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全日本ロードレース選手権第3戦はアジア選手権との併催レースとなり、KYUSHU MOTORCYCLE FESTA 2009として開催され、GP250の開催はなし。JSB1000では、高橋巧(バーニングブラッド RT)が事前テストで激しくクラッシュ。ドクターヘリで搬送され、容態が心配されたが、幸い左手人さし指の骨折のみ。全治1カ月と診断されながらも参戦を検討したが、ドクターストップがかかりレースキャンセルとなった。高橋は「走りたいですが、無理をしてはいけないという判断に従いました。指は動かせませんが、ほかは大丈夫なので、しっかりトレーニングをして鈴鹿300kmに備えます」と語った。
事前テストは路面温度が50℃近くまで上昇したが、予選日は30℃となり、マシンセッティングの見直しが必要となった。予選はオートポリスでは初めての試みとなるノックアウト方式で行われた。山口辰也(MuSASHi RTハルクプロ)はQ1、Q2とトップで通過。最終予選でも積極的な走りを見せた。赤旗中断からの再開後、ライダーたちが次々にタイムを更新する中、山口がレコードタイムを記録しトップに。その後、さらにタイムを更新し、ただひとり1分50秒を切り、1分49秒714でポールポジションを獲得した。「本当は48秒台を狙っていた。それを狙えるように、チームがマシンを仕上げてくれていたんですが、赤旗でタイミングを逃してしまった。PPが取れたことはよかったですが、タイム的にはちょっと悔しさが残る」と振り返った。
優勝候補の一角である伊藤真一(Keihin Kohara R.T.)は山口のタイムに迫るが、届かず2番手。3番手には酒井大作(スズキ)が続きフロントロー。事前テストでは2度の転倒もあり、なかなか走りのリズムがつかめない亀谷長純(Honda DREAM RT 桜井ホンダ)は9番手。
決勝は、晴れたが肌寒い天候で、路面温度は30℃。ほぼ予選日と同じコンデション。ホールショットは山口、それを酒井、中須賀克行(ヤマハ)、伊藤、柳川明(カワサキ)が追う。5ラップ目に伊藤が第2ヘアピンで中須賀を捕え3番手浮上。柳川が徐々に遅れ、山口、酒井、伊藤、中須賀のトップ争いとなる。その後さらに中須賀が遅れ始め、山口、酒井、伊藤の戦いとなった。山口は安定したペースでトップを走る。伊藤は酒井を捕らえ、ポジションアップしようと果敢にアタックするが、なかなか前に出ることができず、山口を追撃できない。
15ラップ目、伊藤は第2ヘアピンで酒井のインに飛び込むが、抜ききれずに酒井のマシンに接触、倒れたマシンと共に引きずられるようにコースアウト。酒井はコース復帰し、中須賀との2番手争いを繰り広げた。山口は2番手争いのアクシデントによって、独走態勢で18ラップを走りきり歓喜のチェッカーをくぐり抜けた。2位に酒井、3位に中須賀となる。7位に亀谷、転倒した伊藤はマシンを起こし、コース復帰し8位となった。
ST600は宮崎敦(ヤマハ)がPP。3番手には事前テストでトップタイムをマークした小林龍太(MuSASHi RTハルクプロ)、4番手に開幕戦優勝した手島雄介(TSR with ALT)、5番手に岩田悟(TSR)、6番手に渡辺一馬(TEAM PLUS ONE)、7番手に関口太郎(Team TARO&PLUS ONE)とHonda勢が続いた。チャンピオン小西良輝(MuSASHi RTハルクプロ)は予選11番手からのスタートとなった。
決勝は小林がホールショットを奪い、レースをリードする。それを宮崎、岩田、手島が追う。岩田は宮崎を捕らえ2番手に浮上すると、小林に迫り2ラップ目には首位に立つ。後方から追い上げ7番手に浮上していた小西が、第2ヘアピンで転倒。トップ岩田、小林、そしてスタートで遅れたリバが驚異の追い上げで3番手に浮上し、トップ争いを繰り広げる。手島も4番手につけ、トップ争いに迫る。4台によるし烈な争いから、7ラップ目にはリバがトップ、岩田、手島のオーダー。その争いからはじかれるように第1ヘアピンで岩田が痛悔のスリップダウン。2番手の手島はリバに襲いかかり、12ラップ目には首位に立つ。その後、手島はリバを突き放そうとするが、再び勢いを増したリバが15ラップ目、メインストレートで並び、1コーナーで手島を捕らえた。そのままレースは最終ラップに突入したが、手島は、あきらめずにリバの背後に迫り、第1ヘアピン手前の左コーナーでアウトからリバに並びパス。トップを奪回してそのまま首位を守りきり、2連勝を飾った。2位リバ、3位には初表彰台となる小林が入った。
GP125は、PPが徳留真紀、2番手に篠崎佐助とヤマハ勢が続いた。3番手に尾野弘樹(BATTLE FACTORY)、4番手にチャンピオン菊池寛幸(チームウイリー)となる。決勝は16時スタート。ホールショットは菊池、それを捕らえたのは浦本修充(TEAM IRONBARONS)だが、菊池はすぐにトップを奪い返す。菊池、尾野、浦本、柳沢祐一(18 GARAGE RACING TEAM)、篠崎、徳留が数珠つなぎで続く。トップ集団は、仲城英幸(Project μ 7c HARC)、岩田裕臣(DyDoミウレーシングチーム)を加え、8台にも膨れ上がって激しいバトルを繰り返した。トップは尾野、篠崎、菊池と目まぐるしく変わった。
8ラップあたりから雨が落ち始める。それでもトップ争いは続いたが、10ラップをクリア後、トップ集団から菊池が転倒、さらに数台が1コーナーでクラッシュしたために赤旗が提示された。14ラップで行われる予定だった決勝は、75%を消化しており、9ラップで成立。9ラップの通過順位がリザルトとなった。優勝は尾野、2位徳留、3位菊池となった。16歳の尾野はうれしい初優勝となった。
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 634 | 山口辰也 | Honda | 18 | 33:26.708 |
2 | 39 | 酒井大作 | スズキ | 18 | 33:32.037 |
3 | 1 | 中須賀克行 | ヤマハ | 18 | 33:32.232 |
4 | 87 | 柳川明 | カワサキ | 18 | 33:39.591 |
5 | 2 | 大崎誠之 | ヤマハ | 18 | 33:55.605 |
6 | 51 | 高橋英倫 | カワサキ | 18 | 34:01.331 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 48 | 手島雄介 | Honda | 16 | 31:19.291 |
2 | 70 | P.リバ | カワサキ | 16 | 31:19.761 |
3 | 73 | 小林龍太 | Honda | 16 | 31:23.151 |
4 | 38 | 中富伸一 | ヤマハ | 16 | 31:26.067 |
5 | 7 | 武田雄一 | ヤマハ | 16 | 31:27.482 |
6 | 72 | 宮崎敦 | ヤマハ | 16 | 31:28.728 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 3 | 尾野弘樹 | Honda | 9 | 18:03.001 |
2 | 2 | 徳留真紀 | ヤマハ | 9 | 18:03.084 |
3 | 1 | 菊池寛幸 | Honda | 9 | 18:03.187 |
4 | 68 | 篠崎佐助 | ヤマハ | 9 | 18:03.638 |
5 | 5 | 山田亮太 | Honda | 9 | 18:03.937 |
6 | 6 | 柳沢祐一 | Honda | 9 | 18:04.413 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 山口辰也 | Honda | 62 |
2 | 亀谷長純 | Honda | 54 |
3 | 大崎誠之 | ヤマハ | 52 |
4 | 柳川明 | カワサキ | 47 |
5 | 酒井大作 | スズキ | 42 |
6 | 中須賀克行 | ヤマハ | 38 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 手島雄介 | Honda | 40 |
2 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 22 |
3 | 中富伸一 | ヤマハ | 22 |
4 | 小林龍太 | Honda | 21 |
5 | 武田雄一 | ヤマハ | 21 |
6 | P.リバ | カワサキ | 17 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 菊池寛幸 | Honda | 35 |
2 | 徳留真紀 | ヤマハ | 34 |
3 | 尾野弘樹 | Honda | 28 |
4 | 山田亮太 | Honda | 26 |
5 | 篠崎佐助 | ヤマハ | 24 |
6 | 浦本修充 | Honda | 13 |
コメント
山口辰也(JSB1000 優勝)
「グリッドについてからセレモニーがあり、発電機の持ち込みができないことからタイヤウォーマーをしていてもタイヤの温まりが心配だったこともあって慎重になりましたが、思いがけなくスタートが決まって前に出てからは、気持ちを切り替えてタイムモニターを見ながら自分のペースを守りました。事前テストに比べて路面温度が20℃も低く、セッティングは難しいものがあったけれど、タイヤが発熱するようなセットアップにしてくれて、それがばっちり決まりました。ハルクに念願のJSB1000優勝をプレゼントできてホッとしています。GP250時代の3年間、チーフメカの堀尾さん、重樹さん(監督)にハルクで育ててもらい、Hondaワークスに入り、その後もいろいろなチームで走り、今年、またハルクに戻ってきました。勝てる体制を作ってもらい、マシンを完ぺきに仕上げてくれ、勝たないわけにはいかないと思っていました。この優勝はみんなの力があったからだと思っています。本当にありがとうございました」
手島雄介(ST600 優勝)
「先週のテストでは足回りの問題を解決できずに厳しい状況でした。レースウイークにセッティングを詰めることができればいいと思っていましたが、金曜日はハーフウエットの走行でそうもいかず、たくさんの人に相談に乗ってもらいマシンの方向性を出しました。事前テストで記録したタイムから2秒アップしましたが、一発タイムですし、マシンの状況もタイヤの状況も確認できないままに決勝。チームメートの岩田が好調だったので、逃げられないようにとマークしていましたが転倒。トップ争いをしたリバ選手は初めて走るライダーなので、観察しながら抜くポイントを探しました。ですが、まったく予想がつかない戦いでした。トップに出てアドバンテージを1秒と広げたのに、次の周にはビハインドがなくなり、抜かれてしまいました。リバ選手はスポット参戦のスペイン人。このまま負けたのでは全日本ライダーの名誉にかかわるとスイッチが入りました。リスクを冒すわけにはいかないのはわかっていましたが、転ぶ覚悟で外側から仕掛けました。レースは不安を消しながら決勝に向かうものですが、今回は不安が重なっていくような不安定なレース。そこで勝てたのは協力してくれた人たちのおかげです。みんなの力があったから勝てたのだと思います。今回、結果以上のものがつかめたと思うので、後半戦にしっかりとつなげていきたい」
小林龍太(ST600 3位)
「テストから調子がよく、トップタイムを記録できていたのですが、レースウイークに入ってセットアップを変えたら一発は出るものの、アベレージが上がらず、また変えて決勝に臨みました。スタートから前に出て逃げようと思いましたが、リバ選手が出てきたので様子を見ようと後ろにつくと離されてしまいました。詰めが甘かったと思います。今回は初表彰台なので、次は絶対に初優勝したい。がんばります」
尾野弘樹(GP125 優勝)
「ぶっちぎりで勝ちたいといつも考えているんですけど……。今回も気持ちは同じで、最初からいけるだけいこうと思っていました。最後に勝負できる余力はあったので、あきらめずに優勝を目指そうとしていたら雨が強くなって赤旗。結果はどうなるのかわかりませんでした。トップだと聞いて、すごくうれしかった。今度は最後まで走って勝ちたい。やっぱり、表彰台の真ん中はいい気持ちでした」
菊池寛幸(GP125 3位)
「天気予報では雨もあると言っていたので、それも想定しながらレースの組み立てを考えていました。3分の2でレース成立だから、9ラップか10ラップ、その辺りでトップに立ってチェッカーを目指そうと思っていました。でも、雨が強くなり転倒してしまいました。赤旗となり、転倒ノーポイントかと思ったのに3位表彰台ですから、結果としては悪くない。ラッキーですよね。どんな展開でもレースが成立して尾野は勝ったんだから、素直に喜べばいいと思います。次回に向けて気を引き締めて挑みたい」