチェッカーを受けるまでわからない。だから、今後、どこまで手島選手を追い詰めることができるのか、あきめずに戦っていきたいと思っています」
手島雄介(ST600 2位)
「決勝スタートはうまくいかず、清水選手とぶつかりそうになってしまいました。マシンの状態が予選とはフィーリングが違って、自分の走りができなかった。タイヤの状態がいい時にタイムを上げられず、ライン取りなどにも影響が出た。その状況の中でベストを尽くしました。最後まで勝負ができるマシン作りができなかったから勝てなかったのだ、という反省もあります。次は絶対に勝ちます」
小林龍太(ST600 3位)
「スタートは得意じゃないので、今回も失敗してしまい、追い上げのレースになってしまいました。監督から序盤にタイヤを使い過ぎるなと注意されていたんですが、やっぱり追い上げる時には無理してしまい、手島選手に追いついた時に転びそうになってしまいました。それでも前回のSUGOのレースに比べればペースアップをすることができました。ラスト3〜4ラップで離されてしまうのが課題。次のレースでは克服できるようにがんばりたいと思っています」
菊池寛幸(GP125 優勝)
「前回のレースでエンジンが壊れてしまったので、今回は壊れないように走ることを心がけた。朝のウオームアップで違和感があったが、それがどこからくるのか心配だった。弘樹(尾野)が前に出たので、ついて行きながらトップ争いの顔ぶれを見極めてから勝負しようと思っていた。亮太(山田)と裕臣(岩田)がきたので、そろそろといったら赤旗。自分のペースを上げることができなかったので偉そうなことは言えないが、若手がレースを引っ張るくらいじゃないと駄目。予選でも、自分の後ろについてばかりで、自分でガンガンいく奴がいない。どこを目指しているんだと思う。世界に行く気があるなら、俺らベテランを叩き潰すくらいじゃないと。弘樹は、その意識があると思うからがんばってほしい。若手が成長してきたら、もっと面白いレースができるはず。自分はタイトルを語れるポジションにはいないので、残りのレースはお客さんが喜んでくれるようないいレースができればいいと思っている」
尾野弘樹(GP125 2位)
「予選14番手だったので、スタートから積極的に前にいこうと思っていました。前に菊池さんがいたので、ついていこうと思い、前に出ることができたのですが、自分でペースを作れずにペースが落ち、後ろが追いついてきてしまった。菊池さんが逃げたので、このまま離れてしまうだろうなと思い、なんとかついていきたかったけれど、まだ力不足でした。ちゃんとバトルができるようにがんばりたい。残り2戦、チャンピオンを目指してがんばっていきます」
大久保光(GP125 3位)
「今回は1ラップ目の1〜2コーナーでライバルの動きをみて、冷静に走ることを心がけました。序盤はペースが上がらずにトップから離されてしまいましたが、セカンドグループの前にいたので、ペースを上げて追いつこうとがんばりました。トップのペースが上がらなかったのもあってトップ争いに加わることができたので、胸を借りるつもりで走りました。赤旗が出ずに最終ラップの勝負になっていたら、どんな順位だったのか分からない。次のもてぎは地元なので、しっかりとがんばりたいと思います」