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全日本ロードレース選手権の最高峰JSB1000クラスには、Hondaからは05、06年王者の伊藤真一(Keihin Kohara R.T.)を筆頭に、亀谷長純(Honda DREAM RT 桜井ホンダ)が続投、山口辰也(MuSASHi RTハルクプロ)がモリワキレーシングから古巣のハルクプロに戻り、新スポンサーを得て戦う。また、2008年GP250チャンピオンの高橋巧(バーニングブラッド RT)が、JSB1000に挑戦を開始するなど、充実したライダー陣でシーズンを迎えることになった。
ライダーたちは事前のテストから精力的な走り込みを重ね、万全の態勢で筑波に乗り込んできた。テストではヤマハの中須賀克行が55秒5をマークしたことで、そのタイムを目標に、本戦でも精力的なタイムアタックが繰り広げられた。
開幕戦の予選は、1時間のワンセッションで行われた。金曜日のフリー走行でトップタイムをマークしていた亀谷が55秒5でリーダーボードのトップに立った。このままポールポジションを獲得するかと思われたが、伊藤が予選タイヤを装着してこん身のアタック、あわや54秒台かという勢いで、55秒1へとタイムアップ。その後も、伊藤のタイムを抜こうと次々とライバルたちが飛び出すが、超える者は現れず、伊藤の開幕PPが決定した。2番手には亀谷、3番手に酒井大作(スズキ)、4番手に山口と続き、上位4人がコースレコードを更新した。ルーキーの高橋も健闘、自己ベストを更新し、56秒3と詰めて7番手に食い込んだ。
ブリヂストンタイヤを履く伊藤は「ダンロップ勢が好調だったので、負けたくないという思いもあり、予選タイヤでアタックした。マシンの調整不足もありバタバタだったが、あのタイヤなら54秒台には入るはずなので残念」と語った。伊藤は一昨年のケガの影響も少なく「ランニングができるようになった」と本来の走りを取り戻し、王者復活に期待が高まった。
決勝スタート直後の第1ヘアピンで、酒井がインに飛び込んだ中須賀と接触。その直後にいた亀谷、高橋、西嶋修(カワサキ)が巻き込まれて転倒し赤旗中断。中須賀、酒井はレースをキャンセル。亀谷はTカーに乗り換え、高橋、西嶋は、そのままのマシンでグリッドに並んだ。再スタートのためのウオームアップランで亀谷と横江竜司(ヤマハ)が第2ヘアピンで接触し、再び赤旗中断。亀谷は最初の転倒でメインカーがダメージを受け、2度目の転倒でTカーがダメージを受けたため、3度目のスタートまでの間に大幅なマシンの修復が行われた。横江は転倒時に頭を打ったため大事をとり参戦を見合わせた。
亀谷はマシンをグリッドに並べることができたが、山口はマシントラブルが発生したためピットスタートとなってしまう。再スタートのホールショットは伊藤、続いてルーキー高橋と亀谷が追う。亀谷は高橋をとらえて2番手に浮上、伊藤を追うが、伊藤はトップの座を不動のものにしていく。伊藤、亀谷の1-2は崩れない。高橋は大崎誠之(ヤマハ)と柳川明(カワサキ)にパスされ5番手に下がるが、柳川に食らいつく。伊藤、亀谷、大崎のオーダーで周回を重ねた。
それが崩れたのは12ラップ目。伊藤が最終コーナーでまさかの転倒、そのままリタイアとなってしまう。代わってトップに立ったのは亀谷で、危なげない走りでトップをキープ。そのままうれしいチェッカーを受けた。亀谷にとって筑波はホームコースでもあり、たくさんのファンが駆けつけており、大きな声援の中でウイリーゴール。大きな拍手が沸き上がった。2位には大崎が入った。
後半戦の注目は3位争いで、柳川に高橋が急接近、最終ラップの第1コーナーで仕掛けて前に出るが、出口で抜き返され、高橋は大きくはらむが、そこから体勢を立て直し、第1ヘアペンで果敢に柳川のインに飛び込んだ。ラインがクロスする白熱した攻防となったが、高橋が制して3位に浮上し、そのままのポジションを守り、うれしい初表彰台を獲得した。JSB1000デビューレースで表彰台に上ったルーキーの活躍にどよめくような声援が上がった。ピットスタートの山口は怒とうの追い上げをみせ、6位まで浮上、貴重なポイントを獲得した。
ST600はチャンピオンの小西良輝(MuSASHi RTハルクプロ)がV3に挑む。野田弘樹(テルル・ハニービーレーシング)、岩田悟(TSR)、小林龍太(MuSASHi RTハルクプロ)、高橋江紀(Keihin Kohara R.T.)もジャンプアップを狙う。また、JSB1000から手島雄介(TSRwithALT)、GP250から関口太郎(Team TARO&PLUS ONE)、GP125から渡辺一馬(TEAM PLUS ONE)がスイッチして挑む。このほか、JSB1000から佐藤裕児(ヤマハ)、スーパーバイク世界選手権から中冨伸一(ヤマハ)が復帰するなど、実力者が顔をそろえた。開幕戦は17台が予選落ちする激戦で、PPはスポット参戦の新垣敏之(ヤマハ)が獲得。2番手には手島、3番手には小西がつけた。
ホールショットは新垣だが、すかさず小西が首位を奪う。小西、新垣、佐藤、手島、清水直樹(カワサキ)、岩田がトップグループを形成。小西はトップを死守するが、新垣、手島、佐藤がぴたりとマーク、手島はグイグイとポジションアップして小西の背後に迫るが、MCコーナーでハイサイドを起こしバランスを崩す。なんとか立て直してコースに復帰するが、5番手にポジションダウン。ペースアップした岩田が、トップ小西の背後に迫り、その後ろに新垣、佐藤、手島が続く。
手島は佐藤をかわし、新垣をパス、岩田をとらえて2番手に浮上し、トップ小西、手島、岩田のオーダー。手島は激しく小西をプッシュして、ついに14ラップ目で首位に立ち、そのままペースアップして後続を引き離しにかかる。しかし、15ラップ目で小西をかわした岩田がぴたりと手島をマーク。トップ争いは2台に絞られたが、手島はつけ入る隙を与えず、そのままうれしい優勝を飾った。岩田は僅差で2位に入った。3位争いはし烈を極め、小西、新垣、佐藤の争いとなる。最終ラップ、4位に浮上した佐藤が小西をとらえ、3位でチェッカー。4位小西、5位新垣となった。小林は10位、高橋は11位、渡辺は13位でレースを終えた。
GP250はベテランの及川誠人(ヤマハ)がPPを獲得した。決勝でも、及川と宇井陽一(ヤマハ)の一騎打ちが繰り広げられた。今季GP125とGP250のダブルエントリーをしている宇井は、GP125の決勝中に転倒し、左足小指を痛めていたが、そのハンデを感じさせない走りで優勝。及川は2位に入った。3位は渡辺一樹(ヤマハ)となった。
GP125は、17人ものユースカップ登録者(12歳から17歳)がエントリー。ベテラン勢とのバトルに期待が集まった。PPは世界グランプリ経験者の徳留真紀(ヤマハ)。若手では2番手に浦本修充(TEAM IRONBARONS)、3番手に2008年チャンピオンの菊池寛幸(チームウイリー)がつけた。
決勝のホールショットを獲得した菊池がレースをリードし、それを徳留が追う展開。トップ争いは2人の一騎打ちとなり、激しい攻防が続いた。徳留は17ラップ目に首位に立ち、2番手は菊池で周回を重ねた。菊池は最終ラップの最終コーナーで狙いすましたようにインに飛び込み、前に出て勝利のチェッカーを受けた。2位には悔しい徳留。3位には山田亮太(TEAM PLUS ONE)が入った。4位には大健闘の浦本が入った。日浦大治朗(Team NOBBY)は7位。8位に尾野弘樹(BATTLE FACTORY)、9位に山本剛大(Team NOBBY)、10位に森俊也(racing sayama)と10代の若手が入り、今後の可能性を示した。
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 8 | 亀谷長純 | Honda | 25 | 23:43.435 |
2 | 2 | 大崎誠之 | ヤマハ | 25 | 23:51.977 |
3 | 56 | 高橋巧 | Honda | 25 | 23:59.832 |
4 | 87 | 柳川明 | カワサキ | 25 | 23:59.957 |
5 | 32 | 今野由寛 | スズキ | 25 | 24:25.850 |
6 | 634 | 山口辰也 | Honda | 25 | 24:25.950 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 48 | 手島雄介 | Honda | 25 | 24:55.565 |
2 | 14 | 岩田悟 | Honda | 25 | 24:55.989 |
3 | 81 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 25 | 24:58.992 |
4 | 634 | 小西良輝 | Honda | 25 | 24:59.505 |
5 | 20 | 新垣敏之 | ヤマハ | 25 | 24:59.996 |
6 | 7 | 武田雄一 | ヤマハ | 25 | 25:01.418 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 41 | 宇井陽一 | ヤマハ | 25 | 24:28.733 |
2 | 3 | 及川誠人 | ヤマハ | 25 | 24:30.231 |
3 | 8 | 渡辺一樹 | ヤマハ | 25 | 24:50.249 |
4 | 33 | 藤田拓哉 | ヤマハ | 25 | 24:50.357 |
5 | 21 | 中本郡 | ヤマハ | 25 | 25:03.621 |
6 | 14 | 福山京太 | ヤマハ | 25 | 25:21.935 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム |
1 | 1 | 菊池寛幸 | Honda | 25 | 25:24.407 |
2 | 2 | 徳留真紀 | ヤマハ | 25 | 25:24.502 |
3 | 5 | 山田亮太 | Honda | 25 | 25:25.492 |
4 | 48 | 浦本修充 | Honda | 25 | 25:25.492 |
5 | 68 | 篠崎佐助 | ヤマハ | 25 | 25:25.604 |
6 | 13 | 山田誓己 | ヤマハ | 25 | 25:38.007 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 亀谷長純 | Honda | 25 |
2 | 大崎誠之 | ヤマハ | 22 |
3 | 高橋巧 | Honda | 20 |
4 | 柳川明 | カワサキ | 18 |
5 | 今野由寛 | スズキ | 16 |
6 | 山口辰也 | Honda | 15 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 手島雄介 | Honda | 20 |
2 | 岩田悟 | Honda | 17 |
3 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 15 |
4 | 小西良輝 | Honda | 13 |
5 | 新垣敏之 | ヤマハ | 11 |
6 | 武田雄一 | ヤマハ | 10 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 宇井陽一 | ヤマハ | 20 |
2 | 及川誠人 | ヤマハ | 17 |
3 | 渡辺一樹 | ヤマハ | 15 |
4 | 藤田拓哉 | ヤマハ | 13 |
5 | 中本郡 | ヤマハ | 11 |
6 | 福山京太 | ヤマハ | 10 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | 菊池寛幸 | Honda | 20 |
2 | 徳留真紀 | ヤマハ | 17 |
3 | 山田亮太 | Honda | 15 |
4 | 浦本修充 | Honda | 13 |
5 | 篠崎佐助 | ヤマハ | 11 |
6 | 山田誓己 | ヤマハ | 10 |
コメント
亀谷長純(JSB1000 優勝)
「1回目のアクシデントに巻き込まれて、メインカーがボロボロになり、2回目のウオームアップでも接触のアクシデントで、Tカーもダメになりました。グリッドにつけるかわからない状況のマシンを、本当にたくさんの人がチームの枠を超えて修復してくれて、スタートできただけでも感謝でした。筑波はロードレースを始めて、初めて走ったサーキットで、初表彰台もここでした。レースキャリア15年の思い出がたくさん詰まっているコース。なのに、勝ったのはGP250で一度だけ。なので、最高峰クラスで勝つことができたことがうれしいし、シーズンのいいスタートが切れてよかったです。今日の優勝はたくさんの人の協力で成し遂げたものなので、ありがとうと言いたいです。今年は不況の影響でレースができるだけでも幸せで、みなさんの協力で参戦できていることへの感謝を表すためにも、チャンピオンが目標です。次もがんばります」
高橋巧(JSB1000 3位)
「初めてのJSB1000は不安もあり、期待もありましたが、走るごとにタイムを詰めることができていたので、地道にがんばろうと思っていました。なので、表彰台に上がれるなんて考えてもいなかった。だから、自分でもすごく驚いています。柳川さんには追いついたのですが、バックストレートでは柳川さんのマシンの方が伸びていたので、前に出ても抜き返されるのはわかっていたので、最終ラップの1コーナーで仕掛けて逃げようと決めていました。1コーナーで前に出たものの、はらんでしまいましたが、あきらめずにがんばってよかった。すごくうれしいです。これからもたくさん勉強して、トップ争いができるようにしたい。応援してくれたみなさんに、本当に感謝しています。ありがとうございました」
手島雄介(ST600 優勝)
「ポールポジションから逃げきるレースがしたかったから、予選2番手は、かなり悔しくて、悔しくて……。作戦としてはスタートを決めて、独走に持ち込みたかったのだけれど、スタートを失敗してしまい、作戦変更。3年ぶりのST600だったので、集団の中で組み立てを考えました。トップの小西さんが逃げたら前に出ようと思って5ラップくらいは様子を見ていました。トップに出ようとしたら転びそうになり順位を落としてしまいましたが、ここでもう一度、冷静になれたのがよかったのかも知れません。トップに出てからは、岩田と裕児(佐藤)が来るのはわかっていたので、しっかりと抜かれないラインを通りました。今年の目標は全戦全勝。ちぎるレースがしたい。今回のレースで課題が見つかりました。次のレースでは、しっかりと独走のレースができるようにしたい」
岩田悟(ST600 2位)
「レース展開としては、スムーズに前に行くことができたので、手応えを感じながら走ることができました。小西さんのペースが上がらなかったので、前に出て手島君の前に出るチャンスをうかがいました。でも手ごわくて……。前半戦にタイヤを使い過ぎたことで、思うように勝負に出ることができなかった。でも、どこかでミスをしたら、そのチャンスを逃すまいと思っていましたが、前に出るチャンスをつかめなかった。それでも、2位に入れたことは大きい。今年の目標はチャンピオンなので、確実に結果を残すことが大事ですから、今回は2位で上出来。次は負けないようにがんばります」
菊池寛幸(GP125 優勝)
「あのままの流れならトメ(徳留)の勝ちは変わらないな、と思っていましたが、狙うなら最終ラップの最終コーナーしかないとも思っていました。うまくインに入れて、そのままチェッカー。ラッキーでしたね。僕とトメさんの車両のいいところは違うので、それを生かせたのが勝因です。今年は、レースができるのかどうかギリギリまでわからない部分もあり、テスト不足でしたが、同じような状況のライダーは多いと思うので、言い訳にはしたくありませんでした。次戦は若手とも一緒にトップ争いがしたい」