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全日本モトクロス2012 TEAMHRC現場レポート
Vol.01全日本選手権九州大会レビュー

目標はチャンピオン獲得!

Hondaファクトリーチームのレースへの取り組みを現場からお届けする「TEAM HRC 現場レポート」。
今シーズンのTEAM HRCは、成田亮(#1/新加入)、平田優(#6)、小方誠(#40/新加入)の3人体制でチャンピオンシップ獲得に挑みます。タイトルを含めたIA1ランキング上位独占を目指す3選手に、全日本モトクロス開幕を迎えての心境を聞いてみました。

成田亮「チャンピオンを獲ります!」

開幕前はプレッシャーに打ちのめされていました。何のために自分がこのチームに入ったのかという任務の重みをひしひしと感じていました。チームのサポート態勢やマシン作りの対応などから、やっぱりHRCはすごいな! と思いましたし、テストを進めたりプレスに対する発表会などに参加する度に、自分への期待がどれだけ大きいのか伝わってきたんです。Hondaの役員の方々にも大勢お会いしましたが、その度に「頼みますよ! 楽しみにしてますよ!」と言われました。もちろん勝つ自信はありますが、周囲の期待の大きさが徐々に積み重なって、今までに経験のないプレッシャーを感じていたんです。具体的には、眠れないとか食欲がなくなるようなことはなかったけれど、レースのことを考えてはドキドキしていました。

今までのプレッシャーとは全然違う感じ……。他社のファクトリーチームにいた時だって、もちろんチャンピオンを目指していましたが、こんなプレッシャーを感じたことはありませんでした。Hondaのプライベーターとしてチャンピオンになった年もありましたが、あの頃は全日本チャンピオンよりもアメリカに行くことばっかり考えていたので、プレッシャーもなく勝ち続けることができたんだと思います。ずっと遠くを目指していましたから……。アメリカに対する憧れは、10代の頃に初めて渡米してからずっと抱き続けてきました。AMAにフル参戦したこともありましたが、今は夏にスポット出場したり、冬の間のトレーニング目的で渡米するのが現実的です。

今年は2月上旬の体制発表会の翌日に出発して、2月いっぱいアメリカで走り込みました。NRT(Narita Racing Team)の佐藤亮と佐々木悠大と一緒に、キッチン付きのコンドミニアムで共同生活です。以前はロサンゼルスの郊外にアパートを借りたりしていたんですが、昨年いったん解約したのでこれからは部屋探しが必要になります。今回のコンドミニアムにはガレージがなかったので、バイクはバンに積みっぱなし……。だから、カーウォッシュに行って洗車と整備をしていました。整備日以外は毎日乗っていましたね。日本では冬の間あまりトレーニングできませんよね。僕は青森出身なので雪や寒さは平気なんですが、寒い中で練習するとケガしやすいし、温暖なカリフォルニアで思いきり走った方が安全で練習になります。あとはスーパークロスを観戦できるので、刺激を受けてモチベーションを上げたいというのも理由ですね。

アメリカではノーマルのCRFに日本から持参したサスを付けて練習していましたが、帰国後は本番用のマシンで走り込んでいます。ただしこのファクトリーCRFは機密車両なので、コースを借りきる必要があったんです。自分一人の練習のために、チームスタッフが来て一般の人はシャットアウトですから……。そんなサポート態勢を見せられて、僕が燃えないわけがありません。はい! モチベーション上がってます!

成田亮 成田亮 成田亮

平田優「グランプリチームの合宿に参加してきました」

1月中旬から2月末までの1カ月半、イタリアのサルジニア島でHonda World Motocrossチームのキャンプに合流し、たっぷり鍛えてもらいました。このチームとは一昨年のリンブルクGPとチェコGPにスポット参戦した時からの付き合いで、ボビー(バブリシェフ)とルイ(ゴンカルベス)が来日する度になじんできたこともあり、僕の受け入れも割とスムーズに実現したようです。

アメリカに行く選択肢もあったんですが、自分の経験ではプライベートでいろいろと苦労が多く、ヨーロッパのファクトリーチームに居候する方がメリットが多いと考えました。冬にアメリカに行くと、トップライダーたちはスーパークロスコースで練習しているから、アウトドアコースに行っても誰もいないくて、練習相手は日本人ばっかりになる。でもヨーロッパに行けば、世界選手権の日程が全日本と近いから、向こうのトップライダーと同じスケジュールでトレーニングできて、ベストコンディションで日本の開幕に合わせられると考えたんです。ボビーとルイという自分より速い練習相手がいるし、合宿所で一緒に暮らせたのがよかった。アメリカではトップライダーと走れたとしても、練習が終わったら彼らが家で何をしているか分からない。でもボビーとルイとは合宿ですから、24時間をどう過ごしているのかすべてを見せてくれるんです。1カ月まるまる費やす合宿ですから、ひたすらトレーニングとライディング、食べ物も全部一緒でした。

地中海にあるサルジニア島は冬でも暖かいはずだったんですが、今年は異常気象で雪が降った日もありましたね。ハードパックのコースだったら、ボビーとルイについて行けました。1周のタイム差が1〜2秒はありますけれど、全く相手にならないわけじゃない。でもディープサンドコースに行くと、とてもかないません。すぐいなくなっちゃうんですよ。最初はタイム差が3〜4秒でも、だんだん荒れてギャップが深くなると7〜8秒差になるので、一緒にスタートしても単独走行になってしまいました。

1カ月一緒に暮らしてみると、お互いのことがよく見えてきますね。僕が観察するまでもなく、ルイはストイックで、ボビーはやる時と抜く時がはっきりしているタイプです。ボビーのスタイルは成田さんと似てるかもしれません。ルイとボビーから学んだのは、彼らはチームメートと一緒に暮らしていても、お互いに自分のやり方を崩さないということ。だから僕も成田さんから吸収するものがたくさんあるけれど、自分のペースは守らないといけないと思いました。僕はルイほどではないけれど、成田さんよりはストイックなので……。

今シーズンは成田さんの加入によってチームの雰囲気が変わったし、ニューマシンが出てきたりして一段とファクトリーっぽくなりましたね。成田さんとは以前から親しくしてきたし、面倒見のよさというか何でもオープンで教えてくれる人です。もしかしたらライバルと思われていないのかもしれないけれど、僕にも勝機はあると思っています。

平田優 平田優 平田優

小方誠「シーズンオフはアメリカで走り込み」

昨年まではDream Honda RTだったので、ようやくHRCに入れた喜びがあります。発表会や壮行会などがあって、ファクトリーってすごい! と感動することばっかりです。そして、今の自分にはこんなに大勢の人がついていてくれるんだなと認識を新たにしました。HRCに入れることが決まると、新しいメカニックのヒデさんやスタッフのみなさんとシーズンオフのプランを相談しました。そこで出た結論がアメリカキャンプで、2月上旬から3月上旬までカリフォルニアのリバーサイドでホームステイしました。成田さんは自分のチーム員のこともあって別行動で、僕は単独というかヒデさんと一緒でした。それでもコースに行けば成田さんや熱田さんと一緒に走れたし、TLDのコール・シーリーと会ったこともありました。

アメリカトレーニングはモトロマンの時代から経験があったんですが、今回は久しぶりの渡米になりました。日本では練習コースが遠かったりするのですが、今回ステイしたリバーサイドの近くにはコースがたくさんあるんです。グレンヘレン、コンプエッジ、マイルストーン、エルシノア……もっとあるけれど、すぐに思い出せないくらいです。だから毎日違うコースで走れるし、練習がワンパターンになりにくい。冬はスーパークロスシーズンなので、あまりトップクラスがいないのがちょっと残念ですけれど、夏から秋なら練習相手が大勢いるかもしれませんね。

今年はIA2からIA1にスイッチしたので、昨年のうちから450で練習を始めました。250での参戦は昨年1シーズンだけだったので、450から250への乗り換えよりも250から450の方がスムーズでした。もともとNAで2ストに乗っていた頃から125よりも250が好きでしたし、4スト250よりも450が好きなんです。パワーがあって扱いやすいマシンが自分のライディングスタイルに合っているし、HRCでもその方向でマシンを作ってもらっています。

開幕戦は5位/7位でしたが、予選レースが中止になり昨年のランキング順でグリッド順を決められたことが不利でした。18番でしたから、スタートがもう少しよければもっと上位に行けるはず。実はHRCの3人で、1-2-3もいけるんじゃないかと思っているんです。僕はひとまず3位を目指します。もちろん3位でいいとは思いませんけど、1位を狙って転倒するようではダメなので、3位をそろえていくうちにチャンスが巡ってくると信じています。


小方誠 小方誠 平田優、小方誠、成田亮